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カナミック、ニチイにシステム提供開始。今後の大手介護事業者のシステム活用のトレンド

カナミックネットワークスは自社の提供するクラウドシステムがニチイに採用されたことを発表しました。

ニチイは現在は非上場企業で業績が公開されていませんが、売上高で言えば介護業界でトップの2606億円(マイナビ2024参照)ある企業です。

拠点数でも全国47都道府県に1900拠点を有し現在も新規出店や買収で拠点数を伸ばしています。

カナミックは1事業所あたり3万円程度(別途オプション)で多少ディスカウントはあるとは思いますが仮に全事業所に導入された場合、月間約6000万円近い売上が立つ計算になります。カナミックの売上規模が月商3億円ほどですから20%位をニチイから得ることになります(もし全事業所で導入していれば)。

ニチイは元々オンプレミス(自社開発)のシステムを利用していましたが度重なる法改正やエンジニアの確保、システムのクオリティーの確保などを含め将来的に開発をし続けるよりはカナミックを使ったほうが支払いは高くなるかもしれないけど管理コストなどを含めメリットがあると考えたのでしょう。

他の大手の導入も進むか?

ニチイの他にも大手介護事業でオンプレミスでシステム開発しているところはあります。セントケアホールディングスが「suisuilemon」というシステムを子会社で開発し、セントケアの社内利用以外にも他事業所にも有償で提供しています。「やさしい手」も同様で自社でシステムを開発し他社に提供しています。SOMPOホールディングスは介護業界でもシェアの高かった「ほのぼの」を提供するNDソフトウェアを買収し自社グループに入れています。

これは数百〜数千事業所を運営する大手介護事業者ならではの発想で、運営事業所の規模が増えるとシステムに支払うコストも高額になり自社でエンジニアを採用し開発したほうが良いのでは?と発想するからだと思います。

また、自社の運営の基盤となるシステムを自社で開発してノウハウとして蓄積し他社に有料で提供すれば介護保険収入に頼らない収益基盤となるのではないか?(もしくは外部に販売することで自社のシステム代をペイできる)と考えるからです。

ただ、SOMPOホールディングスのように既に稼働している開発会社を丸ごと買うならまだしも、大手介護事業者が1から開発体制を作り上げ、維持していくことは大変です。

開発チームを指揮する人材の採用、エンジニアの採用、開発環境の用意、日々のアップデート。バグや不具合の対応、サポート体制の構築などシステムを立ち上げ、維持していくのはとても大変なことです。
カナミックのように社長が元々優秀なエンジニア(富士通出身)でシステム開発を事業としてやっていく企業であればなんとかなるかもしれませんが、介護士から出世した経営者や文系のエリートでは舵取りが難しいと思います。

そのような理由から今回のニチイのように大手介護事業者が自社開発をやめて、カナミックを導入しようとする流れは自然な流れではないかと思います。

ただ、そのためには今企業内にいる開発チームを縮小させることや、運営する全事業所のシステムの移行など複雑な課題が待っています。そのため、これらの動きは一気に来るのではなく数年かけて徐々流れてくることになるかと思います。

業界は違いますがホテルのマリオットが顧客管理システムにセールスフォースを導入していたり超超大手も顧客管理システムを自社開発することなく外部の優れたCRMを使うことは海外では当たり前です。

要は自社のサービスのコアは何かを定義し必要なもの以外はアウトソーシングや外部の力を活用するという発想ができるかどうかではないかと思います。

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