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全国各地、私の好きな映画館。ミニシアター巡礼、その二。

地方のミニシアターに足を運ぶ際、まず躊躇われるのは
それが、繁華街(場によっては風俗街)の真ん中にある ことでしょうか。
郊外型ショッピングセンターのライフスタイルに慣れていると忘れがちですが、そこが昔、まちの中心地だったことを、如実に言い表しています。
映画のついでに買い物、映画のついでに食事、映画のついでに遊技、
夜の回、最終上映後には、不夜城な酒場に繰り出す。
それが昭和のライフスタイルでした。

そして、人が少なくなった今でも、生き残ったミニシアターは
その地で、「地方文化の担い手」として、映画を発信し続けている。

どうしても躊躇したくなる場合は、朝一番足を運ぶのが良いでしょう。
(シアターによっては、モーニング割、モーニングコーヒーのサービスをしている所もあります。)
朝一番に 頭をスッキリさせる。
午後がフルに使える と思うだけでも、かなり、楽しいです。


ミニシアター巡礼を続けます。
まだミニシアターに足を運んだことのない、貴方にも
ここに行きたい、ここで映画を観たい と思ってほしい。
皆様の映画体験が、もっと豊かになることを祈って、この記事を書きます。

※その1は、以下の記事を参照ください。


その1 シネマ・アミーゴ(神奈川県逗子市)

松翠深く、蒼浪遙けき逗子によく似合う、小洒落た映画館です。

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ここで飲むコーヒーは美味しそうだ、という第一印象、大正解です。

最寄りの逗子駅から徒歩だと、だいぶ時間がかかりますが、逗子海岸に立ち寄った折、訪れてみるのも楽しからん、と思います。


その2 シネマノヴェチェント(神奈川県横浜市)


京急戸部駅から徒歩10分、なだらかな登り坂の先。
ちょっと足を伸ばしにくい場所に、このミニシアターは位置しています。

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写真の雰囲気から察することはできましょうが、番組がカオス過ぎるのが、ここでしょう。アニメ、クラシック、活弁、特撮、C級、オクラ入り、何でもかんでも
しっちゃかめっちゃか、ギッタンバッタン、わがままそのもの。
映画のことを始終考えている。素敵な映画を見つけたら、これはかけねば、と思って、ずっとずっと昔恋人に出会った時のように胸がときめいてしまう人間が編成している番組です。(なので上映後のトークショーも充実しています)

定員が28名(ミニシアターの中でも最小)しかないのも、このわがままを通すためだと思えば、納得がいきます。
そして、そのわがままを通すために、いちばん苦しんでいる劇場が、まさにここだと思っています。(自粛の時代では、わがままが真っ先に目の敵にされる!)


その3 プラネットプラスワン(大阪府大阪市)


これも、数寄でやっている劇場での一つです。
映画初期の海外作品や若手監督の自主制作映画、無声映画上映等、様々なジャンルの作品をほぼ毎日配信しています。

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音響は、ご覧の通り抜群であることを保証します。

他の劇場にはない特長として、所蔵する35mmフィルムの上映があるでしょうか。膨大なライブラリーを活かし、劇場どころかレンタルビデオ、配信サイトでも早々お目にかかれない貴重な作品を上映しています。
(ちなみに私はここでロバート・アルトマン の「三人の女」を鑑賞しました。)


その4 ほとり座(富山県富山市)


13年頑張った富山市唯一のミニシアター、フォルツア総曲輪のスクリーンを引き継いで、ライブスペースからミニシアターに衣替えしたのが、2016年11月オープンの「ほとり座」です。

元ライブスペースとあって、音響は文句なし。そこらへんの劇場より、ずっとクリアです。(大音量ではないので、菓子の袋を破る音などが目立つのは、難点といえば難点。)

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ちょっと小洒落たBARスタイルのカウンターも脇には存在。
普通の「映画が終われば追い立てられる」入れ替え制の映画館とは異質の雰囲気。どこかまったりしているのが、うれしいです。


その5 宝塚シネ・ピピア、及び「宝塚映画祭」(兵庫県宝塚市)


かつて東宝は、砧とは別に、宝塚に映画撮影所を所有していました。
これは、1951年に設立されたもので、かの東宝争議で製作力が低下した東宝系の一翼として、多くの劇場用映画を製作していました。

元々大阪にいた文士などハイカラな部分が、この地に流れ込んだ結果、煙の都、庶民の町の大阪ではなく「上品な上方もの」を多数作り出すことができました。
東京一局集中以前の時代、「東京が希求する大阪のイメージ」を無理に発信する必要がなかったからこそ、砧とは違う独自の映画作りを行うことができました。
(その他、「サザエさん」シリーズ、三船敏郎の「五十万石の遺産」、岡本喜八の「大菩薩峠」、小津安二郎の「小早川家の秋」などが制作されています。)
この撮影所が衰退してからは、人材が在阪テレビジョン放送局に移出、主要スタッフとなって引き続き「上方もの」のテレビドラマの製作に携わり、今に至っています。

そういう映画の街でもあった、という伝統から
宝塚のミニシアター、シネ・ピピアでは、有志が毎年11月に、手作り感あふれる「宝塚映画祭」を開催しています。すでに20回目を記録、歴史は古い。

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当日は宝塚撮影所の映画上映、各種宣材の展示、そして「八千草薫研究」なるミニコミの掲示まであります。

都外はおろか、都内でも阿佐ヶ谷か神保町くらいでしか表に出てこない、50〜60年台東宝の貴重なフィルムが拝める機会。
ぜひ足を運んではいかがでしょうか。


その6 豊岡劇場(兵庫県豊岡市)


1927年に芝居小屋として始まり、社交ダンスの場、そして映画館と大衆文化の場として、85 年の長い年月をまっとうし、2012年3月に一度閉館
その後、リノベーションの上、2014年12月27日に再開された劇場です。
新生豊劇プロジェクトの歩みは、以下の動画に詳しいです。)

bここは、「ミニ」シアター という表現が相応しくない
アート「ハウス」と呼ぶべきなのでしょうか、
大正時代以来の風雨を耐えてきた、堂々たる構えが、皆様を待っています。
1階大ホールと2階小ホール(本記事トップ画像)の2スクリーンあります。

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「映冩室」の三文字が、時代を感じさせます。

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上記、ロビーに貼られたポスターをご覧の通り
「どうすれば人が集まるコヤになるか」番組の試行錯誤はいまも続いており
2016年度まではミニシアター系一色。マニア受けするも、客入り厳しく。
(「マッドマックス」「ヘイトフル・エイト」ら「都会のマニアにしか受けないメジャー大作」を偶にかけては、爆死していたようです。)
2017年に担当者が変わってからは、「客の入る」メジャー大作もかけられるようになり、番組に緩急を入れている様です。

ロビーには深夜まで営業するパブを併設しています。(城崎温泉泊の外国人観光客が流れてくることもあるそうです)日中なら、レモネードが絶品です。

そして、片隅には、旧い時代(戦後、50年代初期?)の写真が貼られています。
明日を夢見、がむしゃらに働き、偶の憩いにこの劇場を訪れた人々、
今はどこにいるかわからない人たちの、写真です。

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ドント・ウォーリー
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