生活するのと旅行するのとでは稼げ方が違う
私は台風の進路予測図をみることであと何時間くらいで自分の生活圏がどの程度荒れるのか、体感でわかる。
幼少期を沖縄で過ごしたので、台風のシーズンになればよく朝のテレビで台風の位置を確認して学校が休みにならないか期待してみていた。
サイズと暴風域の広さ、台風の目の位置、移動スピードが子供ながらになんとなく体に染みていた。
関東圏でそれが活きた時期があった。
とある飲食店に勤務していたとき、その夏の台風の時期にもやはりニュースは騒がしかったのだけれど、台風の進路図をみて「これくらいか」となんとなく台風を察した。
周りの飲食店はその日休んでいたけれど、当時店長だった私はオーナーにお店を開けさせてほしいと申し出た。やったことと起きたことについて綴ろうと思う。
まずこの台風が上陸した場合の立地としての安全性を鑑みた。幸い建物と建物の間にスッポリ立っている自分の店は左右と後ろからものが飛んでくることはなさそうで、突風に煽られる心配はなさそうだった(もちろんこの台風のサイズ感においてはだけれども)。
お客様は来るだろうか。答えは圧倒的にイエスだ。
家の中で退屈してどうしようもなくなった人が飲みに出てくるはずだった。沖縄においては台風の目に入って風が一旦止むと家を出て居酒屋に飲みに行き、再びの突風が吹いている間は酒場を楽しみ、台風が去った頃に家に帰る人達をよく目にしていたから。我慢できなくなった人は飲みに出ると確信していた。
それらがあってオーナーにお店を開けることを進言した。
もちろん台風対策についてもこなれていたので、当日は飛びそうなものを選び店内へしまう。建物の外側の畳めるものは畳む。
アルバイトは全員休ませて一人で営業に望んだ。
結果から言うと賑わった。
退屈して飲みに出る人たちの選択肢は一つ。私の店だ。開いているお店はこの街で私の店だけなわけだから。
お客様同士は非常に一体感が出る。外は人気がなく静かでありながらこの場には人が集まっていることと、この天気の中飲みにでてきたという妙な仲間意識がそうさせていたのではないか。大人の秘密基地化していた。
台風の日にお店を開けるなどいかにも批判の対象になりそうなことではある。なのでお店の場所や名前はもちろん公開しない。「これは結果論で怪我人が出ていたらどうしていたんだ」という人もいるだろう。当たり前だ。そのとおりだ。
私が綴りたいのは、ルールや掟破りをしろということではなく、生活から学びと活かす方法はあるということだ。道具と経験は使いようで、この日この街の飲食店の売上は0であったはずだが、結果としてよく売れた。住むことで得られたノウハウは他の地でお金に変えられるものになると考えている。私の場合これまで各所を転々と生きてきた中で得たノウハウは、対人と生活と稼ぎに大きく影響している。
当たり前だと分かっていることが実は他人からはものすごい価値がある事に気づけているだろうか。どうか見直してほしい。
今生きるその地でどれほどに学びと肥やしがあるだろうか。
これまでの暮らしから得た肥やしが今の地でどのような価値を産めるだろうか。