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なぜ米軍は空母を持っていて、自衛隊は空母を持っていないのか 〜空母の性能と運用思想〜

現在、米海軍は11隻の空母を保有しています。そして現在も建造が進んでおり、2025年ほどには新たな空母ジョン・F・ケネディが就役し、空母ニミッツと交換される予定になっています。

さて米海軍がこれだけの空母を保有しているのに対して、日本の海上自衛隊は何隻の空母を保有しているでしょうか。答えは0隻です。一隻も保有していません。隣国の中国は「遼寧」「山東」の2隻、海軍国として有名だったイギリスもクイーン・エリザベス級航空母艦を2隻保有にとどまります。

アメリカがいかに異常な空母保有数なのか分かるでしょう。この空母保有数の違いはなぜ生まれたのでしょうか。そしてなぜ海上自衛隊は空母の保有数が0隻なのかについて解説していきます。まずは自衛隊の空母の話から

空母じゃないです強襲揚陸艦です

先程、世界の空母保有数について紹介しましたが、実は解釈によって個々の数は変わってくるのです。空母と大差が無いのに空母として扱われない艦船です。

それが強襲揚陸艦です。ウェルドックと呼ばれる揚陸艇を格納できるドックを備え、島などの揚陸に使われます。これらは甲板からヘリコプターの着艦が可能で、つまりヘリコプターの空母としての運用も可能なのですね。

そのためこれらの艦艇はヘリ空母と呼ばれ空母として扱われることも多いです。(解釈によっては、ヘリ空母はウェルドックを持たないヘリコプター運用を主とした艦艇とされることもある)

さらに艦艇によっては垂直離着陸機と呼ばれる滑走をしないで垂直方向に離着陸する航空機などを運用する事が可能です。

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日本では輸送艦という名称で運用されているようですが、完全に強襲揚陸艦です。

ヘリ空母じゃないですDDHです

上の項目を見てうっすら分かった人もいるでしょうが、日本は事実上ヘリ空母を保有しています。「おおすみ」はウェルドックがあるので、強襲揚陸艦なので空母ではないとしても、日本にはガッツリ、ヘリ空母があるのでそれを紹介しますね。

まず紹介したいのは、日本にはDDH(ヘリコプター搭載護衛艦)と呼ばれる艦種があります。つまりヘリコプターを積める護衛艦ですね。下の写真は海上自衛隊より「しらね型護衛艦」です。すでに退役しましたが立派な護衛艦です。

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さすがにこれをヘリ空母と言うのには無理がありますね。では現在自衛隊のDDHでは最も最新の物に当たる「いずも型護衛艦」一番艦「いずも」を見てみましょう。

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これはDDHと呼ぶには、あまりに武装が少なく、立派すぎる全通飛行甲板を持っていますね。実際、海外メディアは殆どの場合は「いずも」をヘリ空母と呼んでいます。ひゅうが型といずも型を見比べて分かる通り、とても同じ艦種には見えません。完全にDDH(ヘリコプター搭載護衛艦)ではなくCVH(ヘリ空母)ですね。

これと似たようなDDHの皮をかぶったCVHを自衛隊は「ひゅうが型」と「いずも型合計4隻を保有しています。自衛隊は完全な戦闘機は保有していないもののヘリコプター空母は保有しているんですね。

さらにこれらの艦艇は垂直離着陸機を搭載する事が可能だと言われて言います。つまり事実上、空母としての運用が可能なんですね。さらに「いずも型護衛艦」に関しては、現在艦首を改装して短距離離陸/垂直着陸機(STOVL)であるF-35Bを搭載する予定です。完全に空母化していますね。

日本が空母を空母と呼ばないのには理由があります。それは本来の空母の運用方法に問題があります。それを知るために、まずはアメリカ海軍の空母運用方法について見ていきましょう。

アメリカの空母運用

アメリカ海軍がこれだけ空母を運用しているのは、アメリカ海軍が空母中心の艦隊を用いて運用されているからです。そして空母を中心に、それの護衛艦隊で作られる艦隊を「空母打撃群」と呼び、ヘリ空母や揚陸艦を中心に、強襲揚陸艇などで作られる艦隊を「遠征打撃群」と呼びます。

┣空母打撃群

空母打撃群が真価を発揮するのは、「制空」と「陸上攻撃」の2つです。
イージス艦による空域の警戒と、対空ミサイルによる防御網、そして空母のもつ艦上戦闘機によって広い範囲で空域を支配することができます。

そして陸上攻撃についてです。空母に搭載されている攻撃機は対地攻撃において強い力を発揮します。制空と制圧を同時にこなしながら、護衛艦隊からトマホークなどの巡航ミサイルで対地攻撃も行うなど、強い火力を発揮します。

┗遠征打撃群

空母に準ずる旗艦を持つ遠征打撃群では、最低限の制空能力と対地攻撃能力に援護されながら、強襲上陸が行なえます。また相手の航空能力が限られる小国や組織との戦闘では、心強い制空能力と対地攻撃能力ともなりえます。(フォークランド紛争など)

なぜ自衛隊は空母を空母と呼べないのか

これらのように空母とそれに準ずる艦船は、対地攻撃や強襲上陸などで強い力を発揮します。つまりは空母の能力は敵国への攻撃能力へと特化していると言っても過言ではありません。

日本は憲法9条など軍事面において様々な成約を受けます。その中で敵地への攻撃という運用思想を持つ空母を保有することが難しいのです。

また第二次世界大戦中に、日本は多くの空母を保有していました。真珠湾攻撃など空母が活躍する事が多く、空母に対して、第二次世界大戦のイメージを持つ事も多くありません。

そのように空母に負のイメージがあり、日本の自衛隊は事実上の空母を、空母と言わないのです。ですが、空母の制空能力は日本の広い海域を守る上でとても大きな助けとなるでしょう。また強襲揚陸などは敵国への進行の他、自国の領土の奪還においても重要な作戦となります。

空母の導入には様々な論争が巻き起こってますが、私は空母によって日本が戦争の道に進むとは考えていません。それよりも私達の日本国を守る大きな盾となると思っています。

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