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花に嵐の映画もあるぞ(邦画編)。

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わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦…
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2021年3月の記事一覧

深作欣二監督「脅迫(おどし)」_凶悪犯との四十八時間。恐怖と暴走。

生涯に62本の映画を撮った深作欣二監督にとって、1966年公開、11作目の作品。この時点で既に、1973年の28作目「仁義なき戦い」の萌芽が見えている:男だけのざわざわとした確執と抗争の混沌の世界。 言ってみれば「日本のペキンパー」が作った「わらの犬」だ。 ある日突然、凶悪脱獄囚という闖入者に見舞われたとしたら、そして脅迫されながら幼児誘拐の片棒を担がされたとしたら……。 恐怖と戦いながら凶悪犯の手先にならざるを得なくなった男の四十八時間をドキュメンタリータッチで描破。深作

邦画「南極料理人」_全てが凍りつく世界で、もの食う人々。

おうちじかんにふさわしい「食」の映画を紹介しよう。 閉ざされた銀世界の中でもの食う日本人たちのものがたりだ。 冬の南極。そこは見渡すかぎりのすべてが氷河時代の形容のみ、空は氷の瀑布、吹きよせる漂雪に覆われ、地面は、見るかぎり白一色に結晶し、白金プラチナよりも堅く厳めしい大氷原がどこまでも続いている。いちめん真白の銀世界。 色彩といえば、ドームふじ基地の外装か、南極観測隊員たちの防寒着ぐらいなものだ。 そんな「南極の様に見える風景」を求めて、本作は真冬の北海道で大胆にもロケ