#129 飲食業は下に見られがち(前編)
今回の僕の記事は「飲食業はほかの職業に比べ低く見られがち」というテーマで書いていきたいと思います。昭和から平成、そして令和と時代の移り変わりとともに世間の風向きが変わっていくと思いますが、実際のところ飲食の世界はどうなのか。先日仲間内で議論していました、その中で僕が感じたこと、今飲食の現場では実際のところどうなのか、その事を共有していきたいと思いました。書いていてちょっと長くなりましたので前編、後編と2回に分けていきたいと思います。
#飲食のリアルな現実
飲食業界の年収事情
僕が30年近くにわたり飲食業を続けてきた中で、飲食業界には多くの誤解が存在することに気付きました。一般的に、飲食店での労働は長時間で低賃金といったイメージが根強く、他の職業と比較して低く評価されることがあります。しかし、実際のところ、その見方は一面的すぎるものであり、飲食業界の年収事情は複雑で多様です。
#いまだに誤解されている
飲食店正社員の平均年収はいくら?
飲食業界全体の正社員の平均年収は、他の産業と比べて低くなっていることが指摘されています。例えば、宿泊業や飲食サービス業は平均年収277万円というデータがあります(令和3年賃金構造基本統計調査)。ただし、この数字はあくまで全体の平均であり、飲食業界内でも様々な要因によって年収にはばらつきがあります。転職サイト「転職サービスdoda」による集計によれば、レストランの平均年収は340万円、居酒屋・バーで345万円となっており、これらの数字も同じ飲食業界内でも職種や経営形態による違いを示しています。この年収はあくまでも飲食業に従事する方全体の平均であり、飲食店と一口に言ってもレストラン、居酒屋、カフェ等多種多様です。また、経営母体が大きく日本全国で展開しているチェーン店や、個人で営業しているお店もあります。飲食店の給与は色々なパターンがあり、保険料や税金を会社側が手続きをし、差し引いて支給してくれる場合や、保険料、税金などは従業員個人で手続きをしてもらうために満額支給する場合があります。勤務先の規模が大きくなると年収も高くなる傾向があり、チェーン展開しているお店は賞与も支給される場合が多く、企業勤めのサラリーマンも同じ様な給与形態が多い一方で、個人店では賞与は支給されない場合もあり売上により給料が決まる事もあるようです。また、レストランと居酒屋/バーの平均年収に若干の違いが出ているのは、営業時間、スタイルが異なるからです。レストランではランチとディナーの営業が一般的ですが、居酒屋やバーは夜から深夜、朝方にかけての営業となります。
労働基準法では午後10時から午前5時までが深夜勤務として定められており、この時間に勤務する場合には25%割増で支払う義務があります。居酒屋やバーはこの時間帯での営業していることが多く従業員もそれに合わせて勤務している為、レストランの従業員より年収が高めになっています。
#年々良くなってきている
年齢と経験による年収の変化
飲食業界における年収は、経験年数に比例して上昇する傾向があります。特に、20代から30代にかけての経験を積むことで大幅なアップが見られ、その後も順調に上昇し続けるケースが多いです。これは他の産業と同様ですが、飲食業界では若い世代の離職率が高く、経験を積む前に辞めてしまうケースも少なくありません。一般企業の場合、特に大手企業などは勤続年数に加え、社員等級なども加味された上で月給が変わる為、複雑ですが、経験年数が上がるにつれ給料も上がっていくのはわかりやすいですし、頑張るモチベーションにもつながりますよね。
先ほどの転職サイトの年代別の平均年収は下記のとおりです。
レストラン 居酒屋/バー
20代 294万円 295万円
30代 374万円 378万円
40代 456万円 429万円
50代 499万円 464万円
職種による違いと専門性の評価
飲食業界内での職種による年収の違いも注目すべき点です。調理系スタッフ(料理長や調理スタッフ)は一般的に、サービス系スタッフ(ホールスタッフ)よりも年収が高い傾向にあります。また、ソムリエなどの資格を持っている場合は、給与にプラスされることもあります。ただし、飲食業界全体が専門性が低いとされることも事実であり、そのために他の産業と比べて年収が低くなるケースが見られます。
#専門性が認められない傾向がある
成果と専門性による評価
しかし、飲食業界が低収入であるとする見方は単純化されている部分もあります。有名店のシェフや繁盛店のオーナーシェフとして成功した場合、会社員を超えるような収入を得ることも可能です。また、個人で独立し自分の店を経営する場合も、経費を差し引いた売上がそのまま年収になるため、繁盛すれば高収入を実現できることもあります。
#独立を目指す理由
まとめ
飲食業界の年収は単一の数値で片付けられるものではありません。規模や経営形態、職種、経験など、様々な要因が影響を与えます。若い世代からの離職が多い一方で、経験を積むことで将来的な年収アップが期待できる業界でもあります。飲食業界の専門性や将来性を正しく理解し、努力と経験を積むことで、他の職業と同等以上の収入を得ることは十分に可能であると思います。
#後編に続きます