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優しく手放して
好きな物だけに囲まれた部屋はどんなに気持ちが良いのだろう。
大切にしていたから、あの子にもらったから、とりあえず使えるから、便利だから、高かったから、ちょうど良かったから… あげていくときりがない。
言い訳のような言葉をなぞりながら、自分に聞いてみる。
「本当にいるの?」
小さな頃から住んでいるこの家には、思い出と呼ばれる物が沢山あるけれど、しまいこまれた思い出は、大掃除の時に顔を出してまた奥深くにしまわれるか、なんとなく捨ててしまうかのどちらかだ。
そんなことを何年も繰り返していた気がする。あの場所には、あの時の思い出がいる。。。そんなふうに辛い気持ちまで大切にしまっていた自分を懐かしく思う。
何が大切か、何を求めているのか、何に快不快を感じるのか、分からなくなったら、分かっているようで抱えすぎている気がしたら、大切にしていた物を一つ手放してみる。あんなに大切だと思っていたものが、あんなに必要だと思っていたものが、今の自分に似合っていなかったり、ただ自分を縛るだけのものになっていたり。
人も物も空間も、きっとそうなんだと思う。
でも無理をすることはない。無理に片付けてなにもなくなる部屋よりも、大事なものを大切にしていたら、整理されていたっていう部屋がいい。
柔軟に手放して、今の自分を大切にすれば、部屋だって心だって自然に整っていく。
目に優しい色を、心地の良い香りを、心が喜ぶものを自分のための空間を自分のために。
そう思いながら部屋をぼんやり眺めてみる。だいぶすっきりしたけれど、理想を求める自分を手放せない私がいることに気づく。
カラフルな招き猫を見つめる私を、小さなダルマが見ている。
なにを招きたいの?もう持っているのにね。叶っているんじゃない?もう片方の目を描いてあげたらいい。
そんな自分も認めてあげて笑ってあげるくらいがちょうど良い。
大丈夫だよ、私の部屋。部屋は心を映し出すから。
心地よい暮らしは自分の中にある。