小説【277字】逆転する食卓
『逆転する食卓』
私は目覚めた。見知らぬ厨房。
目の前には巨大な調理台。その上に肉の塊。
包丁を手に取ると、体が勝手に動く。
肉を切り分け、煮込み、盛り付ける。
「いらっしゃいませ」と声が漏れる。私の口から。
客が入ってくる。人の姿をした動物たち。
牛、豚、鶏……。彼らは優雅に着席し、
私の作った料理に舌鼓を打つ。
「本日の食肉、とても美味」と牛が言う。
その瞬間、恐ろしい真実に気付く。
盛り付けた肉。それは人肉だったのだ。
目を閉じて開くと、都心の自室。夢?
だが、手には包丁。エプロンは血に染まっている。
私は誰なのか。これは現実か狂気の世界か。
真実を求め、再び目を閉じる。