保育園の横領事件を決算書から紐解く
2023年10月1日、福祉業界に衝撃的な事件が起きた。
社会福祉法人の横領事件は過去にも起きているが2016年迄さかのぼる。(詳細知りたい方は以下参照)
今回は、冒頭に記載した事件の全貌を、当社の決算書から紐解いていきたい。まず、なぜそんなことができるかというと、公益性の高い「社会福祉法人」の決算データはWeb上で公開されているのだ。興味がある人は是非調べてみて頂きたい。
では、本題に戻ろう。まず、当社の損益と資金収支に注目したい。以下は当社の直近期の損益計算書(損益を表す)と資金収支計算書(実際のお金の動きを表す)を簡素的に作成したものだ。
結論を申し上げると、損益は黒字で、黒字経営により生まれた約20百万円は会社の積立金に回っている。では次に、当社の資産と負債の状況を表す貸借対照表を見ていこう。
上図の左側が決算書の数字、右側が今回の報道を受けてその金額を除いた数値である。決算書だけ見ると、決して大きくはない事業規模ながら負債はほとんどなく、無借金の状態で将来の設備投資に向けた積立資産を積み上げている、至って健全経営に見える。しかし実態は、当社の積立金243百万円はその全てが横領されていたというのだ。途端に当社の資産状況は薄い状況に陥る。
ここからは私見だが、当社は毎年利益を出していること、無借金なことを鑑みて、大きな投資が控えていない限りはすぐに会社自体の存続が危ぶまれることはないと思う。
但し、少子化が進み定員割れの保育園も増えてきた中でこうして利益が出せる状況にあるのは、紛れもなく現場の保育士・職員さんたちが素晴らしい保育環境を提供している賜物である。どんな理由があろうと、そうして積み上げた資産を横領することは、職員やこどもたちへの冒涜である。
事件を犯した当人も長年かけて大きなプレッシャーの中、苦労して積み上げた資産のはずである。それをこうした形で信頼と共に失ったことは、同じ業界にいる人間として「どうして?」と思わざるを得ない。
今回は社会福祉法人横領事件を、決算書の観点から説明させて頂いた。 少子化が進み、特に保育分野における福祉法人が置かれる経営環境は依然厳しい。だからこそ、私は今後も「想い」を持った人が「自分のため」ではなく「こどものため」の保育を提供するための「健全な経営」を継続できるよう、支援していきたい。
日本の福祉を支えることは、日本の未来を支えることだと思うから。
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