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パターソンの世界

フランク・パターソン(1871~1958)ほど、旅を好むサイクリストに愛されている画家はいない。そのペン画の魅力は説明不要である。自転車で旅をすることのありとあらゆる面白味が、あますところなく描かれている。

38歳で足の怪我のために自転車を乗ることができなくなったらしいが、その後もサイクリストとサイクリングの素晴らしさを描き続けた。パターソンの描いた自転車は英国流のモデルで、いわゆるランドナーとは異なるが、自転車の旅におけるその存在感はランドナーとまったく異ならなかった。

1970年代に自転車旅を始めた多くのサイクリストがパターソンのペン画にふれ、自分達の旅の感興を描き切ったものとして愛した。パターソンの画業の全盛期は20世紀前半と思われ、自転車旅の基本的な魅力はその頃から何ら変わっていないように見える。

今は、自転車の道楽を始めたばかりの人が数十万円もする英国車に乗るようになった。彼らが、パターソンの画集に描かれたような世界を実際に体験しているかどうかは分からない。

パターソンのペン画はサイクリングの世界の至宝である。パターソンが亡くなってから60年あまりが経つが、いまだに自転車界に於ける彼の画業をしのぐものは現れていない。

暗くなってから宿に辿り着くことの一種のスリルと、ほっとする気持ちが描かれている。
パターソンは小舟も好んで多く描いた。自転車と同じ魅力があったのだろう。
この角度から自転車が描かれることが多い。いちばん美しく見える角度とも言われる。
羨ましい旅のひととき。
カフェではなくティーであることにパターソンの理想がある。
自転車の修理も旅のひとコマ。田舎には自転車プロショップなんてない。


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白鳥和也/自転車文学研究室
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