_分からないんだ

そう呟いた彼の表情には確かに感情が宿っていたのに
あの時彼自身が感じていた痛みも
その痛みに締め付けられた私の心も
最初の夜、ワインを挟んで感じた人生の糸が絡まる感覚も

その全てをたった5文字に詰め込んで去っていた。

そんな過去なんて、言うつもりなかった。

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