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人材活用策として独立支援制度を考える

特に飲食業界において、社員の独立支援制度(のれん分け制度)は企業と社員の双方にとって大きなメリットをもたらす重要な取り組みです。この制度の導入は、企業の成長と社員のキャリア形成に寄与し、業界全体の発展にも繋がります。

経営側の意向、店舗運営側の意向、独立希望の社員側の意向とそれぞれの立場と考えを理解して調整する必要があり、制度構築や研修の企画・運営など様々な業務が発生します。以下に、独立支援制度の重要性について詳しく説明します。

企業側のメリット

  1. 優秀な人材の確保と育成・・・ 独立支援制度を導入することで、企業は優秀な人材を確保しやすくなります。社員は自らの独立の夢を実現するための具体的な道筋が示されている企業に魅力を感じ、長期的なキャリア形成を目指して頑張ります。これにより、社員のモチベーションが高まり、企業全体のパフォーマンス向上に繋がります。

  2. ブランド力の向上 ・・・独立支援制度を通じて輩出された独立店舗が成功することで、元の企業のブランド力も高まります。成功事例が多ければ多いほど、その企業は業界内外から信頼される存在となり、新たな顧客やパートナーを引き寄せる力が強まります。

  3. 持続可能なビジネスモデルの確立 ・・・独立支援制度を導入することで、企業は持続可能なビジネスモデルを構築することができます。独立した社員が新たな店舗を開業することで、企業は直接的な運営コストを抑えつつ、フランチャイズフィーやコンサルティングフィーといった形で収益を得ることができます。


社員側のメリット

  1. キャリアアップの明確な道筋 ・・・独立支援制度は、社員に対してキャリアアップの明確な道筋を提供します。独立に向けた具体的な支援があることで、社員は自分の目標に向かって着実に進むことができ、自己成長を実感できます。

  2. リスクの低減と安心感の提供 ・・・独立支援制度を通じて企業からの支援を受けることで、社員は独立に伴うリスクを大幅に軽減することができます。資金面のサポートや経営ノウハウの提供、マーケティング支援などがあるため、独立後も安定した経営が期待できます。

  3. ネットワークの活用 ・・・独立支援制度により、社員は企業のネットワークを活用することができます。これにより、取引先や顧客との関係構築がスムーズになり、ビジネスの立ち上げや運営が円滑に進むことが期待されます。


独立支援制度を成功させるためのポイント

ここからは、独立支援制度を成功させるためのポイントをいくつか紹介します。なお、すでに直営店やフランチャイズ展開などで、店舗運営のノウハウが定まっている前提になります。そもそものフランチャイズ展開やマニュアル化については、また別の機会に取り上げたいと思います。

1.独立時の条件と資金調達の支援

まず最初に考えるべきは、独立して加盟する際の条件についてです。フランチャイズ展開をしていれば、加盟金やロイヤリティなどの条件が決まっていると思いますが、独立支援制度で加盟する社員の場合は、加盟金や初期投資分の資金を用意することは難しいでしょう。また、独立支援制度のメリットとしても何らかの優遇処置はしたほうがよいと思います。

また、直営店をサブリースする方法もあります。社員にとっては、過去のデータから売上や利益の予測ができる、少ない自己資金でも独立できるといったメリットがあります。
 
あとは、社員が日本政策金融公庫や金融機関から融資を受けることをサポートするということもあります。大半の社員は事業用の融資を受ける経験はないと思うので、サポートがあるだけでも独立支援制度のメリットを感じるでしょう。

2.独立までの条件と研修プログラム
 
前項では独立時の条件について説明しましたが、独立までの条件の設定も重要です。例えば、

・独立支援制度に応募できる条件
応募は全ての社員ができるのか、店長経験者のみか、独立支援制度の利用を前提として社員を採用するか、などを検討する必要があります。

・制度に応募したあと、実際に独立できる条件
一定の店長経験が必要、店長になったうえで定められた業績目標を超えることが必要といった運営能力の他に、一定の自己資金を用意する、希望出店地域と本部の出店検討地域が一致する、といった条件も必要となります。

また、独立に向けての研修プログラムも重要です。店舗スタッフとして、あるいは通常の社員研修では対象外となる内容についても最低限の知識が必要となります。例えば、経営者としての心構え、マーケティング、広告宣伝・販売促進、税務や融資、財務会計、物件開発、メニュー開発などの知識が必要なので、社内外の専門人材と協力してプログラムを企画・実施する必要があります。
 
3.独立後のサポート

独立後も継続的なサポートを提供する体制を整えます。定期的な訪問やコンサルティングを通じて、経営の課題解決や改善策の提案を行います。フランチャイズ展開をしていればSV(スーパーバイザー)が定期的に臨店指導をする体制を取っていると思いますが、独立支援制度の店舗の場合は、店舗運営だけでなく経営面などのサポートも必要となるでしょう。成功している場合でも、別事業を始めてそちらがうまくいっていない、というのはよくあるケースです。
 
フランチャイズ展開では、オーナーが集まる交流会や勉強会などを企画するケースもあります。うまくいっている施策を共有する、コンテストを開いて競争させるなど、上手く活用している本部もありますが、オーナー同士の交流をさせたくないという本部もあります。ただ。独立支援制度の場合は、独立社員への本部の理念や方向性の共有やモチベーションアップにもつながるので、このような交流会や勉強を開催したほうがいいでしょう。
 

以上が独立支援制度の大まかなポイントとなります。ちなみに、上記の要素をふくめて、独立支援制度が機能している本部の例として、カレーのCoCo壱番屋を紹介します。CoCo壱番屋では独立支援制度のことをブルームシステムといい、社員として平均して5年程度働いて独立となります。独立までのステップが細かく決められており、オーナーになれるのは1割未満とも言われております。それだけ厳しいシステムですが、オーナーになった人の成功確率は高く、複数店舗経営者も多いです。

今回の内容は以上となります。このように多岐に渡り検討事項がありますが、それだけに経営企画の出番も多いと思います。私も会社員時代に、独立支援制度構築に関わり、研修の企画や登壇もしておりました。ぜひ自社で独立支援制度を立ち上げる場合は、経営企画の担当に頼んでみてください。もし、経営企画の担当者がいない、いるけど得意分野ではないということであれば、ご相談いただければと思います。


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