人には人の生き方がある。何者かになっても、ならなくても得られる人生の充実 〜Kさんの場合〜

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Kさん(27歳)の場合
言語学者への道を志し、大学院へと進み研究を進めていた中で、その分野に間近で接したからこそ道の険しさも実感し、研究職の道は諦めることを決意。
その際、自身の性格から毎朝決まった時間に起きて、決まった時間に出社するというような生活を送ることはできないと考え、会社員ではなく、小学生の頃から触れていた将棋の講師という道へ進む。自身が教える生徒の数によって給与が決まるシステムなので、いわゆる固定給というものは存在しないものの、好きな時間に起きて、好きなタイミングで働くことができることの自由さが肌に合っていて、日々の生活が楽しいと感じている。
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—本日はよろしくお願いします。
今日お時間取って頂いたのは、多様な方のインタビューを通して、様々な生き方や考え方を知りたいと思ったからです。普段の生活の中では出会いにくい方の生き方を知ってもらうことで、「こういう生き方をしている人もいるんだ」という、誰かの新たな気づきになれたら良いなと思っています。

Kさん:以下Kと記載):わかりました。よろしくお願いします。

自分の中の選択肢としては、出版会社に就職するか、研究者になるか、将棋に関わる何かをするかということを考えていて。

—まず簡単に高校から現在に至るまでの話を教えて頂いても良いですか?

K:高校から大学へは進学が普通の高校だったので自分も大学には行きましたね。それで、そこから言語学を研究したいと考えて大学卒業後は大学院に進んで。
ただ、そこで他の研究者の方々を身近に見て、言語学は好きだけど、自分には向いてはいないかなと思い、研究の道は諦めて2年で中退しましたね。
それで、別の道で働かないとなと思っていて、その時も自分が本当にやりたいことを仕事にするという軸で考えたら、小さな頃から好きだった将棋の講師になりたいと思ってその職に就きました。学生時代からバイトで入ってた将棋教室の会社に籍を置いて、基本的にはお客さんの数に比例して給与が入るっていう歩合制で働いてます。
自分の性格上、会社員にはなれない、というか向いてないと思っていたので、比較的自由度が高く、自分のペースでできるこの仕事は合ってますね。

―当初は研究者を目指していたということなのですが、元々研究者になろうと思っていたんですか?

K:興味はありましたが、1つの選択肢だったって感じですね。大学生の時には就活もしましたし。

―就活もしてたんですね。会社員向いてないんじゃないかって話されてたのでちょっと意外です。

K:全く興味のない会社を受けるのは流石になかったですよ。なんで望んでもない会社のエントリーシートを一生懸命書くんだろうって思ってましたし。それに当時は手書き提出とかもありましたよね。無理でしたね。

―就活はしたけれども、相当絞っていたと。ちなみにどういう業界を受けていたんですか?

K:小説とか本全般が好きだったので出版業界は興味があって、その業界は受けてみました。結果はダメでしたけどね。

―そこから、研究の道にと思って大学院へ行かれたんですね。

K:そうですね。自分の中の選択肢としては、出版会社に就職するか、研究者になるか、将棋に関わる何かをするかということを考えていて、出版会社への就職に関しては早い段階でなくなったので。

―その時点である程度方向性は定めていたんですね。

K:自分が楽しそうだなって選択がなにかを考えた時にその3つだったので。

人生後悔しないようにっていう考えが前提としてあって、そう考えたら将棋の道が一番良いと思って。

―それで、大学院に進学して、他の研究者の方とも関わる中でちょっと違うかもしれないと思われたと。

K:他に凄い方たくさんいましたからね。好きなことと向いていることが合致していれば一番良かったんですが、言語学については好きではあったけど、研究者になるまでは向いてはなかったかなとその時感じました。

―そこからはやはり就活的なことはせずに?

K:そうですね。本当に会社員は向いてないと思ってたので。

―たとえばどのへんが?

K:毎朝決まった時間に会社に行くのも大変だと思うし、そもそも朝起きれないし。会社の方針に従わないといけなかったり、理不尽に耐えなければいけなかったり。本当にやりたいと思えることじゃないと従うのは無理だなって思っていて。

―それは、割と若い時から感じていらっしゃったんですか?

K:そうですね。中学とか高校の頃からそれは思ってましたね。
もちろん会社員の方が皆さんさっき言ったようなことではないとはわかってるんですが、避けられない要素はやはりあると思ってて。

―そこから将棋講師の道に進んで。

K:そうですね。人生後悔しないようにっていう考えが前提としてあって、そう考えたら将棋の道が一番良いと思って。

苦労をし過ぎずに、ご飯が食べられることが人生においては幸せだと思っているので、そういう風に生きられる何かを見つけてると思いますね。

―仕事内容だけじゃなく、働き方っていう部分にも満足されていますか?

K:朝弱いので、朝に起きなくても良いのは嬉しいですね。もちろんお客さん都合で、朝に単発で入ることもあるけど、基本的には午後からの仕事なので。

―でも、偶然将棋という好きなものが見つかって良かったですよね。

K:それは本当にそうですね。これは運要素は大きかったですけど。

―ちなみに将棋はいつからやってたんですか?

K:小学生1年生とか2年生の時くらいからですね。プロを目指してた訳じゃないですけど楽しくてずっと続けてましたね。

―偶然の出会いだったものがすごく合ってたんですね。
これまでのことを振り返ると、就活は一旦止めて大学院に進んで、そこから中退して現在、というふうに結構紆余曲折あったかと思うんですが、その奔放さも特にご家族からは何も言われず。

K:そこらへんは特になにも言われなかったですね。好きなことやればっていうスタンスでいましたし。まぁ、自分が好きなことにしか興味がいかないという性格を身近で見てるので諦められているのかもしれないですけど(笑)

―たとえば、将棋の存在を見つけられてなかったらどうなっていたと思いますか?

K:うーーん、自分に向いている何かを探していたとは思いますね。なんとか見つけられるように。好きなことで、かつ向いてることってなかなか無いですし、どちらかを取るしかないかなと。仕事という観点でみたら向いてる仕事を考えたほうが良いのかなと思いますね。
プロの将棋士の方にもいらっしゃるんですよね。その方はプロの中でも上位の方なんですが、インタビューでは、正直将棋は好きじゃないけど、向いてるとは思ってるから続けているって言ってたり。そういう視点は参考にもなりますし、大切だと思います。
苦労をし過ぎずに、ご飯が食べられることが人生においては幸せだと思っているので、そういう風に生きられる何かを見つけてると思いますね。

プロ棋士になるまでは向いていないものの、誰かに教えるっていうことまでは向いてると思ってます。

―好きというだけではなく、向いているかどうかを軸に置いて考えるというのはすごく参考になりました。。
ちなみに今将棋に関わる仕事をしていて、そこから将来的にしたいことはあるんですか?

K:将棋の認知を国内だけでなくて、海外に広められたらなとは思ってますね。ボードゲームという立ち位置で。あとは、どうしても囲碁とか将棋って比較的高齢の方がするイメージなので、若い人の人数を増やしたり、強くなりたいと思っている人のために指導書書いたり、結構ありますよ。

―そういうのがパッと出てくるのは好きだからこそですよね。
今の働き方は歩合制って仰ってましたが、いわゆるフリーランス的な働き方かと思ってて。フリーランスって働くも働かないも自分次第なので、僕なんかがしたら下手したら本当に働かなくなるなって思ったりするんですが、そこらへんはどうですか?

K:仰る通りで、最近サボり気味ですね。(笑)7月と8月は結構働いたんですけど、ここ数ヶ月は少しサボってますね。ただ、いつもレッスンを受けてくださる方々がいらっしゃって、その方々に本当に助けられています。

―固定のお客さんは波長の合う方が多いですか?

K:そうですね。長く教えることにもなるのでそこは意識してますね。

―お話を聞いてると、好きなことをそのまま仕事にできていらっしゃって、ストレスフリーな感じが良いですね(笑)

K:こんな楽しくていいのかなって(笑)プロ棋士になるまでは向いていないものの、誰かに教えるっていうことまでは向いてると思ってます。趣味が将棋なので、休みの日も基本的に将棋の勉強してますからね。趣味を仕事にできていることは運もありますけど良かったです。生きていく分には困らないお金も稼いでますから。
でも、逆に会社員の方の、お給料が安定しているっていうところはやっぱり良いなと思いますよ。こっちは体調崩したらその分給料も減っちゃいますからね。そこの保障はないので。でも…、僕は会社員にはなれないな。

―合う合わないはありますからね。僕なんかは、会社員のように働くことを強制されなければ、何もせずに1日を過ごすと思うので、今の働き方は合ってるとは思ってますし。
今日は貴重なお話ありがとうございました!

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