これはブラックジョークですか?でも、ほんとうに起きたこと
午後、あまりに蒸し暑かったので、エアコンをキツメに設定したら、咳きこみがひどくなってしまった。
すぐにヘルパーのRくんにお願いをする。
「冷蔵庫のアメさんを持ってきて!」。
ちょうど台所で片づけをしてくれていたRくんが「なんですって?」と、聞き返した。
ぼくは「冷蔵庫にアメさんがジッパー袋に入ってるやろ」と咳きこみながら伝える。
それでも、Rくんはいよいよ怪訝さを倍増させて、「それ、なんですかぁ?」と、声のボリュームもアップさせる。
ぼくも呼吸が整うのを待って、「アメさんやがな」と応える。
とうとう、Rくんはベッドの横までやってきた。
「アベさんって、なんですかぁ?アベさんを冷蔵庫に閉じこめるつもりですか?」と、微妙な笑顔を浮かべている。
もともと「ま行」は苦手で、発音が不明瞭になりやすいから、「今度こそ」の気持ちを注入して、上唇と下唇をしっかり重ねることを意識しながら、「アメさん」とゆっくり伝える。
Rくんは、ようやく聴きとってくれた。
「それにしても、アメにさんをつけるのは初めて聞くなぁ」とのこと。
ぼくが育ったのは、山陰の地方都市「福知山」だけど、呉服屋を営んでいたこともあって、おふくろやおばあちゃんは普段から庶民的な京言葉を話していた。
幼いころ親しんでいた京都のラジオ局でも、「アメさん」を耳にしていた記憶がある。
いかついオッサンに似合わないかもしれないけど、意識していなくても自然にむかしの言葉になるときがある。
こんなやりとりのあと、冷蔵庫の中に体育座りをした安倍晋三さんが頭から離れなくなってしまった。
しかも、ジャージを履いていた。
難病を抱えながら国の采配を振るった人には、失礼な映像だろうか。
コロナの時代に立ち会った政治家の人たちには、価値観の違いを越えて敬意を表したい。