【洒落怖漢譯】巨頭寸（原題：巨頭オ）

譯文

數年前，勃欲羇旅於某邑。嘗爲其舎人所恩遇也。暇日，獨就車，驅所知道。近邑過榜。錯認乎？　榜記巨頭寸也。覺凶祥，而遂入。邑甚荒廢，屋舎蕪沒。將下車時，見巨頭人之自叢出。其状也，手與足相合，振頭而歩。狼狽須臾，又出數人，環我。即退反顧，盡死力逃去。歸宅披地圖，非錯路也。不復往矣。

書き下し文と語彙解説

數年すうねん前、勃にはかに某ぼう邑いうに羇旅きりよせんと欲す。嘗かつて其の舎人しやじんの恩遇おんぐうする所と爲ればなり。

暇日かじつ、獨ひとり車に就つきて、知る所の道を驅かく。邑むらに近づくに榜はうを過ぐ。錯認さくにんしたるか。榜の記巨頭きよとう寸すんなり。凶祥きようしやうを覺おぼゆれども、遂つひに入る。

○勃：にはかに。　○邑：むら。　○羈旅：旅行。　○舎人：宿屋の主人。　○恩遇：手厚い待遇。　○暇日：休日。　○就：車に乘る。　○榜：扁額。看板。　○錯認：見間違ふ。　○巨頭寸：原文「巨頭オ」の譯。「オ」は「村」字の掠れた樣に依るとの説に從つた。　○凶祥：惡い氣配。　○遂…：そのまま…する。　

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邑甚だ荒廢くわうはいし、屋舎しやをく蕪沒ぶぼつす。將まさに車を下りんとする時、巨頭人きよとうじんの叢くさむらより出づるを見る。其の状かたちたるや、手足とを相合がふし、頭を振ふりて歩く。狼狽らうばいすること須臾しゆゆ、又た出づること數人、我を環かこめり。即すなはち退きて反顧はんこし、死力を盡つくして逃去たうきよす。

歸宅くゐたくして地圖ちづを披ひらけども、路を錯たがふるに非ざるなり。復た往ゆかず。

○舍屋：家屋。　○蕪沒：草に埋もれる。　○叢：草むら。　○状：すがた、かたち。　○須臾：少しの時間。　○又：さらに。　○環：かこむ。　○即：ただちに。　○反顧：後ろをふり返る。ここでは車を方向轉換する。　○死力：死ぬ氣で。決死で。　○披：書物などを開く。　○不復…：二度と…しない。

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引用元：巨頭オ（ピクシブ百科事典）

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