鈴木孝夫の世界 第1集 が面白い!
面白い本を読み始めると、なぜか著者の生い立ちというか人生が気になり始めて、調べてたり別の本を同時進行で読み始めてしまう。
今、鈴木孝夫先生の「教養としての言語学」を読み始めていたのだが、どのようにしてこの本を出すまでに至ったのか、気になって仕方がなくなった。
週末図書館に行く機会があり、鈴木先生の本が何かあるのではと検索してみると、面白そうなものを見つけた。
「鈴木孝夫の世界―ことば・文化・自然― 第1集」
パラパラめくると、鈴木先生の虜になった人達が、鈴木孝夫研究会なるものを発足し、会合を開いたときに先生が話した内容と、そこに参加したメンバーのうち十数名が鈴木先生について語る。といった内容だった。
面白そうだけれど、表紙の写真が。
羽を開く前の、雪で真っ白になった地面に立つ一羽の丹頂鶴。
美しくインパクトのある写真だけれど、何か難しそうな内容を想像させる。どうしようか。
この1冊を借りると、最近読書に目覚めた娘の借りられる本が1冊減るから、やめておこうか。
しかし、せっかく見つけたのだからと、娘に1冊分我慢してもらうことにした。
帰って読み始めると、もう止まらない。面白すぎる。
娘から、「鶴の本、面白いの?」と聞かれ、初めて私は、家の中で部屋を移動するときも手放さず、持ち歩いていることを知った。
まず、鈴木孝夫先生が講演で話された内容が2回分。
例えば、1回目の講演に、青山墓地を世界遺産に!という話があった。
海外を旅行しても、観光名所ではなく墓地に興味があった先生は、各国の墓地を歩いて回っていた。そこで気付いたこと。
青山墓地は、キリスト教や仏教、神道をはじめ、様々な宗教、宗派、人種が仲良く130年以上も平和に共存している。こんな国は他にはなく、日本は未来を先取りしていると。
だから、未来の世界はこうあるべきだというふうに、青山墓地を世界文化遺産として評価する必要があると。
これは、まだまだ序盤だけれど、こういった様々な角度からの斬新な発見が次々に語られていく。
そして、何がいいかというと、日本人は欧米人より決して劣っていないし、そもそも文化が違うのだから比べる必要もない。これから進むべく道は、国際化ではなく多様化なのだと。
先生の話に触れると、日本人として生まれたことに誇りを持ち、本当に嬉しい気持ちになる。
自ら恩師に断絶宣言をし崖っぷちに立った鈴木先生が、図書館であらゆる文献を読みあさり、自分の研究の新機軸を見つけた話などは、本当に面白かった。
そのまま、師についていた者は、皆ダメになる。師の強い光に照らせれると灼けてしまうとのこと。
でも、恩師が亡くなる前に久しぶりに会ったとき、「お前の道に進んでよかったなあ」と言われたそうで、読んでいる私もいい話だと感動してしまった。
鈴木先生について語る方々も、鈴木先生の影響を受けて興味深い研究をされていたり、研究とは関係のない分野の人がいたり、学生がいたり、その方々の話もリズムがよくて面白く、どんな人達なのか興味が湧いてしまう。
私が、講義を受けていた当時、同じ教室で聴講生として参加されていた方の文章もあった。講義の内容の一部を文章におこしてくれたもので、鈴木先生、確かにそんなことを仰っていたなという内容があり、懐かしく思った。
この本を読むと、面白いことを考えている知り合いがどんどん増えていくようで、楽しくなる。
第4集まであるようなので、是非完読したい。
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