わんこ屋

わんこ屋

マガジン

  • 日記帳

    日々思ったこととか、感じたこととか。

  • 小説

    短編小説です。ぼちぼち、マイペースに。

最近の記事

  • 固定された記事

はじめまして

わんこ屋と申します。屋号と言いますか『わんこや』とでも呼んで頂ければ幸いです。 短い小説とか、日記帳とか、文字書きしてみようかと思いまして、この場をお借りします。 マイペースにのんびり更新予定で、よろしゅうお願いします。

    • にっきまんが「好奇心」

      • 【短編小説】ピース星の少女

         五歳になる娘と星空を眺めていた。月に照らされて輝くひと際目立つ惑星が見えた。    「あのおほしさま、すっごくきれいだね」     惑星は地球から見ると美しい。その光の瞬きが目を輝かせればそうさせるほど、ぼくは「ピース星」での出来事が心を苦しめた。  娘が指さす星の名は「平和」を意味する『ピース星』。  ×××××  「平和とはなんですか?わたしに分かるように説明してください!」  前髪で片目を隠した少女が、ぼくに食って掛かかった。片手を握りしめ振り上げる姿が彼女の歳

        • 【短編小説】勤労少女とアイドル

           わたしのバイト先はコンビニだ。  どこにでもあるよくあるコンビニだ。  いたって変わったところも特徴もないコンビニだ。  整えられた制服に着替え、今日も元気に労働、労働。  「イラッシャイマセー」  元気だけが取り柄だと謙遜するチャイさんの声が響いた。わたしも続けて「いらっしゃいませ」と、山びこする。  「水上サン!コノ店内放送ノ声優サンノ名前知ッテマスカ?」  店内でループする放送。有名な声優さんらしいけれど、ごめんなさい。知らないんだなぁ。  チャイさんは異国の

        • 固定された記事

        はじめまして

        マガジン

        • 日記帳
          1本
        • 小説
          15本

        記事

          【短編小説】カニパン少女に救われて

           リクルートスーツは人生の喪服とはよく言ったものだ。  企業訪問って何度まですればいいんですか?志望動機ってどのくらウソついたらいいんですか?社会人への階段の第一段目が巨大なアスレチックのようにもの凄く高く感じる。  就活セミナーも聞き飽きた。何かすごい肩書のお姉さんが「あーだら」「こーだら」と壇上で延々と語る。自己啓発も何が何だか。聴いている間は履きなれないパンプスがひりひりと足を痛める。  シュウカツって何ですか。美味しいの?  自分自身を見知らぬおっさんたちに気に入

          【短編小説】カニパン少女に救われて

          【短編小説】歩く韋駄天#シロクマ文芸部

           ただ歩くだけの競技。それが競歩。  腕を確実に振りながら、左右の足を交互に前に前にと力強く歩く。これ以上ダイナミクスを感じる陸上競技はないだろう。  愚直に歩く。とにかく、美しく歩く。例えるのならば、歩く韋駄天のごとく。  しかし、競歩は地上で最も過酷な競技とも言われる。  実は軽いジョギングにも匹敵するスピード、フォームに関しての警告の恐怖。想像できるだろうか。  脱落に脱落。仲間たちを見捨てて歩き続けなければならない、孤独に耐える強靭な精神力さえも味方につけなければな

          【短編小説】歩く韋駄天#シロクマ文芸部

          【短編小説】にんげんかんさつ#シロクマ文芸部

           ただ歩くだけじゃもったいないので、散歩の帰り道にすれ違う人たちを人間観察をやってみた。  日常日課の散歩道も見方を変えれば、ぼくだけの心が小躍りするお楽しみになるのだ。  あの老紳士は何をしているのだろうか。いつも同じ時間に出会うけど、特別挨拶することはなく、ただただ通り過ぎるだけ。言うならぼくの日常のひとかけら。  実は大金持ちの旦那様だったり。散歩から帰るとふさふさで大きな愛犬が飛びつくように、お迎えに出てくるのではないのか。とか。  あの女子中学生は連れているチワワ

          【短編小説】にんげんかんさつ#シロクマ文芸部

          【短編小説】尻尾堂古書店奇譚~檸檬~

           「因幡はこの店を爆破するつもり?」という犬上の一言に、因幡はあからさまに機嫌を損なった。  文豪に魅了されし者が、例外なく憧れる行為の一つ。積み重なった店内の書籍の上にぽつんと置かれた黄色い檸檬。  うつむき加減の因幡は「悪い?」と吐き捨てるように、犬上に抗ってみた。恥じらいを見せることを恥じらうお年頃の女子高生である因幡の表情は、本棚と本棚に挟まれる勇気のいる古書店の中では確認しづらい。  カジイさんの真似して悪かったね。わたしは『れもん』っていうタイトルを聞いたら、ヨネ

          【短編小説】尻尾堂古書店奇譚~檸檬~

          【毎週ショートショートnote】いちにのさん!

           いちにのさんで一緒にいくよ。  手を繋いで潮風を受ける。    朽ち果てた防波堤の上、海原の向こうには工場群。陽も沈みかけ、茜色に染まる波音だけの岸壁。  古語辞典に載ってたっけ、『断捨離』って。今じゃ錆び付いた古の言葉、ぼくらはきちんと受け継ぐつもり。  いつの間にか増えすぎて、地球を苦しめ続ける人間ども。自分で自分の首を絞めるように、疲弊の道を辿る青い星。  そもそも、ぼくら人類は海からやってきた。難しい事よく分かんないけど、母なる海から生まれた命。地上に上がり繁栄を極

          【毎週ショートショートnote】いちにのさん!

          【毎週ショートショートnote】断捨離人間

           『断捨離』って知ってますか。身の回りの要らないものをどんどん捨てちゃうこと。すっきりして身軽になることで生きやすくすることだって。  わたしが生まれる随分前に提唱された生き方なんだって。その考えが脈々と続いて、昔よりも進化しちゃった。考え方はもちろん、人間の脳も。  例えば「これ要らない」って思うでしょ。無駄に買った電化製品やら、ご本やら。今の人間、頭の中でそう考えるだけで『消し去る』ことが出来るようになっちゃった。物ならまだしも、人間関係さえも。仮にわたしが「あなた嫌い」

          【毎週ショートショートnote】断捨離人間

          【毎週ショートショートnote】未来断捨離ノススメ

           お風呂に入っていると、ついつい歌いたくなる。  「莉々ちゃんは歌が個性的だね」と、お姉ちゃんはボディソープを泡立てる。ボトルのデザインに一目惚れして衝動買いしたボディソープらしい。  「お姉ちゃん。わたし将来声優さんになるっ。声優さんは歌が上手くなきゃ」  「そんな未来は断捨離よ。捨てられた未来はわたしが頂くね。お姉ちゃんこそ声優さんになっちゃうからね」  遠回しにばかにしてっ。莉々ちゃんには無理だよって。確かにお姉ちゃんの声は可愛いけど、むっとしたわたしは、お風呂場をばた

          【毎週ショートショートnote】未来断捨離ノススメ

          【短編小説】尻尾堂古書店奇譚

           ほこりの匂いのする古本屋は、この町でも数少なくなってきた。  開いてるのか、開いてないのか。儲かってるのか、儲かってないのか。昔は大学の周りにたくさん店を構えていたんだろうだが、その大学も郊外に移転して、時代の生き残りの古本屋も青色吐息だ。  「買わないんやったら、帰らんか」  酒臭い息で、本日第一号の客に毒づく店主。かつては文筆家を夢見ていたんだろうだが、訳あって古本屋を営んでいる、という感じの老人だ。  店舗だって、大型ダンプがそばを通れば崩れ落ちそうなぐらいな骨董

          【短編小説】尻尾堂古書店奇譚

          【短編小説】遅れてきた文芸部員~読者は姪っ子 #シロクマ文芸部

           文芸部だったことがバレた。  九つ離れた姉にバレた。  ぼくの文芸部としての履歴は消去したい。言っちゃ、それは黒歴史。たいした作品も残せず、ただただ本をむさぼり読む毎日を部が許してくれただけ。理想的なきらきらした学園生活とは離れた、象牙の塔の集団だったから。大学二年になった今、新たなスタートとして過去を忘れ去ろうとしていた矢先のことだったのに。  「だったらさ。花音にお話書いてあげてよ」だとよ。  「文芸部だったら、お話書くのちょちょいのちょいだよね?」  ふざけろっ

          【短編小説】遅れてきた文芸部員~読者は姪っ子 #シロクマ文芸部

          【短編小説】葵先輩 #シロクマ文芸部

           「文芸部のOGに東大に行った先輩がいるんですか?」  確か、わたしが入部したての頃に聞いたはなし。当時の驚いたことベストワンに輝く内容だった。特に進学校という訳でもない、なんとなく自由な校風の地方の高校だというのに東大だ。しかも文科三類文学部。書いた文字がインテリジェンスで光り輝くとも噂される、あの部だ。  とにかく、本が好きで、文章を書き、物語を紡ぐのが何よりの楽しみだったわたしが、入学して真っ先に門を叩いたのは文芸部。『東大生出身部』というブランドで、わたしが部のレベ

          【短編小説】葵先輩 #シロクマ文芸部

          【短編小説】しあわせな牢屋

           詐欺の罪でおれは牢屋にぶち込まれる予定だ。  心の隙間に潜り込み、まぁ荒稼ぎさせてもらったわけだが、人間騙される方が悪いと思わないか。平和ボケした愚民どもからちょっと金銭をおすそ分けしてもらっただけだっつーのに、それが桜田門様の怒りに触れて、その結果お縄頂戴。でもさ、考えてみろよ。脳みそを使えよ、親からもらった生まれながらの宝物だろ?そいつフル回転させて事態を疑えば回避できるだろ?それこそ宝の持ち腐れじゃねーのかよ?っつーの。だから、おれが薄暗い監獄の住人になるという筋書

          【短編小説】しあわせな牢屋

          【短編小説】鉄の街、そして月光

           夜中の一時を過ぎたのに、ちっとも眠くならない。体育の時間に疲れてしまって、学校から帰ってすぐに昼寝。しかも信じられないほど寝ていたからだと薄々自覚はしている。  小学生の聖子は薄暗いキッチンの中、手探りで冷蔵庫を探す。  静まり返った自宅は落ち着かないけど、誰からの視線を気にすることはない。冷蔵庫を開けると財宝の箱を開けたような光が聖子を包んだ。  牛乳を一杯。背の低い聖子は気にしてか、牛乳をよく飲む。今は背の順では先頭だけど、卒業する頃には、ひとつ後ろに並びたい。高望み

          【短編小説】鉄の街、そして月光