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人はいつでも 何歳からでも変われる  自分の「やってみたい」を大切に動いてみると

2023年に「わくわくエンジン活用倶楽部」というプログラムに参加した西さん。参加したことがきっかけで、そこから自分の「やってみたい」に踏み出せているように感じているそうです。どのような変化があったのでしょうか。

【図鑑No.38】
お名前
西 文子さん
お仕事 

英語教員
わくわくエンジン
ひとや自然のありのままの「生きる」を受けとめ、そのかけがえのなさや美しさに触れて、気づいたり、分かち合ったりする



「これは本当だ」と心の中で声がした、わくわくエンジンの考え方


そもそも、どこまで遡ったらいいかわかりませんが・・・子どもの頃から、自分で言うのもなんですが、いわゆる「優等生」でした。その一方で、自分の中のドライビングフォース、それこそ「わくわくエンジン」とはどこかつながれていなかったように思います。

大学卒業後も学業を続けて、思想・哲学の研究の道に進んでも、最終的にそこで生きていく決心ができなかったのは、それが原因の一つだったかなと、振り返って思います。

そんな中で、結婚し、出産し、進む道を変えて、ご縁あって非常勤の英語教員となりました。
教職自体も、どうしてもやりたいという熱意があったわけではなく、家庭や育児との両立を考えて、子どもと同じ時期に長期休みが取れ、子どもが学校や保育園に行っている間にできる仕事として、自分にちょうどいいと思えたので始めました。
しかしもちろんそんな甘い仕事ではありませんでした。

最初は教えるのに必死で、自分がまず勉強して、勉強したことを生徒に教えるので精一杯。毎日「自転車操業」でしたし、生徒のことはほとんど見れませんでした。

まだ「自転車操業」の頃、子どもたちが小さかった時に読み聞かせの本を送ってもらって、思い出深く感謝していた絵本屋さんにて。子どもたちはまだ小中学生

元々フランス語の方が専門だったこともあり、少し慣れてきてからも、これでいいのか、本当にやりたいのか、と自問自答する日々が長く続きました。

そんな中ある時「わくわくエンジン」に触れる機会がありました。
衝撃を受けました。

振り返れば私自身は、人の中には内発的動機があり、だからこそ前に向かって学び進んでいくという考え方をあまり意識したことがありませんでした。

しかし「わくわくエンジン」の考え方に触れた時、「これは本当だ」と心の中で声がしました。

キーパーソン21の会員となり、わくわくナビゲーターとなり、プログラムに参加したりサポートしたりする中で、子どもはキラキラ笑顔になり、子どもを取り巻く先生や保護者も生き生きと元気になるプログラムに、毎回感動しました。私自身、毎回自分の「わくわくエンジン」を言語化する作業は面白く、発見も多かったのでした。

自由学園にて、キャリア教育プログラム実施


「自分に本物でありたい」 でもそれはどういうことなのか


数年前から教員の仕事にはだいぶ慣れ、以前のような「自転車操業」はなくなってきたのですが、生徒の前に立つ自分自身はどうなんだろう、と思うようになりました。生徒の前に立っている自分がどこか自分でないような感覚があったのです。

その「自己不一致感」をよりはっきり意識するようになったのは、尊敬するある数学の先生が、ある時「自分は子どもたちに授業をしている時には、special present for youという気持ちでやっている」とおっしゃったことがきっかけでした。

ハッとしました。授業は確かにそういうものである方がよい。それこそが何か大切なものが伝わる。でも自分自身はspecial present for youという気持ちで授業しているだろうか。

とてもYesとは言えませんでした。自分にはそういうspecial present for youと差し出したいものがあるだろうか、とも考えました。

果たして自分は、生徒の前に立っている時、自分の中から出てくる本当の言葉を生徒に投げかけているだろうかとも思いました。どうも仮の自分のまま生徒の前に立ち、お茶を濁している気がしてなりませんでした。

その頃の自分のニーズは、「自分に本物でありたい」ということだったと思います。ただ「自分に本物である」ということがどういうことなのかはうまく言葉になりませんでした。

自分を元気づけた「やってみたい!ことシート」


ちょうどそんなタイミングで、かおりんから「わくわくエンジン活用倶楽部」へのお誘いをいただいたのです。

 ※わくわくエンジン活用俱楽部とは・・・
自分を見つめ直し、仲間と応援し合いながら、わくわくエンジンから生まれるやってみたいことにトライ。自分の人生をよりわくわく生きられるようになる、全3回のプログラム。

To doリストはそれまでにも日常的に作って「こなして」いましたが、「やってみたいこと」リストは、なんでも思いつくまま、やってみたいことを挙げてみるということで、たくさん出てきました。

わくわくエンジン活用俱楽部では、
一人ひとりが自分のやってみたいことを書きだして、仲間たちとも共有する


これがどう実現できたかを、次回に他の参加メンバーとも共有することになっていたので、「やってみたい」を実現することに、背中を押されるような気持ちでした。

私の「やってみたい」は、まずは「自分時間を充実させること」だったように思います。当時の私はすでに数ヶ月間エネルギーの枯渇状態でした。

しかし「やってみたい」を実現していくと、不思議とどんどんエネルギーが出てきて元気になるのが自分でもわかりました。
動いた先で感じること、気づくこと、考えることがあり、それがまた自分を元気づけるのです。

そうしていくと、「やってみたい」は一見バラバラなように見えても、自分にとっては互いにつながっているということも感じられるようになってきて、まずは自分の「やってみたい」を大切にして動いてみることに意味があると思うようになりました。 
 
この「やってみたい!ことシート」を作成した翌年の2024年夏には、リストの中にあったデンマークとフィンランド旅行も実現することができました。デンマークからは中継で、キーパーソン21の会員イベントでお話しする機会にも恵まれました。

デンマークとフィンランドで感じ考えたことには本当にいろんなことがありましたが、デンマークでの大きな学びの一つは、自分や人や社会や自然と向き合い交わるなかで、互いに学び合い、失敗を恐れず、チャレンジしながら自分らしく成長することが大事にされているんだなということでした。

デンマークで滞在した、オレロップ体操アカデミーにて。
学生が思い思いに過ごせる、屋外のハンモック

人にとって本質的な「学び」とは何だろうという問いを、私はたずさえて帰ってきました。そうした問いや気づきを、自分のふだんの生活や教職の仕事の中に活かしたいと考えるようになりました。 


薄れてきた自己不一致感


自分が差し出せるspecial present for youが何かはまだ言葉になりません。がきっと以下のようなことが含まれるのだろうと感じています。

すなわち、学校や教科書という「枠」を超えて、私たちがいる世界や社会の「今」と生徒をつなぎ、感じたり考えたりするきっかけを作ること、異なる人々との交わりの場を作ったり、本物に触れて学ぶ機会を作ったりすること、そしてその時に生徒の中から出てくるものを表現することを手伝うこと、なのかなあと。

実際に、夏の旅行を経て、自分の受け持つクラスで地域の外国人の方たちと生徒が交わる機会を作ったり、外国を旅しながら子どもたちに英語を教えている先生とオンラインでつながる授業を企画したりすることができ、自分の「やってみたい」をまたひとつ実現することができました。

どちらも何か種まきのような作業ですが、何か少しでも生徒の中に残ればいいなと思っています。そしてそうこうする間に、自分の中にあった「自己不一致感」は前より薄れてきているように感じています。


人生の伏線回収の楽しみ


「やってみたい!ことシート」の中にあったsustainable lifeということで言えば、火力発電から再生可能エネルギー発電にシフトすることもできました。

デンマークのエーロ島という場所で、地域住民が協力し合って風力発電や地域暖房システムを導入していることを学び、感動していたところだったので、夫と話し合いエネルギーシフトができたのはとても嬉しいです。

こちらもデンマークのオレロップ体操アカデミーにて。
敷地内の日本庭園で見た朝焼けに感動

またフィンランドのデザイン美術館で、リペア=修繕がテーマの展示を見て、感心したことがありました。金継ぎなども展示に含まれていて、日本の江戸文化には元々この精神がとてもあったのよねと思いながら帰国したのですが、ちょうど秋に娘の先輩から、「ダーニング」という服を長持ちさせる手法を習う機会がありました。

それまでも少しずつ自分でやってみていたのですが、習ってみるともっと自由に創造的にやれるなぁということがわかり、楽しんで実践するようになりました。
工夫しながら修繕して使う、あるもので足りさせる、それを自分の頭と体を使って実現できる楽しさ。そういう創意工夫の楽しさから日頃の私は遠ざかっていたかもしれません。

高校生の時に祖母に編んでもらったセーター。
虫食い穴をカラフルな毛糸で楽しくダーニング

エコロジーというテーマも、手芸という趣味も、中高生の頃から私の中にあったのでしたが、「あぁ、私の〈わくわく〉はこんなところにもあったんだったなぁ」と久しぶりに思い出し、人生の〈伏線回収〉のような気持ちにもなっています。そんな〈わくわく〉を大切にした方が、きっとふだんの仕事や生活も楽しくなるだろうという思いになっています。


人はいつでも、何歳からでも変われる


「わくわくエンジン活用倶楽部」での取り組みから始まって、例年になく広がりのある一年となりました。

「やってみたい!こと」には、自分の心が自然と向かう方向、わくわくしたり、楽しそう・興味深いと思ったりする方向が表れているので、それを実現していくと、自分のエネルギーがポジティブに循環し始めるように思います。

私たちの社会、それこそ学校にも、もしかしたら足りていないことの一つかもしれません

「やってみたい」を一度言葉にしてみると、そのことに意識的になって、エネルギーを集中できるし、自分が大切にしたいことがよりはっきりしてきて、さらに意識的にそちらにエネルギーを向けていけるようになるのかもしれません。

「わくわくエンジン活用倶楽部」に一緒に参加した方たちとの温かい励まし合いも大きく背中を押してくれて、本当にありがたい場でした。

参加する前のビフォーは、ギュッと力を入れて頑張る、というスタイルでしたが、アフターの今は、自分の「やってみたい」を素直に受け止めて動いて考えるスタイルになってきているように思います。

直線的な変化ではなく、行きつ戻りつかもしれませんが、何かが動いているような感じがしているのはとても嬉しいです。

人はいつでも、何歳からでも変われる

「わくわくエンジン活用倶楽部」は、そんなことも私に教えてくれたと思います。参加・サポートの全ての方に感謝しています。


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