神様!またですか~!
プランター菜園の手入れを終えて一休み。椅子に座って空を仰ぐ。夏と秋が混在したよう青空を眺めていると、右目に黒いモヤモヤが現れた。網膜裂孔の後遺症で飛蚊症のような症状と、黒い煙が流れるような症状が時々現れる。眼科の先生によれば、短時間に消えれば問題なしとのこと。ああまたかと思いながら、収穫したパプリカとオカワカメを手に階段を降りた。
オモチャみたいで可愛いパプリカは、食べるのがもったいなくてちょっと窓辺に置いておく。栄養たっぷりなオカワカメは味噌汁とサラダに。右目のモヤモヤを気にしながら食事を終えて、洗い物をしていたらあららら、黒い煙が雨のように降り始めた。
あれ、ちょっとヤバい?
左目を閉じてみたら再度あららら、うすぼんやりとしか見えない。前は黒い煙が流れても見えなくなることはなかった。
これ、だいぶヤバいかも。
ああ、神様、またですか~!
と言うわけで翌日、朝イチでかかりつけの眼科に駆け込んだ。
やたら長い検査の間、2年前のことを思い出す。難病のかかりつけ医の先生に、目が変なんで、明後日外科の診察があるので眼科にも寄ってみるつもりだと言うと、「すぐ行きなさい!」。
先生の剣幕に追いたてられるように眼科へ。診察後先生に、このまま放っておくと失明すると言われ、言葉を失った。
難病を発症した時も「癌です」と言われた時も、「ああ、そうなんだ」と、不思議なほど自然に受け入れていた。神様に選ばれちゃったんだからしょうがないやなんて思ったりもした。けれど「失明」という言葉には心が大きく揺れた。片目とはいえ、考えてもみなかった「明かりを失う」という恐怖。緊急手術で事なきを得たけれど、検査の間、あの時の恐怖がまざまざと甦っていた。
結果、出血場所が特定できず治療もできず、1週間後にまた検査をすることに。明らかに悪化したらすぐ来るように言われたけれど、1週間も不安を背負うのかと憂鬱だった。
お彼岸に夫の両親のお墓参りに行き、お願いをした。どうか、守って下さい。
義父母はただただ優しかった。長男の嫁でありながら孫も見せてあげられず、あげく難病を発症した私に優しさだけをくれた。鬼籍に入っても心配ばかりかけて、空の上でしょうがないな~なんて苦笑しているかしら。
お寺の入り口に立つ観音様のお顔が、大丈夫ですよと微笑んでいるように見えて、ほんの少し不安が和らいだ。
そして1週間。良くも悪くもならずに再検査。けれど再び出血場所も特定できず治療もできず、また1週間後に来るようにとのこと。うーん。
ここ最近通院続きで疲れていたけれど、子宮頸癌の定期検査も、膠原病内科の検査も、糖尿病内科の検査も、外科のすい臓の定期検査も殆ど問題なしの優秀賞で万歳三唱。まあ、それでよしとするかと気持ちを切り替えた。こんなに病気を抱えていても、こうして普通に生活できている。病気の神様に愛されちゃっているけれど、運は強いのだ、私。
ディサービスが休みの母に連絡をして、一緒に食事をしてお買いもの。八百屋さんでひねくれキュウリが1袋150円!荷物が重くて諦めたけれど、帰りに寄ったら奇跡的に1袋だけ残っていた。わーい!
規格外だろうがくねくねだろうが味は変わらない。
人間のひねくれ者には関わりたくないけれど、お財布に優しいひねくれ物は大歓迎だ。どんどん市場に出してほしい。
太い部分と細い部分を切り離し、太い部分は塩水へ浸けておく。細い部分は叩いて、ポン酢とごま油で味付けして叩きキュウリに。スライスして塩もみしたものは明太子とマヨネーズで和える。
大根と人参と生姜を千切りにして、塩麹でモミモミ。粉末のダシも加えてもうひとモミモミ。
塩水に浸けておいたキュウリに切れ目をいれて千切り野菜を挟めば、あら簡単、さっぱりオイキムチの出来上がり。
辛くしたい時は刻み野菜にキムチを混ぜる。
お目👀のモヤモヤは晴れないけれど、好きな料理に没頭しているうちに心のモヤモヤは何処へやら。
奇跡の1袋も強運の証。かも。
さあ、疲れて帰ってくる夫のために、あとは何を作っておこう。と、思ったところへ夫からライン。
「たこ焼き買ったよ💓」
さりげなく小さな幸せを運んでくれる夫。その優しさが嬉しい。
さあ、たこ焼きのお返しは何にしよう。気合いを入れて冷蔵庫の扉を開けた。
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