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「視線の向き」と「胸の向き」の話 471
夏の間中ほぼほぼ板間の上に落ちていた猫が座布団に座るようになったここ数日。
今朝は座布団の上から降り、鼻先で座布団の端をめくろうと何度も頭を突っ込んでいたけれど、もちろん座布団はズルズルと前進するばかり。
思うようにならず座布団をケリケリしてはハッスルして走り回る…を繰り返していた。
「もしかして下に入りたい?え、寒いの?」と人間がやっと気づき、冬によく潜る専用の布団を持ち出してきたら…カバーをかける間もなく潜り込んで眠り始めた。
そうだよね、そんな小さいからだだと寒さも早く届くよね…と改めてグンと進んだ秋を認識した雨降りの本日。
数日前からこちらの本を読んでいる。
著者の奥中さんはTwitterでその存在を知り、その文章から学ばせてもらったこともたくさんの整体師さんなのだけど。
食事だったり、考え方、心がけることなどは「なるほど…」と学び、余分なものはやめたり、必要なものは取り入れたりとやっていたのだけど、日常の動作にその学びを取り入れるというところがわたしの実力全く及ばずで、Twitterのお話を聞いて自分で実践!というところまで至らずにいた。
その奥中さんの体についての本ということで「そりゃ読むでしょ、そしてやるでしょ」といそいそと読み進めていたのだけど。
体についてのお話も本当にわかりやすくて名言がたくさんなのだけど、わたしが「うわぁ…」と固まるほど衝撃だったのは実践のところ。
と言っても難しいエクササイズのようなものは0。
日常の動作を行う際にやってくださいというシンプルなもの、できるだけやってくださいという感じなのだけど…これが驚きだった。
というのも、本の中の実践部分に「視線と胸の動き(向き)を揃えて動かす」という動作の紹介があったのだけど。
わかりやすいイラストの男性が、上を向く視線の時は胸骨あたりも同じ矢印で上を向き、視線が下を向くときは同じように胸骨も下へ向く、という動作があった。
シンプルだし矢印を合わせるという表現もわかりやすかったので、すぐに自分でやってみる。
視線の向きと同じ方向で顔の前に右手の人差し指を指し示す、同じく胸骨の前に左手の人差し指をセット。
まずは正面から…うん、当たり前だけど視線と胸の向きは揃っている。
次は上…と視線の動きの通り目の前の指は上を向く、が…胸の前の指は全く動きもしていない。
「え?こんなに動かんもんなん?」と正直驚いた。
そして、どこか「勝手に、自動で動くもの」みたいに思っていた自分のぐうたらさというか横柄さというか、そんなものに恥ずかしくもなった。
なるほどどうりで、髪を切った時に美容室で撮ってもらった横向きの写真の自分が思った以上に首を前に出して写っていたわけだ。
その時は普通に前を向いていると思っていたから余計にショックも大きくて
「…おばあちゃんじゃん」なんて凹んだことがあったのだけど、それってこれだ。
首だけ動かしてたからそうなったんだ…とすんなり理解ができた。
「じゃあ、胸も一緒に向くってどんな感じなん?」と意識して視線の向きと揃えてみると…今まであまり味わったことのない体感がやってきた。
両手を広げて胸が広がる感覚は、言ってみれば横に広がる感じなのだけど、この体感は上下、しかもおへそやお腹、みぞおちあたりから伸びていく感じじゃない…そう、伸びをして感じる感覚とは違う感覚。
まさに胸骨から開く、肋骨が蛇腹の動きをして開いていく感じ、今まで動かなかったところが動く感じ、「胸骨伸びてるやんね?」という感じなのだ。
「これが本当の『相手に向く』ってことだ…『こころを向ける』ってこれだ…」
初めて理解できたように感じた。
これが「初めて」ということは、今まで頭はその人の方を向いているようでも心は傾けてなかったってことか…と思うと、「そりゃ人間関係、上滑りもするよね…」と合点しかいかなかった。
これまた一人で自分の横柄さやなんやの恥ずかしさを味わう。
人にも、扱う物事にも目も心も揃えて向かうこと。
これ、小学生から教われるといいよねぇ…なんて勝手なことを思う。
その後も、顔の前と胸の前に人差し指センサーを突き出し、上に下に、右に左にとただただ何度も繰り返していたわたしを猫がいぶかしげに見ていた。
そして、これを知った次の日からことあるごとに日常動作の中で「揃える」を意識するのだけれど…まぁ、驚くほどできていない。
あ、驚くことはないか…あれだけ出来てないってわかってたんだから、至極順当な結果を確認しているだけとも言える。
その都度センサーを登場させつつ修正をかけるのだけど…
「なるほど、現実を動かすって体の前側の仕事なんだな…」なんてことも勝手に思いながら新しい感覚を味わっている。
不思議なもので、本当に心もその方向に向かうようになる気がしていて、感度の軽さというか、胸の軽さを感じながら楽しんでいる。
明日も指のセンサーを登場させながら、猫にいぶかしがられながら、続けていくのだ。