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わかおの日記53

カネコアヤノのライブに行った。だいぶ前にチケットを入手してから、ぼくの頭の片隅にはつねにカネコアヤノがいた。長い間憧れていた、ぼくのミューズにようやく会えるのだ。正直今日の授業の内容など、ほとんど覚えていない。気がついたら夕方になっていて、ぼくは新木場へと向かう有楽町線に揺られていた。

ライブ会場は、スタジオコーストという、キャパが2400くらいのライブハウスだった。正直ぼくは、ライブハウスに行くのがほぼ初めてだったので、初めてラーメン二郎に行ったときくらい緊張していたが、隣の友人がスーパードライを飲みながらへらへらしていたので、なんだか緊張しているのが馬鹿らしくなってリラックスすることができた。

ライブのタイトルは「カネコアヤノ×KID FRESINO」であった。タイトルからも分かるように、ラッパーのKID FRESINOとの対バンである。最初にフレシノが出てきた。映像でみるよりも随分痩せていて、野球部の1年生か修行僧といったような感じの風貌だった。しかしラップはすこぶる上手かった。ほとんどのトラックが複雑な変拍子であり、さらにリリックはほぼ英語である。そんな最高に難しいことをサラリとやってのけ、余裕さえあるような姿をみて、ラッパーってすごいなあ、と思った。わざわざ慶應にまで通っているのに彼のラップをまともに聴きとることの出来ない自分の不学を呪いながらも、気持ちよく音を楽しむことができた。

1時間ほどフレシノのライブが続き、舞台転換が終わると、ついにカネコアヤノが出てきた、あの厳ついバンドメンバーを従えて。その瞬間ぼくは感動のあまり卒倒しそうになったが、何とかこらえてその姿を目に焼き付けた。見た目だけでも、きれいなひとだなあ、と思ったけれど、歌声を聴くと、きれいなひとだなあ、どころではなかった。本当に素晴らしかった。今までのレコーディングされた彼女の歌とは違って、ライブでの彼女の歌声は、その小さな体からは想像もつかないほど大きかった。しかし歌声自体は、いままで聴いていたのよりも可愛らしい印象を受けた。

それ以降のことはあまり覚えていないし、全てを書いていたら徹夜しかねないので割愛する。とにかく素晴らしいライブだった。カネコアヤノはライブ中もほとんど喋らないのだけれど、去り際に「じゃあね」とだけ言って去っていったのが最高にかわいかった。

ほんとうにいいライブだったのに、終わったあと、なんだか少し悔しいような気持ちになった。不思議なものである。多分それは、ぼくがライブを見ている間にドラフト会議が開催されていたことと無関係ではないだろう。結局自分が何者でもないことへの焦りが根底にあるのである。

絶対に将来、どんな形であれ、カネコアヤノに会えるようなビッグな男になってやろうと思った。おれはやってやるぞ。

追伸 ライオンズのドラフトは大成功でしたね



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