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和気町研究室

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記事一覧

うろこ雲

 朝の通勤途中、空を見上げると、うろこ雲が浮かんでいた。まるでレースのカーテンのように空一面に広がっている。それも幾何学模様の規則正しい美しさを保ったまま。  よくよく見ると、羊たちが群れをなして前進しているようでもある。羊のお尻のラインを想像すると、なんとも愛らしい雲たちだ。前日まで気持ちのいい秋晴れのもと、雲一つない青空が続いていたので、余計にその日の朝の雲は新鮮な感じがした。  その雲の写真をスマホで撮り、通勤電車の中でネット検索し、うろこ雲であることを確認した。何事も

サギソウ

 かわいらしい花を思いがけず目にした。鑑賞用の鉢に植えられた小さな花。遠い昔、小学生だった頃、その花が庭先に咲いていたのを、ふと思い出した。「きれいだろう、シラサギが飛んでいるみたいで」と当時父親に教えてもらった。今でもその花の美しさ、その言葉を鮮明に覚えている。  今、わが家の周りには、田んぼや用水路も多く、餌を求めてシラサギが訪れているのを時折見かける。人影に気付くと、サギは大空に悠々と羽ばたいてゆく。美しく羽をのばした姿。それは子どもの頃に見た、風に揺れるその花びらと重

学び舎の記憶

 学校の統廃合により、使われなくなった小学校の美化活動があると聞き参加した。学び舎は山の辺にたたずんでいる。眼下には吉井川の川面が広がり、見上げると天神山の稜線が弧を描いて美しい。外に面した廊下では、ツバメの巣が以前より多くみられた気がした。  子どもたちは、掃除場所の役割分担を事前にしっかりしていたのか、みんなてきぱきと動いている。廊下の掃き掃除、教室内の雑巾がけなど、普段から慣れている様子である。感心したのは、困ったときには大人に助けを求め、地域の方々と協力して活動をして

クリームソーダ

エメラルドグリーンの海の上に、白い砂浜の島が浮かんでいる。行きつけのベーカリーで、新しいドリンクメニューが出たと聞いて早速注文した。実に40年ぶりの再会である。 幼い頃、「ハレの日」には家族でデパートのレストランに行った。ガラスケースの中には美味しそうなメニューが並び、めったに食べることのない洋食に目移りしたものだ。ごちそうは少し我慢してでも、この贅沢な飲み物を注文するのが密かな楽しみだった。 バニラフロートをスプーンですくい、一口ずつ口に運ぶ。まったりとした甘みが口の中

片鉄サイクリング

トンネルを自転車で通過するのは、初めての経験かもしれない。トンネルの奥から差し込んでくる光の向こう側には、一体どんな世界が広がっているんだろう。 岡山県和気町にある和気鵜飼谷温泉を出発点に、「片鉄ロマン街道」を北に向かってゆっくりとペダルを踏み込んだ。クロスバイクはサドルが少し高く設定されていて、いつものママチャリに比べ、とても軽快で走りやすい。 赤い屋根とパステルブルーの外観で有名な天瀬駅にあっという間に到着した。レトロな駅舎だ。当時の面影を残し休憩場所として、また写真