ARCSモデルの位置づけ ID学 vol.2
ARCSモデルは動機(付け)理論などと呼ばれていると書いたけど、そうといえばそうなんだけど、理論というよりは方法論、らしい。理論である間は、現場でどう使っていいのかわからないけど、方法論になれば、利用しやすくなる。実際にARCSモデルがいう「注意、関連性、自信、満足感が学習者の動機に影響する」というのは、どちらかといえば理論に近い気がするけど、実はARCSモデルはここで終わらず、それぞれに具体的な方略が付随している(今の時点ではまだ未読)。ようするに現場で使える。ということで、ここでは動機(付け)理論ではなく学習意欲デザインと考える。
学習意欲デザインとインストラクショナルデザインの関係
インストラクショナルデザインを使って学習をデザインすることは、そもそも学習者にモチベーションがあることを前提にしている。このモチベーションは「なにこの授業、時間の無駄」と思われることで減退こそすれ、高まることはない(インストラクショナルデザインの悪さによってやる気をなくさせることはあっても、デザインのよさによってやる気を起こさせることはない)。モチベーションを起こしたり、高めたりするのは学習意欲デザインということになる。
ちなみに「学習意欲デザイン」で論文検索すると、もれなくARCSモデルで埋め尽くされる。ほぼイコールと考えてよいのか。ケラーがネーミングしたから(そして和訳されたから)当然といえば、当然か。
そんな中、おもしろいYoutubeチャンネルを見つけた。
リープ【OCL】オシエル ch
会社研修に焦点を当てた動画だけど、わかりやすくておもしろかった。都竹教授が「それでも続かない」を繰り返すのが、またおもしろかった。
ARCSモデルの拡張版「ARCS-V」モデル
鈴木克明(2010)「ARCSモデルからARCS-Vモデルへの拡張」『第 17 回日本教育メディア学会年次大会論文集』
初めて読んだときは「なんのこっちゃ」という感じだったけど、本を読んであらためて読み返したら、簡潔に説明してあってわかりやすかった。VというのはVolition(意志)で、動機が高いからといって実行・継続されるとは限らず、そこには意志が関わっているということ。たしかに「やりたいな、おもしろそうだな、役に立つな」と思っていても行動に移さない、続かないということはよくある話で、日々押し寄せるさまざまな誘惑だったり、優先順位の変動だったり、体調だったりによって、動機は高いのに学習が選択されない。そこで学習を選択するには意志の力が必要だという、書いてしまえば至極もっともな話。意志の力(Volition skill)もまたいろいろ細かくあるんだけど、勝手にまとめれば「計画を立ててイメージし、さまざまな誘惑を跳ね除ける工夫をして、自分の選択を守り抜くスキル」というところでしょうか。この意思の力を育てて支える方略があれば、まず自分に適用したいところだけど、鈴木(2010)によれば、まだ具体的には記述されていないとのこと。論文検索しても、少なくとも日本ではARCS-Vの方略や実践研究は見当たらなかった。海外だと気になる論文はあるものの、読む気力なし。とりあえず本を読め、本を!
動機が低い学生との向き合い方
前にどこかで溜息混じりに書いたけど「結局できる学生はできるし、できない学生はできないのよね、どんなに先生ががんばってもさ」。逆にいえば、たかだか教師である自分に、学生の内面を変えるだけの力なんてあるはずもなく、そんな驕った考え方はいかん!というイマシメのもとやってきたけど、この本を読み始めて冒頭に、学生のモチベーションは自分の責任外の問題だと考えていないだろうか?と問われてドキっとした。たしかに学生を変えるだけの力なんてあるはずもなく、でもだからといって放棄してはいけないのかも。そこを努力せずに、教師の仕事の意味って何だろうとも思うし。