読書241130「楽園」
アフリカのことがもっと知りたく、アフリカについてアフリカ人の手で書かれた小説を探していました。この本は、たぶんエチオピアあたりの海よりの町で、4部屋しかない旅館をやっていた家の息子(主人公)が、借金の”かた”に隊商を率いる「おじさん」に引き取られるところからはじまります。
時代はたぶん第一次世界大戦の前ぐらいで、(ドイツで戦争がある、と何度か”おじさん”たちが話しています)母親に甘えて過ごしていた10歳ぐらいの少年は、”おじさん”に商売を教えてもらい、だんだん一人前に育っていきます。最初は隊商が出て行く間、留守の店番です。年長の”同僚”に物の売り方や、帳簿などを習い、休みの日には二人で波止場に遊びに行ったり、街角でこともたちで遊ぶ様子が描かれています。
やがて”おじさんは彼を隊商につれていきます。しかし最初の拠点で、やはり商店を営む知人に預けられてしまいます。店の夫婦は彼を息子のように可愛がりますが、ある日彼がコーランを読む教育をうけていなかったと知り、ショックをうけ、彼に勉強をする機会を与えます。
ここだけではありませんが「そんなことをするならアラビア語をもっと勉強しろよ」とか、「お前がコーランを読んでいるところをみたことがないぞ。今度一緒に読もう」という会話に、この地域(北アフリカ)にとってのコーラン、イスラム教がどういうものか感じることができます。
クライマックスは隊商の一員として、アフリカの内陸までいく旅です。動物や病気を運ぶ虫など危険もいっぱいで、さらにビジネスを理解しない内陸の民族との戦いもあります。
この時の商いは失敗で、戻ってきてから出資者に分け前がないこと、借りたお金を返せないことなどを説明するシーンでは、”おじさん”たちが、ドイツ人やインド人にまけじと地元でビジネスを成り立たせようとしているんだなと感じます。アフリカの、特にイスラム圏にはそれまでも独自の社会、ビジネスもあり、そこに前世紀のはじめにヨーロッパ人やインド人がどんどん入ってきた、そのような時代にアフリカ人はどうみていたかに少し触れることができます。
おすすめです。