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i-Constructionによる災害復旧対応

 2016年4月16日の熊本地震により大規模な斜面崩壊が発生した阿蘇地区の災害復旧工事として、熊谷組さんが行った工事について生産性向上WGで勉強会を実施しました。調査・設計~施工、管理までのすべての段階において、i-Constructionを存分に活用し、先進的な工事として、『2016年度 土木学会 技術賞受賞』を受賞した工事です!
 i-Constructionについてはこちらを参照してください。国交省i-constructionHP

 勉強会の講師としてお招きしたのは、熊谷組土木事業本部ICT推進室 担当課長の天下井 哲生様です。これまでこの熊本現場を含めてi-Constructionによる工事に10年近く従事されてきた経験から、貴重な話を伺うことができました。

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熊本地震により被災した阿蘇大橋地区の斜面

総合的なi-Constructionの取り組み

 熊本地震からの災害復旧ということで、工事のポイントは次の通りです。
  ・崩壊地内に人が立ち入れない状況
  ・迅速な対策の遂行が必要
  ・復旧作業は全て無人化施工
 このため、調査・設計・施工・管理の一連のプロセスにi-Constructionを導入し、三次元地形モデルを基盤とした取り組みを実施しています。

無題

①調査でi-Con

 ドローンによりレーザー測量を行い、崩壊した斜面の形状を把握したとのこと。複雑な形状、被害状況を短時間で把握できるため、今やドローン技術は災害復旧には必須ではないでしょうか。天下井氏曰く、ここ数年間でも最も進化したのが、ドローン技術とのこと。ここ最近では2021年7月に発生した熱海の土砂災害でも、発生後すぐに国交省TEC-FORCEによってドローンによる空撮が行われていましたね!

②設計でi-Con

 ドローンによる3次元データの取得により、設計も3次元で行っているとのことです。調査で水みちが詳細にわかったことにより、土留め盛土の設計ではそれを考慮した排水工の位置の設定ができたとのこと。
 また、次に述べますが、施工は無人化のため、無人化重機のサイズや性能などを考慮し、設計を進めています。

③施工でi-Con

 ここがi-construtionの真骨頂!無人化重機による施工です。最盛期には最大14台の無人化重機が活躍していたそう。
 準備段階として、まず整備すべきは通信環境、ネットワークです。施工箇所から1km離れた「超遠隔操作室」から現場の無人化重機を操作するわけですが、なるべく操作性を重視するため、操作室と現場との通信をいかに安定的に高速度で行うかを工夫されています。重機とは無線LANによる通信、基地局同士は光ファイバーやLANケーブルにより接続していました。5Gネットワークが広がれば、現地へのケーブルの敷設など完全になくなるので、5Gの普及が急がれますね!

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 施工に入ってみると、これまで”五感”で重機を操っていたオペさんは、無人化施工だからこその苦労を実感したようです。例えば重機の沈み込みや滑りと言った微妙な角度の変化等はカメラだけでは伝わってこない。そこで、重機の重心を示すマシンガイダンスにより重機の角度を定量的に計ることが可能となったようです。
 また、大型の重機の搬入が難しい箇所は、重機をバラシてヘリコプターで空輸し、現地で組み立てるなんてこともしたらしいです。これができるとできないでは工期を大きく左右するんでしょうね。いつまた崩壊が起こるかわからない”不安定な現場”では、重機の搬入路造成だけでも相当な時間がかかりそうです。

④管理でi-Con

 施工中は、天候の変化や対策工事の進捗に合わせて計6回ドローン撮影で点群取得を行っていました。”不安定な現場”ですから、新たな崩壊、地形の変化など、施工のリスク管理のために役に立ったようです。
 また、出来形管理も行えるため、設計図通りに施工できているかなど確実な施工、効率的な施工に繋がっていたようです。

 i-Conがなければ、時間やコストは莫大なものとなっていたのでしょう。土工工事初心者の筆者からすれば、従来のやり方なら、調査6か月、設計6か月、施工準備(重機搬入路造成)6カ月、施工6カ月…調査から完成まで2年!なんて考えてしまいますね。実際には、調査~緊急対策工事完了まで、8カ月しかかからなかったらしいです。恐ろしい工程です… 

勉強会を受けた感想

活発な討議が行われ、i-Constructionの関心の高さがうかがえました。これまでの業務ではi-Conに本格的に携わったことがなかったので、今回の勉強会では、調査→設計→施工→管理の流れを体系的に学べたことが良かったです。また、迅速な災害復旧の様子を目の当たりにし、建設業に携わることの誇らしさを感じました
緊急災害対応ということもあり、「調査~設計~施工~管理」の一連の流れでi-con事例を紹介いただき、知識の幅を広げることができたかなと感じています。
現在ICT施工に対応する設計を模索しながら行っている中で、
現場ではどんな図面データを扱ってどんな施工を行っているのか気になっていた。
現場でのi-constructionの活用について具体的な事例を聞くことができて勉強になりました。設計ではなかなか活かせていない部分が多いと日々感じているので、調査、設計からi-conを活用した事例は、とても参考になりました。i-conの流れに取り残されないように、勉強しなければいけないと思うことができました。
無人化施工は安全性向上の取組という認識でいましたが、現在はマシンコントロール若しくはガイダンスが標準搭載されているため、生産性向上にも寄与しているというお話をうかがえたのは良かったです。
また、「i-conのデメリットを探したが、メリットしかなかった」という言葉を聞き、i-conを使いこなせる人材になると、非常に有用なものになるのだと再認識できました。

生産性向上WGでは、これからも土木業界全般の生産性向上に寄与する取り組みを若手の視点で深堀りしていきたいと思います。(U)

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