わかおの日記16
21時を過ぎ、そろそろ日記でも書くかと気合を入れ、パソコンの前に向かったものの書くことがない。今日は実に平凡な一日であった。しかし、このような日こそ、日記を書くものとしての腕の見せ所なのだろう。平凡な日常をいかに面白く切り取るかが肝要である。
午前中はまたも「フランダースの犬」と格闘していた。自分の脳みそから出てきたストーリーではないので、文章をあてがうのが難しい。何とか午前中でノルマを終わらせることができたので良かった。犬の心情描写など、この作品以外で経験することが果たしてあるのだろうか。
午後は、学習塾に拘束されていた。進学校に通う女子高生に数学を教えるという大役を任された。前も彼女を担当したことはあったが、ぼくはそのたびに劣等感にさいなまれる。
進学校は高校1年から、フォーカスゴールドを周回しているのである。なんという力の差であろうか。高校1年生の頃のぼくといえば、三角関数の概念が理解できずに、わかりづらい授業をする数学教師を憎み倒していた、愚の骨頂系男子であったのに。
戦後にアメリカの軍備を目の当たりにし、先の敗戦が必然であったことを悟った元日本兵のような気持ちにぼくはなった。そのようなエリート集団、戦闘民族サイヤ人たちを相手に、ぼくは、基礎問題精講や青チャート、一対一対応の演習といった雑魚問題集を解き散らかしただけの経験値で挑んだのだ。なんという無謀。東大文系数学で10点しか取れなかったのも、必至であったのだ。
しかし、今のぼくの学力は、彼女をわずかではあるが上回っている。年の功というやつである。ぼくの記憶の「ごみ箱」に放って置かれていた、平面ベクトルの知識をかろうじて引っ張り出して、今日は難をのがれた。これが空間ベクトルとなれば、ぼくはもうお手上げであろう。受験勉強など空しいものである。数学から逃れたくて文学部に入ったのに、結局数学からは逃れられないのだ。なんという皮肉。なんという悲劇であろうか。
追伸 いうても青チャートは良い参考書なので、真に受けないでちょ。本当にクソなのは(略)