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“もう一人、後もう一人、救う力を。”_”Hacksaw Ridge (2016)”

前半で一本作れたのではないか?そう思える程濃く匂い立つ、戦った父  戦う子 のドラマ。メル・ギブソン監督「ハクソー・リッジ」より。

本作の白眉は、やはり何と言っても主人公が

[repeated line]
Desmond Doss: Help me get one more
https://www.imdb.com/title/tt2119532/quotes/?ref_=tt_trv_qu

と呟きながら、取り残された傷病兵を一人、また一人と救い出す奇跡にあるだろう。

とはいえ、やはり日本人としては、日本兵の描写に「もやっと」させられる。
剥き出しの真っ白けた岩壁の上での殺戮と救出劇が、事実を基にしていながら、まるでこの世のものではないかのように、私の中では浮き上がってくる。
過剰な演出:ゾンビのようにムラムラ湧き上がってくる日本兵と、泥だらけの中を這いずり回り弾を大量に撃ち込まれながらもかすり傷一つ付かない主人公:まるで聖と俗、あるいは善と悪の対立であるかのような過剰な描写。
実話を基にしていながら、非常に超現実的。
主人公の「加護の力」が、ラストの大反撃に利用される展開にも、いささかもやっとくるものがあった。それで良いのか、と。

あるいは注目すべきは、前半部の父と子の相克と和解のドラマかもしれない。
軍隊の中でたったひとり反抗して、軍法会議にかけられる主人公。
今や忘れられた前大戦の軍服を着込み、准将の手紙を携え、単身、主人公が被告に立てられた軍法会議の場に乗り込む。
前大戦の兵士は場違いだといなされた直後、父は言う。
第一次世界大戦の時、父は、アメリカ合衆国の憲法を守るために戦ったのだ、と。
息子は信仰を守る為に戦っている。
アメリカは憲法と信仰で成り立っている国である以上、憲法を守るための戦い、信仰を守るための戦い、共に国義を守ること他ならない。
父の戦い、息子の戦い、二つのどこに違いがあるのだろうか? と。

父は、第一次世界大戦後、仲間を失ったのもあって、酒浸りで無為ともいえる人生を送っていた。そんなだらしない父親と、信仰という強さを持ち清廉潔白な主人公と、天と地ほどの違いのある二人の間で相通じるものがあった。
それは「信念を持って戦った/戦っている」ということ。
父は軍服を_そう、

Tom Doss: Artie got hit in the back. It blew most of his guts and intestines out his front, offal everywhere. Wrecked his uniform entirely. It was lucky he was dead, so he never knew how awful his uniform looked.
https://www.imdb.com/title/tt2119532/quotes/?ref_=tt_trv_qu

とまで言い放つほど蔑んでいた軍服に袖を通してまで、法廷に立つ。
息子の信仰、いや信念を守るために。

アメリカ映画お馴染みの「父と子」のドラマが、濃厚に匂った瞬間だった。

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ドント・ウォーリー
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