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#590 有名店の閉店で感じる飲食店の難しさ

先日、業界では知らない人はいない有名店が閉店するというニュースを目にしました。長年業界をけん引してきたお店です。それだけの実績があるにもかかわらず、なぜ閉店するのかと驚いた人も多いと思います。僕自身も、その知らせを聞いて、飲食店を続けることの難しさを改めて感じました。

飲食業界に長くいると、閉店の理由もさまざまだとわかります。単に「流行らなくなったから」ではなく、人手不足、家賃の高騰、オーナーの体力の限界、時代の流れと合わなくなったことなど、多くの要因が絡み合っています。今回は、そんな「飲食店を続ける難しさ」について、改めて考えてみたいと思います。
#寂しさ

閉店の理由は一つじゃない


有名店が閉店すると、「あれだけ繁盛していたのに、なぜ?」と思われがちです。でも、飲食店の経営は、売上が好調だからといって安泰とは限りません。

例えば、飲食業界にとって避けて通れないのが人手不足です。特に最近は、人材の確保が難しく、長時間労働が当たり前の業界では、オーナーやスタッフの負担が大きくなりすぎることもあります。どれだけお客様に愛されていても、働く側の負担が限界に達すれば、継続は難しくなるのです。

さらに、店舗の家賃や材料費の高騰も大きな問題です。特に都心の人気エリアにあるお店は、家賃が高額になりやすく、売上があっても利益を確保するのが難しくなります。材料費も年々上がっているので、適正価格を維持しながら質を落とさない努力が求められます。

そして、意外と見落とされがちなのが、オーナー自身のライフステージの変化です。長年頑張ってきたけれど、健康面の問題や家庭の事情で続けることが難しくなることもあります。どんなに人気があっても、経営者の体力や気力が持たなければ、続けるのは容易ではありません。
#長く続けることの難しさ

人気店であればあるほどプレッシャーも大きい


実は、人気店だからこそ抱える悩みもあります。お客様が多ければ多いほど、期待に応え続けるプレッシャーが大きくなり、それが経営者やスタッフの負担になることも。

「以前と味が違う」「昔の方が良かった」などの声は、どんな名店でも避けられないものです。飲食店は常に進化を求められる一方で、「変わらない良さ」も求められるというジレンマを抱えています。そのバランスを保ち続けるのは並大抵のことではありません。

また、リピーターが増えるほど、お店の個性を保ち続けることが重要になります。しかし、時代の変化や食のトレンドの移り変わりによって、昔のままでは難しい場面も出てきます。特に、ミシュランの評価や食べログのランキングの登場によって、飲食店の価値の測り方が変わりました。評価が高まれば集客にはつながるものの、期待値が一気に上がり、少しの変化が大きな影響を及ぼすこともあります。また、評価基準に合わせるために、本来のスタイルを変えざるを得ないケースも少なくありません。

特にミシュランの星を獲得すると、常連客との関係性が変わることもあります。予約が取りづらくなり、従来のリピーターが足を運びにくくなることもあれば、星を失うと急激に客足が遠のくリスクもあります。一方で、食べログのようなユーザー評価型のランキングでは、評価の変動が激しく、悪意あるレビューによってブランドが損なわれるケースもあります。

変わることでお客様の期待とズレてしまうこともあれば、変わらないことで新しいお客様を獲得できなくなることも。人気店ほど、そのバランスに悩むことが多いのです。
#プレッシャー

飲食店が長く続けるために必要なこと


飲食店を長く続けるためには、時代の変化に合わせた柔軟さが求められます。しかし、老舗ならではの強みを活かすことも重要です。例えば、長年培った味や技術、顧客との信頼関係を大切にしながら、少しずつ新しい挑戦を取り入れることで、伝統と進化のバランスを保つことができます。また、変わらない味を守り続けるという選択もあります。変化する時代の中で、あえて不変の味を貫くことで、懐かしさや安心感を提供し続けることができるのです。お客様が「いつ訪れても変わらない美味しさ」に価値を見出すケースも多く、そこにこだわることが老舗の強みとなるのです。

老舗の強みのひとつは、ブランド力です。長年の実績があることで、信頼と安心感を持つお客様が多く、特定の味やサービスに対する期待値も高いです。特に、特定の料理に愛着を持つお客様も多く、『あの店のあの料理が食べたい』という動機で訪れる方も少なくありません。そのため、急激な変化を避けつつも、新しい価値を加える工夫が求められます。

さらに、老舗は「人のつながり」を大切にすることで存続しやすくなります。常連客との関係を深めるだけでなく、次世代への継承を意識したスタッフ教育や、若い世代への技術伝承が、老舗の未来を左右するポイントとなります。

時代の流れに適応しつつも、自分たちのスタイルを守ることこそが、老舗が生き残るための鍵となるのです。

また現代では、スタッフの働きやすさを考えることも欠かせません。良い料理やサービスを提供するためには、働く人たちが気持ちよく働ける環境が必要です。人手不足が続く中で、給与や待遇の見直し、ワークライフバランスを考えた働き方を導入するお店も増えてきました。飲食業界全体としても、働く環境を改善し、魅力的な職業としての価値を高めることが求められています。
#労働環境

それでも飲食業には魅力がある


飲食店を続けることは決して簡単ではありません。でも、それでも僕たちはこの業界が好きで、食を通じて人を喜ばせることにやりがいを感じています。だからこそ、飲食業界の厳しさを知りながらも、どうすれば続けられるのかを考え、挑戦し続ける価値があるのだと思います。

有名店の閉店は残念なニュースですが、それは決して「失敗」ではありません。そのお店が長年続けてきたことには大きな意味があり、多くの人に愛されてきた事実は変わりません。僕たちができることは、そのお店が残してくれたものを大切にしながら、自分たちの店をどう続けていくかを考えていくことなのではないでしょうか。

飲食業界の未来が少しでも明るくなるように、僕自身も考え続けていきたいと思います。
#飲食の未来

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菅野 大輔 (ワインテイスター/食クリエーター:かんの だいすけ)
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