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犬死にする男たち。東映実録「博徒外人部隊」「暴力街」「大阪電撃作戦」三本立て。

70年代東映実録路線が今なおギラついているのは、男たちが死にきれずにのたうち廻り無様な死に方を遂げるところを、堂々と遠慮せず活写したからだろう。
カッコ悪く、強くなりきれない男たちが、むごたらしく犬死にしていく。

その死に様の見事さを、今回は三人のスターについて一作品ずつ、紹介しよう。


鶴田浩二、斬り死に。 深作欣二監督「博徒外人部隊」


まずはスタンダードに、深作欣二監督作品からいこう。

血が――狼どもを呼び寄せた!海を渡った黒背広の大集団を、長期ロケで描いた現代任侠ヤクザ巨編!本土復帰前の沖縄を舞台に、縄張りをめぐり地元VS本土、本土同士の暴力組織の凄まじい血の抗争が繰り広げられていく。
鶴田浩二、若山富三郎、安藤昇、渡瀬恒彦ほか豪華スターの凄絶なドスさばき、ラストで魅せる男たちの断末魔の叫び!
ヤクザ映画の第一人者・深作欣二監督が手がけ、この“博徒シリーズ”の中でも際立った冴えが光る注目作!
CAST
鶴田浩二、若山富三郎、渡瀬恒彦、小池朝雄、山本麟一、安藤昇
スタッフ:
企画:俊藤浩滋、吉田達
脚本:神波史男、松田寛夫、深作欣二
撮影:仲沢半次郎
音楽:山下毅雄
監督:深作欣二
東映ビデオ 公式サイトから引用

刑務所を出所したばかりのやくざ、郡司(演:鶴田浩二)は、刑務所にいる間に新興やくざ大東会に牛耳られた地元・横浜に見切りを付けて、仲間たち(小池朝雄、室田日出男、曽根晴美、渡瀬恒彦、由利徹)とともに(本土返還前の)沖縄に渡る。
そこは

兄貴の言った通りですね・・・俺たちがのし上がった頃の横浜にそっくりだ。

武闘派たちにとって、戦後闇市を思わせるフロンティア。
彼らは外人部隊よろしく一切乱れぬチームワークで、地元やくざと抗争しながら勢力を拡大する。(飛行機の爆音に紛れて某組を襲撃するシーンは、深作欣二のアクション演出の巧さが光る。)

闘争の果て、郡司は、地元の親分与那原(演:若山富三郎、手榴弾ベルトとブロンソンカットがイカス)と盃を交わし、やはり沖縄に渡った横浜時代の宿敵・工藤(演:安藤昇、佇まいだけで絵になるクールなヒットマン)と意気投合。
スペシャリストたちは、沖縄に安住の地を得る。内地ではパチンカスになっていたり、慣れないカタギの仕事でヒーコラいったり、ともかく浮かばれない男たちが良い思いをしていた
のも束の間だった。 大東会が郡司のシマを奪うべく上陸する。

大東会幹部の貝津(演:中丸忠雄)は、与那原と対立していた波照間(演:山本麟一)を懐柔し、合同作戦で郡司ら不穏分子を殲滅にかかる。せっかくせしめた利権を横取りされてはならじと郡司一家は踏ん張るも、物量に勝る大東会に次第に追い詰められて、仲間が一人づつ犠牲になる。

耐える男、やせ我慢する男、鶴田浩二の怒りは、最後爆発する。
貝津に招かれて、大東会組長(演:内田朝雄)が、五十人を超える黒背広のの本隊とともに沖縄に上陸する。郡司は仲間の生き残り&工藤とともに、一人一殺の精神でカチコミをかける。
のちの「仁義なき戦い」でも活かされるテクニック:わずかな人数に波止場で急襲され右往左往する黒背広の一団をカメラがダイナミックに追いかける、
仲間が沈み、工藤が倒れ、貝津は惨殺される。
そして最後たどり着いた郡司は、短刀で念入りに陰険に組長と刺し違える。

部下に慕われている「好人物」が組織の闇に呑み込まれ、やがて無念な結末を迎える哀しさ。無残な死骸が累々となって静寂が訪れるラスト。
全くの虚無だ、だがこれがいい。


安藤昇、ボニー&クライド。 五社英雄監督「暴力街」。


荒唐無稽なフィクションだが、なぜか実録路線の枠組に入れられている作品だ。
東宝での「出所祝い」に続く、本家本元東映における五社英雄の任侠超大作。
外連味たっぷりな演出は、ここでも健在。OPシークエンスをパンパンガールたちのフラメンコの大写しで行って、東映任侠ファンをふるいにかける。

インテリやくざ・安藤昇、ゴロやくざ・菅原文太、金筋やくざ・小林旭、影の顔役・丹波哲郎の<BIG4>が暴力街に集結した!全国制覇を狙う関西広域暴力団が、遂に最後の拠点・東京に進出してきた。銀座のクラブ買収を口火に、関西VS関東の凄まじいやくざ戦争の幕が切って落とされる!!巨匠・五社英雄監督が、アクション映画の醍醐味を存分に盛り込み描いた大スペクタクル暴力巨編!
CAST
安藤昇、小林旭、菅原文太、丹波哲郎、夏八木勲、小池朝雄
スタッフ:原案:五社英雄企画:吉田達
脚本:掛札昌裕、中島信昭
撮影:山沢義一
音楽:佐藤勝
監督:五社英雄
東映ビデオ公式サイトから引用

メインの筋は(当時テレビ・映画双方の業界の覗き見た五社だから描けたであろう)芸能界とやくざの癒着。 ただ、当事者ゆえに、今一歩踏み込んだ内容にはならず、ちょっと地味。
やはり五社英雄が光るのは、外連味の活きるバイオレンスシーンだ。

そのひとつは、安藤昇と菅原文太、このツートップが敵の事務所に殴り込みをかけるシーンだろう。堂々と黒ベンツで突っ込んで、機関銃をぶっ放す、フレンチ・ノワールばりのスタイリッシュな絵作りがイカス。

もうひとつは安藤昇の討死だ。
大金を収めたトランク片手に、敵の追っ手から逃亡を図る安藤昇。
だが、逃げきれなかった。鶏小屋の中で、ボニークライドよろしく何十発もの玉を撃ち込まれる。紙幣が、鶏がけたましく鳴き叫ぶ、羽の散らかるオリの中で風に舞う。 全くの虚無だ、だがこれがいい。


松方弘樹、ゆび。 中島貞夫監督「実録外伝 大阪電撃作戦」


最後は、「アウトレイジ ビヨンド」で中野忠雄がけじめをつけるために行ったあれを、さらに生々しく効果的に用いた映画だ。

昭和35年の秋、大阪のヤクザたちは、日本最大のヤクザ組織である神戸川田組の影に怯え、大阪双竜会をはじめとする戦後派不良グループの跳梁に手を焼いていた。大阪の中心部、ミナミの盛り場一帯は、石村組と南原組が勢力を二分していたが、ミナミに拠点を築こうとする双竜会と、石村組が激突。だが、双竜会に恐れをなした他の組は、石村組を見捨てた。このことは、かねて大阪進出を企図していた川田組の斬り込み隊長・山地にとって好機であった。だが、三代目川田組組長は戦争介入を許さず、山地は新興暴力団・大東組組長を舎弟分にすると、掛川組を派遣して石村組へのテコ入れを計る。この事実は、川田組の大阪進攻作戦として、旧来の大阪やくざ組織に刺激を与えた。双竜会と同盟を結び、川田組進攻を阻止しようとする南原は、山地暗殺を企て、双竜会の安田、南原組幹部の宮武、高山を中心に、暗殺隊を編成。血みどろの抗争は激化し、やがて山地により双竜会狩りと呼ばれる<人間狩り>が開始されるが――。
CAST
安田:松方弘樹 山地:小林 旭 宮武:梅宮辰夫 高山:渡瀬恒彦 
丹波哲郎 目黒祐樹 片桐夕子 伊吹吾郎 名和 広 成田三樹夫 中原早苗 石橋蓮司 三上 寛 川谷拓三 室田日出男
スタッフ:
脚本:高田宏治
撮影:増田敏雄
音楽:津島利章
監督:中島貞夫

東映ビデオ 公式サイトから引用

あらすじをご覧の通り、
山地 対 安田&宮武&高山 の構図。
のはずが、山地の脅しにびびった南原が梯子を外したせいで、高山は破門。
それでも、安田と高山、加えて血の気が多い若い衆たちは腹を決めて、とにかく川田組にカチコミかけることしか考えられなくなる。
対して、川田組は、大東、掛川、南原の多国籍軍を地元民と他国民で班を編成し標的の顔写真を使って構成員を教育し、システマチックに大阪全土ローラー作戦=人間狩りを展開する。 凄まじい人死が出る。

あくどくえげつない全編の中でも、重要なのは二つのシーンだ。
ひとつは、尋問するため、安田が敵の子分をドラム缶の中アスファルトで固めてこんがりと焼く、所謂「アスファルトでチン!」するシーン。
そしてもうひとつは、終盤、手打ちに流れ込む怒涛の流れだ。

多勢に無勢、ジワジワと追いつめられる安田と高山。
大東の舎弟で鉄砲玉の金崎(演:目黒祐樹)が高山をボコった挙句にマシンガンで射殺。意気消沈した安田は詰めるものを詰めて一度は矛を収めたかに見えた。

が、こともあろうに手打ち式当日、大東に一矢を報いた。
つまり最後、討ち死する覚悟で、会場でひと暴れするのだ。

もちろん、多勢に無勢、安田はそのまま惨殺される。(史実ベースなので仇敵を刺すことも叶わない)
手打ち式は親分不在で粛々と行われる。安田の席に座るものはなく、膳に残されるのは、宿主失った「ゆび」だけ。
全くの虚無だ、だがこれがいい。


いかがだろうか。
70年代東映実録路線は大量生産・玉石混淆だ。あなたが心打たれる「死に様」が、どこかに眠っているとも、限らない…。


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ドント・ウォーリー
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