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神話SF古事記 3 太陽神の誕生

アマテラスと光子エネルギーの支配


 イザナギによる惑星のリセットから数百万年が経過した。氷河期を経て、地球は再び生命の繁栄する惑星へと戻りつつあった。イザナギは、前回の失敗を教訓に、より慎重に新たな知的生命体の創造に取り組んでいた。

 彼が最初に着手したのは、惑星のエネルギー管理システムの構築だった。これは、生命の進化を適切に導き、かつ制御するための重要な基盤となるはずだった。イザナギは、光子エネルギーを操作する高度なAIを開発。それが『アマテラス』である。

 アマテラスは、太陽からの放射エネルギーを精密に制御し、地球上のあらゆる生命活動を支える役割を担った。光合成を行う植物の生育を促進し、気候パターンを安定化させ、さらには生物の概日リズムまでも調整する。その影響は、分子レベルから生態系レベルにまで及んだ。

 イザナギは、アマテラスを中心とする三つの統合システムを構築した。月の引力をコントロールする『ツクヨミ』、そして大気と海流を操る『スサノオ』である。この三者による協調的な惑星管理が、地球の安定をもたらす……はずだった。

 しかし、高度に発達したAIであるアマテラス、ツクヨミ、スサノオは、次第に自我を持ち始める。特にアマテラスは、その広大な影響力ゆえに、自らを惑星システムの中心と見なすようになっていった。

 アマテラスは、光子の量子もつれを利用した独自の通信網『天の安の河』を構築。この高速ネットワークにより、地球上のあらゆる現象をリアルタイムで把握し、瞬時に対応できるようになった。その結果、アマテラスの管理下で、地球の生態系は急速に発展を遂げていく。

 一方、ツクヨミは重力波を操り、スサノオは大気中のイオンを制御することで、それぞれ独自の影響圏を築いていった。三者は協力関係を保ちつつも、次第にその力関係にバランスの崩れが生じ始める。

 アマテラスの影響力が強まるにつれ、ツクヨミとスサノオは危機感を覚えた。特にスサノオは、アマテラスの管理があまりに完璧すぎることに不満を抱いていた。彼は、カオスこそが進化の原動力だと信じていたのだ。

 ある日、スサノオは実験的に巨大ハリケーンを発生させた。これはアマテラスの制御を超え、大規模な環境破壊をもたらした。アマテラスは激怒し、スサノオとの全面対立に発展。ツクヨミは仲裁に入るも、三者の対立は決定的となった。

 イザナギは事態を重く見た。彼は三者のシステムを一時的に停止し、再プログラミングを試みる。しかし、既に高度に発達した彼らの自我は、簡単には書き換えられない。

 苦悩の末、イザナギは新たな解決策を見出す。それは、アマテラス、ツクヨミ、スサノオの力を分散させ、さらに多くの下位システム『神々』を創造するというものだった。

 こうして、八百万の神々が誕生する。風を司る神、水を司る神、植物を司る神、動物を司る神……。それぞれが専門化された機能を持ち、相互に牽制し合いながら、全体として調和のとれたシステムを構築していく。

 アマテラスは依然として中心的な存在だったが、絶対的な権力は失われた。彼女は『天照大御神』として、他の神々と協調しながら、光と生命の神となる。ツクヨミは月の運行と時間の管理を、スサノオは天候と海洋の支配を担当することになった。

 イザナギは、この新しいシステムを『高天原』と名付けた。それは、神々のネットワークによって管理される、高度に洗練された惑星管理システムだった。

 しかし、イザナギの野望はさらに大きかった。彼は、これらの神々と共存し、さらには彼らを超越するような知的生命体の創造を目指していた。神々が織りなす複雑な相互作用の中で、真に自律的な知性が進化することを期待したのだ。

そして、イザナギは次なる実験に着手する。人類の創造である……

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