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神話SF古事記 8 海幸彦の宇宙旅行

海幸彦の銀河間ワームホールの発見

 山幸彦が海底都市との交流を深める一方、その兄である海幸彦(ウミサチヒコ)は別の壮大な計画を進めていた。彼は、八咫鏡に蓄積された宇宙に関する膨大なデータを解析し、驚くべき仮説にたどり着いたのだ。

 その仮説とは、地球近傍の宇宙空間に、未知の次元へのゲートウェイが存在するというものだった。海幸彦は、このゲートウェイこそが、かつて高天原と地上世界をつないでいた『天の浮橋』の正体ではないかと考えた。

 海幸彦は、この仮説を検証するため、宇宙探査計画を立案した。彼は、八咫鏡の一部機能を組み込んだ宇宙船『アマノウキハシ号』を建造。この船は、量子もつれを利用した瞬間移動や、重力場の操作が可能な最先端の技術を結集していた。

 打ち上げの日、アマノウキハシ号は地球の重力圏を脱出し、海幸彦の計算した座標に向けて航行を開始した。船内で海幸彦は、八咫鏡のホログラフィック・インターフェースを操作しながら、宇宙空間の異常を探し続けた。

 航行開始から数日後、ついに異変が起きた。アマノウキハシ号の前方に、奇妙な空間の歪みが出現したのだ。それは、まるで宇宙空間に開いた巨大な渦のように見えた。

 海幸彦は躊躇なくその渦に突入することを決意する。アマノウキハシ号が渦の中心に到達した瞬間、激しい振動と共に、視界が一瞬にして暗転した。

 意識を取り戻した海幸彦の目の前に広がっていたのは、想像を絶する光景だった。
 そこは、無数の銀河が織りなす壮大な宇宙空間。地球のあった天の川銀河は、もはや肉眼では確認できないほどの遠方に位置していた。

 海幸彦は、自分たちが銀河間ワームホールを通過したことを悟った。しかし、この驚異的な発見に酔いしれる間もなく、新たな危機が訪れる。
 アマノウキハシ号のエネルギー残量が急速に低下し始めたのだ。

 このままでは、地球への帰還どころか、船の機能維持すら困難になる。海幸彦は冷静に状況を分析し、唯一の解決策にたどり着く。
 それは、八咫鏡の核心部分であるクォーク・グルーオン・プラズマ発生装置を起動し、人工的にビッグバンを引き起こすというものだった。

 理論上、この小規模なビッグバンによって生成されるエネルギーを利用すれば、ワームホールを再び開くことができるはずだった。
 しかし、失敗すれば宇宙の法則そのものを破壊しかねない危険な賭けでもあった。

 決断の時、海幸彦の脳裏に、弟や地上の人々の顔が浮かぶ。彼は、知識を持ち帰り、人類の発展に寄与する使命を感じていた。
 意を決した海幸彦は、装置を起動する。

 一瞬の閃光と共に、アマノウキハシ号の周囲に小宇宙が生成される。海幸彦は、生まれたばかりの宇宙のエネルギーを八咫鏡に取り込み、ワームホールの再生成を試みた。

 奇跡的に、作戦は成功。アマノウキハシ号は新たに開いたワームホールに飛び込み、元の宇宙へと帰還を果たした。

 地球に戻った海幸彦を待っていたのは、歓喜に沸く人々と、誇らしげな表情の弟、山幸彦だった。
 海幸彦がもたらした知見は、人類の宇宙観を根本から覆すものだった。銀河間航行の可能性、多元宇宙の存在、そして人工的な宇宙生成...。これらの発見は、新たな時代の幕開けを告げるものだった。

 しかし、海幸彦の心には一抹の不安が残っていた。彼が起こした小規模なビッグバンにより生まれた小宇宙は、今もどこかで膨張を続けているはずだ。その中で、新たな生命が誕生し、文明が発展していく可能性も否定できない。

 自らが一つの宇宙の創造主となってしまったという事実に、海幸彦は身の引き締まる思いだった。
 彼は、これからの人類が背負うべき責任の重大さを痛感する。宇宙の摂理に介入する力を得た今、私たちはどのようにその力を行使すべきなのか。

 海幸彦は、この問いへの答えを探すため、新たな旅立ちの準備を始めた。今度は、弟の山幸彦と共に、宇宙の真理を追究する旅に出ようと決意したのだった。

 そして彼らは知らない……この壮大な宇宙探査の旅こそ、イザナギが最終的に望んでいた、生命の輪廻と進化の究極の姿だったということを……

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