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グラハムはポロックに、ピカソを研究するよう勧めた。これによって混乱もしたが、実りもあった

(※ジャクソン・)ポロックは良いたとえかもしれない。彼の絵を初めて見る人の多くは、なんの構造も意味も見いだせず、嫌悪感を抱く。私もそうだった。しかし、それがフラクタル構造を持っていると聞いてから、考えは変わった。ポロックの絵のどの部分をとっても、拡大してみると同じパターンが目の前に現れ、切り取る部分が大きくても小さくても変わらない ※引用者加筆.

「たしかに自然界にフラクタルのパターンがあることを発見したのは科学者だが、その二五年前に、ポロックは自然界のフラクタルを描いていたのだ!」(中略)なにもパターンをじっと見つめる必要はないんだよ。たとえば壁にフラクタルのパターンが飾られている通路を歩くだけで、人はそのメッセージを受け取る

ジャクソン・ポロックの絵画を見る人は、「絵の作者の創造的活動が残した(刷毛の跡や絵の具のしたたりという)物理的な足跡によって暗示される動きと、身体的にかかわっているという感覚」を経験する。

ジャクソン・ポロックは、写真のようにリアルな絵画を描くこともできるが、それをせずに、感情が躍動するまま荒々しく絵具を撥ね散らす方法を選んだ。つまり彼は型を忘れるために型を学んでいたのだ(中略)無意識を養えば、一見すると共通点があるようには見えない物どうしでも、その関連性を発見できる(中略)洞察を徹底的に深めようとする道筋は、往往にして別の事物への深い考察をはらんでいる(中略)数々の断片的な思考が、直感的に見いだされた不思議な関連性をたどって一つの像を結んでゆく

インスピレーションに突き動かされるジャクソン・ポロック

ジャクソン・ポロックは次のように書いています。「自分の絵の中にいるとき、私は自分が何をしているのか意識していない。

ポロックは、権威というものに反抗する性向が災いし、学校を退学させられたことも1度ではなかった(中略)他の学生から敬遠されたが、師のベントンに気に入られた。気丈な肉体労働者のように振舞っていたベントンは、ポロックがワイオミング出身だったことから、自己の芸術で賛美したアメリカの西部気質をまさに体現しているものとして、ポロックを見ていたようだ。 ポロックが大通りをカウボーイ・ブーツとカウボーイ帽姿で闊歩し始めると、ベントンはこの学生の男っぽさに共感を抱くようになった。ベントンがポロックに惹かれたのは、彼の絵画や素描の技術面とはあまり関係がなかったようだ。ポロックはあまりにも製図技術の点で劣っていたため、テニス・プレーヤーか配管工に鞍替えするよう勧められていたと、仲間の学生は皮肉を込めて述べている(中略)オールオーヴァーのポロックのようなパターンは、各要素が互いに皮肉をあらわにする対話を生み出している(中略)ポロックが慣習的な境界を逸脱したことで、現代アートに多大な自由がもたらされた(中略)絵具を滴らせたマックス・エルンストもそうだった。ハンス・ホフマンも1940年代以降、ドリッピングやポアリングを試していた(中略)《 無題(カット・アウト・フィギュア )》などは、基本的にコラージュと呼ばれるものである(中略)パウル・クレーからの影響は、ポロックが《壁画》で迎える転換点に至るまでの発展において、大きな推進力であったと同時に、最大の障害でもあった(中略)グラハムはポロックに、ピカソを研究するよう勧めた。これによって混乱もしたが、実りもあった(中略)ポロックがピカソの芸術に関する本を床に投げつけ、「くそっ!あいつは何もかもやってしまった! 」とかんしゃくを起こして叫んだという記録に示されている。

ランダムなネットワークは数学者を喜ばせる。ネットワークにリンクをランダムに加え続けると、突然、ネットワーク全体がつながるときが訪れるということがある。これはたとえば、ポロックの絵にいくらかつながっていないところがあったとしても、絵の具をもう一筋たらせば、突然、交点をつなぐ筋をたどって他のどの交点にも行けるようになるということだ。同じことは人間の場合にも当てはまる。メンバーのほとんどが互いのことを知らない集団があるとすると、その内部で噂が広がることはまずありえない。ところが、その集団にいる全員が、ある一人の人物を知っていて、その人と話をすると仮定しただけで、噂は燎原の火のように広がることがある。

オレゴン大学で物理学、心理学、芸術を教える教授リチャード・テイラーは、フラクタル模様が人間の精神にどのような影響を及ぼすかに関する研究の草分け的存在(中略)意外なつながりについて調べてみようと、ポロック晩年の作品をいくつか分析したところ、そこにも1・3から1・5の中間域でフラクタル模様が存在することを突き止めました(中略)東アフリカのサバンナに見られる特徴を無意識のうちに再現していた造園家のランスロット・ブラウンやハンフリー・レプトンのように、ポロックもどうやら、人類が古代から抱き続ける自然界への親近感に触れ、それを作品に反映させていたようでした(中略)テイラーは感嘆してこう言います。「〝キャンバスの上に自然を持ってきてほしい〟と誰かが言ったら、史上最高の例は、1984年の『ナンバー14』だ」。

抽象画家であるジャクソン・ポロックが「私は偶然を認めない」と語った話は有名だ(中略)ポロックにとって偶然とは、意図的なものであると同時に自然発生的なものだった(中略)情報で大切なのは情報そのものだけではなく、私たちがそこから何を読み取るか(中略)自分の直感を信じられるようになれば、困難な決断を下しやすくなる。ただその前提として、十分な情報を集め、「質の高い直感」が働くようにしておく必要がある。

映画『コンサルタント』に出てくる絵画はポロックとルノワールです。

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