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デ・ニーロがアメリカの未来を予見していた?演じるは暴れん坊将軍、それが「マチェーテ」。

どんな役にもなり切れる、いや役そのものになれる名優ロバート ・デ・ニーロ。
どの長編も、ハズレがない。だから、この人の代表作を挙げるとキリがない。

どうせひとつに絞れないなら、
大好きなデ・ニーロをぜんぶ扱ってみようじゃないか。

本マガジン、デ・ニーロ・ナイトと洒落込んで、
いろいろなデ・ニーロを追いかけてみようと思う。

第一夜は「マチェーテ」。
デ・ニーロが暴れん坊将軍となって世界にヘイトをばらまく。

デ・ニーロ、彼は移民大嫌いのイヤなイヤなイヤな奴。

本作、今となっては、不法移民への悪感情をアジる テキサス州選出のマクラフリン上院議員(演:ロバート・デ・ニーロ)の悪漢ぶりに尽きる。
見た目・老け方・笑い方・振る舞い方、
今となっては何から何まで「あの方」にそっくりに見えてくる。

選挙に向けて、彼のテレビ広告では、不法移民は「寄生虫」、
その侵入によりアメリカは「食い物にされ、崩壊する」と徹底的に警告する。「だからこそ」国境の電気柵設置と不法移民の恩赦反対を主張する。 


タチの悪いことに、彼は、「自分が正しい」と思い込んでいる独善者である。
怖気付く周りに構わず、自分が正しいと思ったことをなす働き者。
自ら国境へ車で乗りつけ、夜の闇にまぎれて越境したメキシコ人を見つけると、自警団員に銃殺させる。妊婦すらも容赦なく。
排外を訴える選挙演説では、「どこかの誰かさん」そっくりにアジりにアジる。 

そして、終盤、彼が移民排除を訴える理由が明かされる。
麻薬組織と結託していて、麻薬の流入を困難にして価格を吊り上げ、その利益に預かろうとしていたのだ。
彼にとっていちばん大切なのはおカネ。
愛だの平和だ権利だの、カネの前には無用なのだ。

「もしこいつが大統領になったら…。」
あまりの暴れん坊ぶりに、見てるこちらが暗い気持ちにさせられる。

そんな彼に狂犬が制裁を下す。


「首を落としたい…。」
だが、良識がある人間は、自分の手を汚すことができない。
他方、良識のない人間は、こういった過激な言動に心酔する
(つまり彼を断罪する気はさらさらない)
暴れん坊が野放しにされる。ここに世界のムジュンがある。

せめて映画の中くらい、首を落とす夢を見たい。溜飲下げたい。
この実に不快極まる傲慢不遜な白人上院議員の首を狙うのが、
主人公のメキシコ連邦捜査官「マチェーテ」(演:ダニー・トレポ)だ。

中南米の先住民が低木やサトウキビの伐採と武器に使用してきた重く幅広の刃を持つ錠が「マチェーテ」。
この男は、この刃物を好んで使い、敵の手・足・首を斬り飛ばす。
この捕物を好んで用いる性格からして、彼の目的は一目瞭然だ。 
「過激」。

妻子を喪って3年間、沈黙して生きてきたこの男。
ついに復讐に立ち上がり、メキシコの警察ともアメリカの捜査機関とも繋がっている麻薬違法取引組織全員の首を狙う。
もちろん、この組織と裏で繋がっている上院議員の首も。 

最後には、教会のシスター、入国捜査官といった選り取り見取り美女たちを引き連れて、麻薬違法取引組織の本拠に殴り込み、見事に全滅させる。
騒乱の最中、上院議員はいちもくさんに逃げ出す。

クライマックスの大乱闘(セガールの土手っ腹を切り裂いて)が終わって気づく
 「諸悪の元凶が生き残っているじゃないか。」
ごあんしんを。
最終的に彼自身もまた、夜闇の中、メキシコ人と間違えられて自警団に殺される皮肉な結末を迎えるのだから。

まとめると。

デ・ニーロは、やはり常軌を逸している人物
そして呆気なく転落する人物がよく似合うことが分かる、長編だ。


勝手にデ・ニーロ・ナイト インデックス

第一夜:暴れん坊のデ・ニーロ「マチェーテ」

第二夜:青い目をした牢人のデ・ニーロ「RONIN」

第三夜:働き方を考えさせるナイスミドルのデ・ニーロ「マイ・インターン」

第四夜:ナイトメアクリスマス夢見るデ・ニーロ「ウィザード・オブ・ライズ」

第五夜:役作りに七転八倒のデ・ニーロ「俺たちは天使じゃない」

第六夜:沈痛のデ・ニーロ「ディア・ハンター」

第七夜:ハメを外すデ・ニーロ「ダーティ・グランパ」「ラストベガス」

第八夜:華麗な空賊にして紳士にして女装癖のあるデ・ニーロ「スターダスト」

第九夜:自分探し真っ最中のデ・ニーロ「マラヴィータ」

第十夜:追憶のデ・ニーロ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」

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ドント・ウォーリー
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