
ハメをはずすデ・ニーロ、それが「ダーティ・グランパ」に「ラスト・ベガス」。
デ・ニーロ・ナイト 第七夜はコメディ寄りの二作品を。
それも、「キング・オブ・コメディ」のような笑うに笑えない
ではなく、健康的で騒がしい笑い のベクトルで。
紹介するは、2016年の「ダーティ・グランパ」と2013年の「ラスト・ベガス」。
どちらも、バカンスを満喫する愉快な親爺を、自然体で(心から楽しそうに!)演じている。楽しみにふける影には、老いの寂しさがあるのだが。
下品の花、だけど最後はしんみり、ダーティ・グランパ。
ロッテントマトでボロクソの本作。
中でも辛辣なのは
「デ・ニーロ版プラン9 フロム・アウター・スペース」
という評だろう。
無理もない、デ・ニーロが下品で浮気性でお節介な爺ちゃんを演じるのだから。
しかし「正義の番人でもない、悪の総帥でもない、アンチヒーローでもない、ヒューマニストでもない」ただの俗物(でも上品)を演じている、という点では、デ・ニーロ起用も理に叶っている様に思う。
1週間後に結婚を控えた真面目過ぎる弁護士ジェイソン(ザック・エフロン)は、突然の祖母の訃報受け 葬式に駆けつけるが、妻に先立たれ意気消沈した祖父ディック(ロバート ・デ・ニーロ)から半ば強引に誘われ、祖母の思い出の地であるフロリダへの傷心旅行に渋々お供することに。ところが、40年ぶりの独身生活を満喫する自由過ぎるディックは、朝から酒をがぶ飲みしながら葉巻を吹かし、ゴルフ場でのナンパに始まり、挙句の果てにはデイトナビーチで完全に羽目を外して大暴れ。 年齢も性格も全く違う二人の珍道中の行く末は・・・?
日活 公式サイトより引用
以上のあらすじにある通り、ディックは完全にジェイソンの疫病神と化す。
もちろん、ジェイソンもあれやこれや理由をつけて抵抗するのだが
そこは年の功と自身の好奇心から来る強弁で、強引に押し切る。
(そしてジェイソンをますますドツボに落とす。)
しかし、それは愛した妻を亡くした寂しさからやってくるもの。
だから、空元気を出している。
心の空白を忘れるために、馬鹿みたいにはしゃぐ。
それこそ、派手なアロハとグラサンをいい年とって身につけるくらいに。
(ここまで歳とってもアロハが似合う役者は、早々いない。)
老いること、死ぬことへの恐怖。だから精一杯はちゃめちゃをする。
そのはちゃめちゃに、前途ある有望な孫を巻き込み
最後は、「卒業」よろしく「現状からの逃走」へと奔らせる。
そういう話だ。
高値の花、そして最後はしんみり、ラスト・ベガス。
こちらはオスカー獲った名優四人が競演、という話題性も手伝ってか、
ロッテントマトの評判はそこそこ。
もちろん「高評価だけどつまらない」訳ではなく「高評価に違わず面白い」方。
あらすじは以下の通りだ。
アメリカの片田舎。どこにでもいる仲良し4人組が今日も悪ふざけを楽しむ。58年後・・・。妻に先立たれ一人暮らしのパディ(ロバート・デニーロ)は隣の家族に世話を焼かれる生活。発作持ちのアーチー(モーガン・フリーマン)は息子夫婦に介護される毎日。錠剤の服用が欠かせないサム(ケビン・クライン)は老人向けのフィットネスに通う。そんな中、唯一独身のビリー(マイケル・ダグラス)が、友人の葬儀スピーチの最中に若いガールフレンドにプロポーズ!一挙に盛り上がり、ラスベガスでバチェラー・パーティーだと久しぶりに4人が集まった。
角川映画公式サイトより引用
四人それぞれどういう性格かは、下記スクリーンショット、
ファッション、飲み物のコップを持つ手つきから、わかると思う。
イケてるオヤジのパディとビリー、小心者のアーチーに自然体のサム。
集まったとはいえ、全員が全員平等に仲良しこよし、な訳でもなく、
パディとビリーには、過去の因縁から来る不和がある。
(だから最初、パディとビリーは他二人には話しかけるくせ、互いに会話しようとしない。)
パディとビリーが対立するのをアーチーとサムが諫めたり
逆に、アーチーとサムが暴走するのをパディとビリーが制止したり
ラスベガスの喧騒の中ではしゃぎながらも、
話は、四人それぞれが「これからの余生をどう生きるか」結論を出すところへ、たどり着く。
重要なのは、四人それぞれ「寂しさを隠して生きている」ということ。
パディとビリーは「同じ人を愛していた」因縁と「その人が亡くなった」事実を振り払えずにいるし、アーチーは息子夫婦としっくりこない。サムも独り身の不安を抱えている。
パディが自宅に篭りがちなのは、「愛する人」を亡くした寂しさから未だ逃れられないため。
その「寂しさ」を、これからどのように生き方を変えることで乗り越えるか。
それぞれ出した結論に(そしてパディがビリーに、ビリーがパディにかける言葉に)不覚にも最後はしんみりさせられる。
「終活」するにはまだ早い。まだ生きるデ・ニーロ。
どちらの作品も、あまりにデ・ニーロがはしゃぎまくるので、
「自分の死を予知しているのではないか?」という悪い予感がよぎる。
そんなことはない。
どちらもデ・ニーロ存命のまま大団円で終わるので、安心して見れる。
「デ・ニーロ主演の映画」としては「洗練」されていないかもしれない。
しかし肩の力抜いたコミカルな(そして老いから来る寂しさを乗り越える)デ・ニーロを観るなら、一・二を争う出来じゃなかろうか。
※両作は現在、各種配信サイトで配信中!
※勝手にデ・ニーロ・ナイト インデックス
第一夜:暴れん坊のデ・ニーロ「マチェーテ」
第二夜:青い目をした牢人のデ・ニーロ「RONIN」
第三夜:働き方を考えさせるナイスミドルのデ・ニーロ「マイ・インターン」
第四夜:ナイトメアクリスマス夢見るデ・ニーロ「ウィザード・オブ・ライズ」
第五夜:役作りに七転八倒のデ・ニーロ「俺たちは天使じゃない」
第六夜:沈痛のデ・ニーロ「ディア・ハンター」
第七夜:ハメを外すデ・ニーロ「ダーティ・グランパ」「ラストベガス」
第八夜:華麗な空賊にして紳士にして女装癖のあるデ・ニーロ「スターダスト」
第九夜:自分探し真っ最中のデ・ニーロ「マラヴィータ」
第十夜:追憶のデ・ニーロ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」
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