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神話SF古事記 7 山幸彦の深海探検

山幸彦の海底都市と異星生命体との遭遇

 時は流れ、ニニギの時代から数世代が過ぎていた。彼の孫にあたる山幸彦(ヤマサチヒコ)の時代、人類の文明はさらなる発展を遂げていた。山幸彦は、ニニギから受け継いだ神器の一つ、草薙剣を用いて、陸上の自然を管理する役目を担っていた。

 一方、山幸彦の兄である海幸彦(ウミサチヒコ)は、八尺瓊勾玉を用いて海洋資源の管理を行っていた。二人は協力して地上の生態系のバランスを保っていたが、ある日、予期せぬ事態が起こる。

 海幸彦が使用していた八尺瓊勾玉が突如として機能を停止したのだ。これにより、海洋生物の遺伝子操作や個体数の管理ができなくなり、海の生態系が急速に崩れ始めた。

 事態を重く見た山幸彦は、八尺瓊勾玉を修復するため、自ら海底探査に乗り出すことを決意する。彼は、草薙剣の機能を最大限に活用し、深海での活動を可能にする特殊なスーツを開発した。
 このスーツは、ナノマシンで構築された柔軟な外殻を持ち、極限環境下でも活動可能な生命維持装置を備えていた。

 山幸彦は、日向の海から潜水を開始した。海面下千メートルを超えたあたりから、彼の眼前に驚くべき光景が広がり始めた。それは、高度に発達した海底都市だった。建造物は生体素材で作られており、まるで巨大な珊瑚礁のように海底に広がっていた。

 さらに驚いたことに、この都市には知的生命体が存在していた。彼らは、人間とイカを掛け合わせたような姿をしており、テレパシーによるコミュニケーションを行っていた。彼らは自らを『ワタツミの民』と名乗った。

 ワタツミの民の長であるトヨタマヒメが山幸彦に語ったところによると、彼らは太古の昔、深海に墜落した宇宙船の生存者たちだった。彼らは地球の海に適応するため、自らの遺伝子を改変し、現在の姿になったという。

 トヨタマヒメは、八尺瓊勾玉の機能停止について知っていた。実は、これは彼女たちが意図的に引き起こしたものだった。ワタツミの民は、人類による海洋資源の過剰利用を危惧し、警告を発するためにこの行動を取ったのだ。

 山幸彦は、人類とワタツミの民との間で対話の場を設けることを提案した。両者の知恵を結集すれば、海洋環境の持続可能な利用方法を見出せるはずだと考えたのだ。

 トヨタマヒメはこの提案を受け入れ、和解の証として八尺瓊勾玉の修復に協力することを約束した。さらに、彼女は山幸彦に「海幸彦の釣り針」と呼ばれる装置を渡した。これは、ワタツミの民の超技術を用いて作られた、海洋生物との神経接続を可能にする装置だった。

 山幸彦はこの装置を用いることで、海の生き物たちの思いを直接感じ取ることができるようになった。これにより、より深い次元で海洋生態系を理解し、管理することが可能になったのだ。

 地上に戻った山幸彦は、この経験を通じて得た知見を人々に伝えた。海には未知の世界が広がっており、我々はその神秘を畏敬し、共存していく必要があると説いたのだ。

 この出来事をきっかけに、人類は海洋環境の保護に一層の注意を払うようになった。ワタツミの民との交流も続き、両者は互いの文明を高め合っていった。

 山幸彦とトヨタマヒメの間に生まれた子、ウガヤフキアエズは、陸と海の血を引く存在として、両世界の架け橋となった。彼の時代、人類はついに海底都市の建設に成功し、海洋開発の新時代を迎えることとなる。

 しかし、これは新たな挑戦の始まりでもあった。深海に眠る未知のエネルギー源の発見、海底火山の利用、さらには他にも存在する地球外文明との遭遇の可能性……。人類とワタツミの民の前には、まだ見ぬ驚異と可能性が広がっていたのだ。

 そして、高天原で静かにこの発展を見守る神々。彼らは、人類とワタツミの民の協調に満足しつつも、さらなる試練が待っていることを予感していた。宇宙規模での命の輪廻、それこそが、イザナギが最終的に目指していたものだったのかもしれない。

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