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社会調査は“ゴミ”だ!
はじめに
先日、大学の講義で現代の社会調査について扱いました。その講義の中で紹介されていた文献が本書です。まず、題名が気になりすぎて読んじゃいましたね(笑)。
冒頭で「社会調査はゴミだ!」
なんてこと言ってるんですよ。そりゃ読みたくなるわな。
今回は、そんな本書を読んだ感想を書き留めておこうと思います。
内容
本書は、社会調査の問題点を指摘し、リサーチ・リテラシー能力を養うことの重要性を提唱している本です。
著者は、信頼性のない社会調査を批判し、「ゴミ」と表現しています。また、それらの調査が引用されたり参考にされたりすることで新たなゴミが生まれることにも触れ、適切な社会調査の方法とあり方を示しています。
本書は、序章を除いた5つの章で構成されています。
第1章では、学者やマスコミが行うずさんな社会調査(=ゴミ)を批判しています。具体的には、学者による「ジャンクフードの摂取と非行の相関関係」などの例を挙げ、根拠のない相関関係を指摘しています。また、マスコミがゴミの情報を広める役割を果たしていることも指摘されています。
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第2章では、マスコミと社会調査の関係について考察されています。著者は、マスコミ各社が選挙予測などでゴミ情報を広めていることに言及し、正確性に欠ける予測が人々の行動に影響を与える「アナウンス効果」という問題を指摘しています。また、マスコミの情報をチェックする機関の必要性も提案されています。
第3章では、現代の学者の世界や社会調査の費用とデータの運用に関する注意点が紹介されます。
第4章では、さまざまなバイアス(偏向)が社会調査に影響を及ぼすことや、モデル構築によるバイアスの例が示されます。
最後の第5章では、リサーチ・リテラシーの重要性が強調されます。著者は、ゴミの情報を流す人々やそれを利用する人々が多いため、リサーチに対する知識と判断力が必要であると述べています。さらに、情報の選別能力や「セレンディピティ」の重要性にも触れられています。
以上が本書の内容です。
感想
本書が読者に最も伝えたかったことは、副題にもある通りリサーチ・リテラシーの能力を身につけることだと思いました。
本書では、役に立たない世の中の社会調査を「ゴミ」と言って批判し、それを踏まえ社会調査のあるべき姿や方法論などが述べられています。
それらが社会調査において重要なのは言を俟ちませんが、それよりも私たちが生活する上で関わる情報を自らが選び、捨てるというリサーチ・リテラシーを身につけるということが著者の最も伝えたかったことなのではないかと思います。
現代社会を見回してみても、毎日多くの情報が更新され続け、私たちの身の回りには数え切れないほどの情報が存在しています。
その情報の中には、知らなくてもいいようなものも多く含まれている一方、一部には自分自身の生活に関わるものも存在します。
例えば、選挙といった事例では、投票結果によっては生活がガラリと変わってしまうこともないとはいえません。そのような場面で、マスコミのバイアスのかかった情報を信じていては正しい判断が出来なくなってしまいますよね。
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そこで本書にある通りリサーチ・リテラシーを身につけることで、正しい情報を取得し、生活をより豊かにできるのではないかと考えました。
そして、社会が発展していく中で生まれたメディ
ア・リテラシーや情報リテラシーといった概念だけでなく、今回扱ったリサーチ・リテラシーの必要性にも改めて考えさせられましたね。
また、他書には見られない本書の面白いところは、多くの社会調査が実名で批判されているという点です。
「ゴミ」という攻撃的な言葉を用いて批判されていることに初めに見たときは驚きを覚えましたが、本書を読み進めて行くうちに、「ゴミ」という表現が妥当だと思えるほど、論理的かつ客観的に過去の社会調査の粗さを指摘していました。
最後に、社会調査の質を高めるために本書に書かれている著者の2つの提言に大いに賛成です。
1つ目は、「メディア・リサーチ協会」というものを創設するという考えです。
これにより調査の方法及び目的、結論などがはっきりし、世の中に役に立たない社会調査(=ゴミ)が大幅に減るので、本当の意味での正しい調査以外は淘汰されていくと思います。
2つ目は、「リサーチ・リテラシー教育」を学校に普及させるという考えです。
この2つの考えを実現することができれば、今後「ゴミ」という名の社会調査が減り、結果として私たちの生活も豊かになるのではないでしょうか。
本書の内容を踏まえ、今後の社会調査の発展に期待したいですね。