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永野だけが本当のことを言っていると思う。

誰も傷つけない社会を目指すという大義名分のもとに言論統制が進む現代日本において、もはや芸人やタレントが嘘偽りのない本音をメディアで語ることはほぼ不可能になってしまったような気がする。変なことを言うとすぐ女子にチクられる小学校みたいな環境がぼくたちを取り巻いている。

そんな現状を憂いながら、味のしなくなったガムのようなラジオを聴き流して毎日を過ごしていたのだが、救世主が現れた。

この男である。遡ること6年前に、腰を振りながら髪をかき上げて「ラッセンが好き〜!!」と絶叫するネタでブレイクしたピン芸人、永野である。

「人それぞれ」とか「どれが正しいとかはないんだけど」といった枕言葉をつけなければ、自分の考えを主張することもできなくなったこんな時代に、永野だけは声高に「これが正しい」と言い切る。

賞レースに励むもののイマイチ結果のでない若手芸人を「ストイックなブス」とぶった斬り、テレビマンたちには「誰も信用してない、舐めやがって」と言い放つ。「角刈りの親父ばっかりだと思ってた」「昔の巨人軍みたいな奴ばっかりだと思ってた」とテレビマンに対するイメージを形容するワードセンスも抜群である。

まだ放送倫理の網の目がゆるかった10年以上前に毒舌キャラで再ブレイクを果たし、今やすっかりMCが似合うようになった有吉弘行(48)がお散歩おじさん化しているのに対して、同世代の永野(47)は全く丸くならない。

2ヶ月限定でパーソナリティを務めている「デドコロ」というラジオ番組では、ブームになった途端サウナやキャンプにはまる阿漕な芸人たちやsupremeの帽子を被るディレクターを嘲笑い、「僕の普段の呼吸、僕の昨日あったこと、こんなバカなヤツいました。そうじゃないのよ!ラジオは!」と最近の自然体なパーソナリティ像を平気で否定する。なんて気持ちいいんだろうか、永野よ、もっと言ってくれ。

しかし永野は、単なるぼくたちの憎悪の代弁者では決してない。その程度の男ではない。「バイト先の飲み会のノリに付いていけない」という拗らせたリスナーからのメールには、「ぼくはバイト先の飲み会に呼ばれたことがない」と前置きをしながらも、「この人は他のおもしろい場でもこういうテンションになってしまうと思う」「俯瞰で物事を見てると楽しくない結果が待ってる」と、急に熱が冷めたような大人の意見を言ってみせるバランス感覚も備えている。それこそが大人の本音だろう。田中みな実や斎藤工といったメンツと親交が深いところをみると、決して性格が悪いわけではないのがわかる。

言いたいことも言えないこんな世の中を変えるためには、みんなで永野のラジオを聴くしかないんじゃないだろうか。このnoteですらも永野に言わせれば「多感な大学生のしょうもないブログ」かもしれないけれど。




 

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