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翼の汚れた十二人の使徒=無敵の人が暴走する戦争アクション「特攻大作戦」。

「十二」という数値は、西洋文明において重要な意味を持つ。
すなわち、ペテロ、ヨハネ、アンデレ、セベダイの子ヤコブ、ピリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス、アルパヨの子ヤコブ、ユダ(ヤコブの子、別名タダイ)、熱心党のシモン、イスカリオテのユダの一二人=キリストの高弟の数。

法廷ものの傑作「十二人の怒れる男」がいまなお胸を打つのは、人が人を裁く、という非常に困難で、しかし高邁な使命を担わされる、巡礼者であることを見事に描き切っているからだ。

では、その担わされる任務が汚れていたら? 
「Dirty Dozen」汚れた十二人の起こす「特攻大作戦」の結末は凄まじい。

ノルマンディー上陸作戦決行前夜。広大な林に囲まれた館で、ある作戦が決行された。実行に当たったのは、ライズマン少佐と服役中の十二人の元兵士。一筋縄ではいかない極悪人たちを集め、叩き直し、ライズマン少佐が目論んだ奇襲とは?果たしてその結果は?奇才ロバート・オルドリッチ監督が、リー・マービン、チャールズ・ブロンソンらの個性豊かな面々を、絶妙な演出でストーリーに織り込んだ傑作戦争映画。

ワーナーブラザーズ 公式サイトから引用

陸軍組織のルールに馴染まない一匹狼のライズマン少佐(リー・マーヴィン)が任されたのは、囚人ばかりで組織された特殊部隊を率いて、ドイツ占領下フランスの敵軍司令部を壊滅させる極秘作戦。生きて帰れる保証は限りなく少ない自殺ミッションだ。
「どうせ死刑なのだから」極悪人を、死が約束されている使命につかせるのだ。

選ばれた12人は以下の通り:個性派のクセモノ俳優ばかり揃っている。
特に以下の四大スターが、印象的な顔 を見せる。
狂犬のような男フランコ役のジョン・カサヴェテス(本人の監督作品同様に、烈しい面影湛えた顔)、
クールでタフなウラディスロー役のチャールズ・ブロンソン(髭がない、つまりB級アクションの主役じゃない性格俳優としての顔)、
狂信的なクリスチャンでレイシストのマゴット役のテリー・サヴァラス(もうなんか、やさぐれ者の顔)、
そして、どこか飄々としたピンクリーを演じる、若かりしドナルド・サザーランド(しかし目つきが怖くて、表情に毒があって、微妙に悪役臭のする顔)だ。
忠実で頼もしいボーレン軍曹役のリチャード・ジャッケルや、ちょっと気弱だけど情に厚いアンブラスター少佐役のジョージ・ケネディの顔も忘れ難い。


特殊訓練というと、フルメタル・ジャケットよろしく、どやされ、突かれ、シビア、死者も偶に出る そんなものを想像しがちだが、本作はちがう。
いかついオトコたちが、和気藹々としている。妙にのんびりしていて、まるで戦場であることを感じさせない構成。
作戦成功の暁には罪が恩赦されることを交換条件に参加した12人の囚人は、いずれも一癖二癖ある問題児ばかりの素人集団。そんな彼らが厳しくも人情味溢れるライズマン少佐のお導き、もといシゴキのもと次第に一致団結し、戦争のプロ集団としてメキメキと成長していく様子が、痛快に描かれる。

そんな気のいい奴らが、軍服に身を包んだ瞬間暗転。狂犬と化す。
女性を含むドイツ軍高関係者たちを手榴弾で皆殺しにする描写。
そして信仰、もとい任務の名において彼らは「無敵の人」とかしている。
大義名分を得た:殺せば殺すほど英雄なのだ。結果起こるのが、ジェノサイド。
満足して、十二人の使徒はひとり、また一人と倒れていく。

どれほど崇高な大義名分をも木っ端微塵にする戦争の非人間性を強烈に印象付ける。凄まじい暴力の噴出。 目を凝らしておいて、損はない。

そして、本作において、ならず者たちの憎悪の感情や力への野望が暴力となって爆発するさまを、メガトン級の演出力で描き出したのが、反骨の鬼才・ロバート・アルドリッチ だ。
この人の映画の恐ろしいところは、「理性的に暴力を行使」すること
渋谷シアターN クロージング上映で「合衆国最後の日」「カリフォルニア・ドールズ」の二本立てを観たのが、忘れられない。

「アメリカ嫌いのあいつ」と言わしめた(誰に?)ほどの暴力性。
彼の熱気に当てられたか、以来「北国の帝王」「ロンゲスト・ヤード」「アパッチ」「何がジェーンに起こったか?」「ふるえて眠れ」他、見漁った。

また、別の機会に、これら秀作を紹介したい。


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ドント・ウォーリー
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