登場人物を魅力的に書く方法(ヒロインのキャラ立てについて)
1.登場人物の名前を書いてください。
なにをわざわざ当たり前のことを、と思われるかもしれませんが、初心者の小説は、登場人物の名前が出て来ないんですよ。
いやそれ嘘だろ? と思われるかもしれませんが、日本語は主語を省略できる言語なので、登場人物の名前を書かないままお話を進ませてしまうのです。「登場人物の名前を書いてくださいね」とアドバイスすると「ええーっ、書いてます、あ、いや、書いてませんね」とびっくりされる方がいらっしゃいます。(叙述トリックで読者を騙してどんでん返しをするのなら別ですよ)
初心者は一人称小説を書きたがるのですが、私は~、僕は~、で書く場合、意識して名前を書かないと、お話の最後まで「私」の名前が出て来ないまま終わってしまうんです。
男は~、女は~、という書き方をする人も多い。女には妙齢の美女も、赤ちゃんも、おばあさんもいます。名前で書きましょうよ。名前はキャラを構成する重要な要素です。
2.ネーミングは大事です。
綺麗なお姉さんには綺麗な名前をつけてほしいです。
「民代という名前だと、戦前の女学生のイメージになるからやめましょう」とアドバイスしたとき、年配の方から「草刈民代は戦後だ」と反論されてしまったのですが、民代に綺麗なお姉さんのイメージを持つのは60代以上です。あなたの好みではなく、令和を生きる読者さんに向けて書いてください。
私が使っているのは「イメージで選ぶ赤ちゃんの名前辞典」ですが、ネットで検索することもできますよ。
登場人物のイメージにぴったり合ったネーミングをしましょう。
3.ヒロインの外見描写をしてください。
ビキニ鎧の女騎士とか、貧乳のロリエルフ、メガネの委員長と書けば読者さんがイメージしてくれる。外見描写なんて必要ない、記号を書けばわかるんだ、という意見もあります。ライトノベル、それもネット小説を書いている人に多い考え方です。
それも正しい考え方ですが、読者さんがイメージできる程度の外見描写はしてほしいなと思います。簡潔にヒロインの外見描写をしましょう。
4.形容詞は一文にひとつでいい。
美人を描くのに、形容詞を盛る人がいます。「~ような」「~なほどの」を繰り返すのです。
まずNGの文章から。
菜々緒の瞳は黒曜石のように輝き、黒髪はさらさらで、人形のように造作が整った顔立ちをして、咲き誇る薔薇のような笑みを浮かべて、暴力的なほどの美貌を誇っている。
この短い文章に、形容詞が四箇所も出てきます。形容詞は盛りすぎるとくどくなり、読者に伝わりにくくなります。「~ような」は一文にひとつでいいのです。
菜々緒は咲き誇る薔薇のような女だった。黒髪はさらさらで、瞳は黒曜石のように輝いている。
で意味は通じます。すっきりして読みやすいです。ストレスなく読める文章が理想です。
5.周囲の声を書こう。
描写は簡潔に、形容詞は少なく書いても、ヒロインの魅力を読者に伝える方法はあります。
周囲の声を書くのです。
菜々緒が廊下を歩くと、周囲の視線が集まった。
「うわぁ。やっぱり綺麗だな。すげえ足長い」
「菜々緒さんって、オーラがあるっていうか、やっぱり目立つね」
「モデルとかタレント並みじゃね?」
「アイドル歌手でも、菜々緒さんみたいな綺麗なタイプは、ちょっといないよ」
細かい描写をしなくても、周囲の声を書くことで、菜々緒が綺麗なことが伝わります。
6.エピソードで魅力を伝えてください。
菜々緒は綺麗なばかりではなく、優しい性格をしていた。
この文章でもいいのですが、優しい性格をエピソードで見せてしまうともっといいですね。
菜々緒の膝に水がかかった。
「きゃあっ」
ウエイトレスがテーブルにコップを置こうとしたとき、子供がぶつかったせいだ。水が入っていたコップはテーブルに横倒しになり、伝い落ちた水が菜々緒のスカートを濡らしている。
「失礼致しましたっ!」
ウエイトレスはあわてて布巾で拭きながら、恐縮している。
「ううん。いいのよ。夏だからすぐに乾くわ」
こうしたエピソードを書くことで、菜々緒が優しい性格をしていることが伝わります。
いろんな方法を駆使して、魅力的なヒロインを書いてくださいね。
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