詩/雑踏で見つけた日陰の下で
「雑踏で見つけた日陰の下で」
雑踏で見つけた日陰の下で
少し低い段差に腰を下ろした
喉が渇いたなと呟いたら
ピンチに現れるヒーローみたいに
自販機が姿を現した
Tシャツで風を送りながら
ポッケで握った手を出した
はぐれたコインが
足もとで螺旋に踊った
響きを増すなぞる音に
恐れを感じ手を伏せた
ふっと雑踏が消えた
ぼやけた額縁の中に
手を振り上げた母が見えた
わっと蝉が鳴いて
現実が戻った
少し曇った眼鏡を
Tシャツで拭った
螺旋に踊るその先を
最後まで見たくなって
何度か
コインを放ってみた
何度か
コインを放ってみた
はぐれた
コインを放ってみた
雑踏で見つけた日陰の下で