オランダ発Miso屋:Miso屋を個人事業レベルなのに、日本の田舎と海外二拠点で起業。エコ移動式味噌蔵建設への道⑧
今週まではかなりタイトな予定なので、これから数回は以前に別の所で、私が書いたもののアーカイブを載せたいと思います。ご勘弁ください(笑)。
道中2
2022/03/23 17:00
非常に唐突ですが、生命の危機を感じた経験ってあります?
もしかしたら、「うぅ!これが最期?!」と自分が感じる瞬間です。
もちろんその様な瞬間がなく、穏やかな方が良いのかもしれませんし、普段の生活で感じる事ほとんどないのが普通ですよね。
旅は予想外の出来事ばかり。と前回お話ししたのですが、何度か旅(放浪)の中で「これが最期?!」と感じた瞬間があります。
1:テントで野宿できる場所を探して、暗くなる前に見つけた大きな草原でテントをピッチして寝ていたら、翌朝異常な気配と大きな物音で目を覚ます。テントを開けると、集十頭の牛の群れに囲まれていた。どうやら群れのボスっぽい雄牛がすごく私を見ていて、距離が近い。そして奴らは、圧倒的に私よりもデカイ。テントも潰されたら、今晩から寝る場所ないし!もう、頭の中で闘牛みたいな映像がエンドレス・リピート。
2:スペインの砂漠からやっと生還して(前回の道中をどうぞ)、あー村が見えてきたし、人間界に無事戻る事ができる。でも、なんだか、寂しいな。でも、飲み物もないし戻らないとな。と内心ほっとして遠くに見える村と荒野を一人見つめながら、思いを馳せていたら、どこからともなく野犬の集団が!えぇー!!もちろん鎖につながれてないし、人間に飼われていた感じもゼロだし、なんかちょっと、遠吠えみたいので「ワーン!」って別の犬達に私の事知らせてない?!いやガウガウしてるし、絶対怒ってるよね?
3:毒キノコ。
今ここにいるいう事は、無事だった。ということなんですが、一番ほんとに危機を感じたのは 毒キノコ。あるクロアチアの島にある小さな村に2ヶ月ほど住んでいた時の事です。
村には100人くらいしか住民がいなくて、お店は一軒のみ。もちろん私以外の全ての方が村人。夏場には太陽を求めて観光客も来たりするらしいのですが、もろオフシーズンの11月から行った私は、ちょっと珍しがられて「え?なんで冬に来たのよ?」と言われる。そのうち当たり前の様に私は住民中に存在を知られ、なんだか採れたてのタコを一匹もらったり、オリーブ畑の手伝いをしたり、村の子供達と折り紙をしたり。
村にもだいぶ慣れたある日、村には一本のみぐるっと村を回る道があります。そこを日課で朝、昼、晩と歩いていました。するとおじさんがクロアチア語で「おうおう、このキノコ食べられるから、持ってきなよ!」(私はクロアチア語はできないので、これは全く私の勝手な解釈でした)と言っている様子(そう、あくまで様子)。「わーラッキー。このキノコと、昨日もらったワイルドほうれん草でオリーブオイル炒めのランチにしよう!おじさん、Hvala vam!」と家に帰り、炒め物にして食べました。
その夜22時頃、寝ようとしたら強烈な吐き気と腹痛、嫌な脂汗が出て、全身から悪寒が。体が感じます、これは異常事態だと。1時間から2時間ほど一人部屋でもがき苦しみ、もう吐き出すものもなくなって横切る仮定と妄想。
あ、キノコ。
そして、とりあえず弱り切った体で、一人なんでも知っていそうなグーグルさんに聞いてみる。
" poisonous mushroom"
上がってきた画像をスクロールして、記事を読む。どうやら、毒キノコには多く分けて二種類あるらしい。
1:気持ち悪くなって吐いて、それから体調が回復に向かうキノコ。
2:気持ち悪くなって吐いて、それから一度は体調が回復に向かうようにみせかけて、実はその回復のしていると思わせる数日間の間に、毒が血液中、腎臓などに周り、気づいた時には腎不全を起こし、もう手遅れなもの。(←フェイントのレベルが高すぎ)
1の毒キノコは始めの消化の段階で体が拒否反応を起こすので、吐き出すのは摂取してから約30分〜2時間以内。2の毒キノコはキノコが完全に消化され吸収されてから、体に反応が出るので摂取から要する時間は大体8時間〜16時間。
あれ、キノコ食べたのお昼だよね。
スクロールして出てくる「世界で最も猛毒なキノコ」の画像を見ながら、なんか、ちょっとこのキノコっぽくないか?(←完全にグーグル沼)と一人、真夜中に精神的に追い込まれてゆく。「早く病院に行き、急いで透析を受けるか腎臓移植を受ければ助かる。」って。
え、この村病院なんてないし、近くの病院って確かドクターヘリでドブロブニクとかに行かなきゃいけないって聞いたな。
え、というかもう吸収されてそうだし、手遅れ?
あ、確か家康って「天ぷら」食べて亡くなったんだっけ。私も「キノコ炒め」で亡くなったって言われるのかな。
あ、高校の友達とかロンドンの友達には「なんかヒロセっぽかったね」って、せめてちょっと笑ってくれるかな。
う、でもお母さん悲しむよな。
う、でも私幸せだったな。
お、最後は自分で自分を助けなきゃ!
お、明日遅くても行動しよう!運命にかける!
とひたすた自分の約四半世紀の人生とグーグルのキノコ画像をその夜は見つめていました。
次の日、村の知り合いの家族に言って、島にある小さな診療所へ。
「うーん、まぁ大丈夫じゃない?オリーブオイルの取り過ぎとか?あはは!」と診療所のおねぇさんに言われて、もう後は神のみぞ知る。それから特に二日間は自分の腎臓が心配でしたけど、今日も健康なので、あのキノコはなんだったのだろう。
この経験から学んだ事は、最終的に信じるのは他人ではなく、自分自身。そして、母なる自然は「生と死」を常に生み、育み、それは共に私たちの身近に共存してという事。
大げさですけど、だからこそ与えられた時間を、可能な限り後悔のない様に生きたいと思います。
短時間でも、かなり軽くても、己の死を意識した時間が教えてくれた一番の事は、「キノコは貰うな、お店で買え」という事(笑)、そして食の力。食べ物は薬にも、毒にもなるもの。
こんな経験をした後に思い出したのは、ファイト・クラブ。見方によってはかなり過激でニヒルな映画ではあると思います。そんな映画ですが、ブラット・ピット演じるタイラーが言うセリフが。
First, you have to give up. First, you have to know, not fear, know that someday you’re gonna die. It's only after we've lost everything that we're free to do anything.
「先ずは、諦めなきゃダメ。先ずはな、恐怖じゃない、お前が知らなきゃいけない事は、いつかお前は死ぬという事だ。全てを失った後にだけ、俺らはなんでも出来る様になる。」
この映画を観ると、味噌の入ったアタッシュケース欲しいな。かっこいいな。と妄想します(笑)。
写真はロンドンの時に仕事を2週間休み、「私ノルウェーの山小屋で一人、痛いくらいの静寂を聴いてきます。」と上司に告げて、ノルウェーのフィヨルドの近くの小屋にに籠っていた時のモノクフィルムのセルフポートレート。旅ってほんと予想外の事しか起きない。この時も、最後のバス停から山小屋まで片道3時間くらい歩いていたら、完全に冬の北欧をナメていて、「わー雪!」なんてはしゃいでたら、15時位にあっという間に暗くなったりとか(笑)。グングン気温の下がる真冬のノルウェーで、待てよ、道あってるのかな?と不安になりました。でも言葉にならない、息を呑むほどの美しい無数の星を見ました。この時の何個かのトラブルは、それほどでもなかったレベル(笑)。