ロン・ハワード監督の真骨頂は、困難が立て続けに生じる一戦で戦い続けるプロフェッショナルたちの誇り、葛藤、そして強烈な意志を高らかに歌い上げる所だ。
「ビューティフル・マインド」「ラッシュ /プライドと友情」「アポロ13」…
どの作品も良いが、個人的に一番好みなのが本作だ。
「バックドラフト」。猛烈に迫る火の手と、炎に対峙する強烈な意志をストレートに描いている。
片ッ端から焼け亡うせて跡は一面に火の海となる有様…ただ、物凄い光景。
そんな炎のゆらぎ、ゆらめきを、当時最先端のSFX、特撮を駆使して魅せる。
長蛇の走るよりも迅い勢いで建物の隙間から吹き出す様。
一斉に吹き出した火が長いなりに大幅になって、一面火の海にし、あたりを黒煙に包んで暴れくるう様。
枯れ草でも舐めるように、めらめらと恐ろしい勢いで壁を焼いて行く様。
「こっちの方は大したことはあるまい」とホッとするのもつかの間、焼け延びるだけ延びた火の手が、かくんと向きを変えて俄然として襲いかかる様。
炎がとぐろを巻く。
赤い蛇が、とつぜんに対面する者を脅かし、怯懦させ、恐怖させる。
だからこそ、消防士たちが「炎とは何か」知り抜いていなくてはならない。
以下、消防士たちが「炎」について語る台詞から引用。
そんな得体の知れない、動きの読めない、摩訶不思議な恐ろしい炎に、
勇敢に消防士たちは立ち向かっていく、そのカッコよさだけを切り取った。
男臭く、汗臭く、たのもしい映画だ。