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映画の名セリフ、、引いてみた。

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甘い言葉がある。辛い言葉がある。英語だとわかるニュアンス、日本語の方が腑に落ちやすいフレーズもある。 そんな映画の英語の名セリフを、拙訳と共に引いてみる。 目標は和田誠の「お楽し…
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#オーソン・ウェルズ

「もう何も手に入らない。」「手遅れよ。」"Touch of Evil"(1958)

1956年型の フォード・フェアレーン(Ford Fairlane)に仕掛けられた爆弾が爆発するまでを、ワンショット・ワンシークエンスで見せつける冒頭の驚くべきクレーン撮影のつかみから始まる、オーソン・ウェルズがハリウッドで撮った最後の映画「黒い罠」(原題:Touch of Evil)より。 天才ウェルズが手掛けたこともあってか、クロバティックな長回し撮影、極端なキャメラ・アングルほかバロック趣味が刻印された異色のフィルム・ノワール、「最後の」フィルム・ノワールという伝説が

「拘禁されている方が、自由であるよりも安全なこともあるさ」_"The Trial"(1962)。

オーソン・ウェルズが監督・脚色を行ったカフカ原作による『審判』(一九六二)より。 映画においてはアンソニー・パーキンス演じる会社員の青年Kがある朝突然、自宅捜査に遭い、どんな罪を犯したかも言われずにKは裁判にかけられる。数々の不条理を一通り強いられた挙句、Kは銃殺される。 こうあらすじを書くと、みんな大好き「1984年」のような超監視社会を描いているように思われるだろうが、そこはカフカ。 原作では「機能不全を越えてあらゆるもの同士が無機質に断ち切られているために不条理を強い

「人々は救世主を求めている。だがそれは、平和の王子じゃない…全く別のヒトラーさ。」_『The Stranger』(1946)

オーソン・ウェルズが「第三の男」の3年前に奇しくも「追われる男」を演じた、1946年に自身が監督・主演したフィルム・ノワール『The Stranger』より。 逃亡中かつ米国に潜伏しているナチ高官、という当時としてはスキャンダラスで生々しい題材。とはいえ、「市民ケーン」の様な圧力を受けることもなく、興収は制作費の2倍を回収する、そこそこの成功を収めた。 物語は第二次世界大戦後のアメリカで展開される。オーソン・ウェルズ演じる元ナチスの指導者フランツ・キンドラー(オーソン・ウェ