和歌への情熱で道を拓く ~アルバイトでの成長と和歌指導の可能性~
数え三十七歳で『源氏物語』藤壺のように死んだり、紫の上のように寝付いてしまったりするわけにはいかない。
和歌が私に求めている、その全貌すら見えないこの世での大仕事について、誰ひとり代わってなどくれない。仮に誰かに「代わるよ」と言われたとて、代わることはできないのだ。
――本厄年に引いた夏風邪をきっかけに自覚を増し、好きだったアルバイトを週2勤務に減らすことにした梶間和歌ですが、
何かを手放すとその空白に必ず、よりふさわしいものがやってくるもので。
ここまでの経緯を読んでから続きもお楽しみください。
1記事目:和歌への情熱で道を拓く ~隠岐後鳥羽院大賞和歌部門への応募経緯~
2記事目:和歌への情熱で道を拓く ~和歌大賞への挑戦2年目の転機~
和歌への情熱で道を拓く ~アルバイトでの成長と和歌指導の可能性~
和歌指導を諦めた話
和歌のためにアルバイトを減らすと決めてすぐに声を掛けてくださったのは、盟友、吉田裕子さん。
彼女については一言で「こういう人」と説明するのが難しい……。
学生時代、後輩にもらった「この人、絶対一日24時間以上ある」という梶間評をそのまま差し上げたい、何をどう工夫すればあれだけ多岐にわたるお仕事が成し遂げられるのか、大変興味深い方なのですが。
裕子さんが吉祥寺に、私が中野に住んでいたころ、吉祥寺の公共施設で彼女の始めた「吉祥寺 古典を読む会」の第1回に私が参加して以来、もう10年以上になるお付き合いです。ウェブ検索で知ったもので、誰かの紹介ですらない、偶然オブ偶然スタートでした。
なお、その会は「三鷹古典サロン 裕泉堂」オープン以降、「三鷹 古典を読む会」と名前を変えて継続されています。尊敬しかない。
「アルバイトを減らして時間が出来るなら、裕泉堂で歌会をしましょうよ」
この有難くうれしいお申し出に、二つ返事で快諾……することにはためらいがありました。
裕子さんとならぜひやりたい。やりたいけれど、私には
趣味で楽しくやってみた~いというノリの方をド詰めして泣かせてしまうおそれ
があったのです。和歌に対してガチであるせいで。
というか、泣かせたことはさすがにないものの、キレられた前科はある。
「ガチでない勢がわざわざお金を払って自分の歌を良くしたいと添削依頼してくる」という想定がなかった(依頼者は全員ガチ勢だと思い込んでいた)ため、できていないことを指摘した結果なぜキレられたのかわからずポカーンという感じ。
とはいえ不快ではありましたから、「そういう人の相手をする可能性のある仕事より、すべきことが、私にはある」と添削の仕事そのものをシャットアウトするようになっていたのでした(特定のルート経由での添削のみ続けていた)
誘われて講師を務めた「歌塾」でも、最終話まで講義を聴いてくださった方は4名だったね……。
私に伝わっていないだけで、PCの向こうで泣いたりムッとしたりした方は一定数いたことでしょう。
講座をやり切り、半永久的に販売できるコンテンツを作り上げた自信は付いたものの、
「教育には本当に向いていないみたい。余計なことは考えず、一生プレイヤーとして生きよう」というおもいを強める結果になりました。
しかし、そこは梶間和歌を熟知している裕子さん。
「高みをめざして和歌さんに添削してもらうコースと、気軽に歌を詠んで歌会を楽しむコースと、2パターン用意すればいいんじゃないかな。私もフォローするし」
ということで、2023年8月末、この対談が生まれたのでした。
(アーカイブ配信は9月2日付)
「短期間で後輩・新入社員に慕われる先輩選手権」優勝イェイ
また、先述のアルバイト。
あちらでは、ただ創作のヒントを得ていただけでなく
そこに集うさまざまな人間を観察しその美醜を見極め己の血肉にしてゆく
という面もありました。
アルバイトなんて、本当にさまざまな動機で、さまざまな個性を持った人間が集うわけです。
生活のために仕方なくという人もいれば、私のように楽しみで続けている人もいる。大学生が長期休みのあいだだけという例も多い。
借りた工具を他人に貸すような若者には「彼がなくした場合、あなた責任取れるの? 」と注意することはします。人として。
しかし、「お前なんで仕事できないくせにヘラヘラ笑ってんだよ」みたいなのはおかしい。そこで働く動機はそれぞれでしょう。面接してOKしたのは上なのだから、文句があるなら上に言うべし。
私のように長く働いていても頭の回転の遅い、記憶力も悪い、運動神経など完全に切れている人間に対して「はぁ? こいつ何年やってんだよ」といった態度で当たり散らしてくる先輩方、
お手洗いで第三者のいない1対1の状況で当然のこととして挨拶をしても華麗に無視してゆく先輩方。
その他、ここに書くと可哀想になるレベルの中学生マインドの先輩が、両手で足りないほどいらっしゃいました。
だいたい全員仕事のできる方々でしたので、だいたい全員無事他社に引き抜かれ去って行ったのですが
(引き抜かれた先で嫌われすぎて辞めた先輩? そんな人いたっけなー? 記憶にございませーん)
こちらとしても
「聞かなくても自分で判断できるよう、努力しよう」
と反省することこそすれ、そのような姿勢で私やほかの後輩たちに臨んでいた彼ら彼女らを「それが人としてあるべき姿である」と思ったことは一度たりともありません。
目の前のこいつは現状できていないのだ。宥めてもすかしても、その事実は変わらない。
それに対して「なぜできないのか、わからないのか」と当たるのは、自己都合でしかないうえに、効果的でもない。「なるほど、わからないのね。ではこう指導/指示しよう」とするしかないじゃないか。
そんな合理性も理解せず、「この私の都合が世界の中心であるべきである、そうでないのはこいつが悪い、世界がおかしい」という前提で振る舞うこいつら、いくら仕事ができたって仕事ができるだけのこと。尊敬の対象にはならないわ。
愛される努力を一切しないまま「ありのままの俺/私をどうして愛してくれないのか」とキレ散らかするメンヘラやストーカーと本質的に同じじゃないの。
そんな彼らを反面教師として、というか、彼らがいなくたってそうしたと思いますが、
私は、言うべきことは言うが、基本的には優しく親しみやすい先輩であることに努めてきました。
それでなくとも新人や新入社員にとり、先輩というのは畏敬の対象です。
へらへら媚びる必要は皆無ですが、【ふつう】よりちょっと余計に笑顔や親切を心掛けるぐらいでちょうどいい、私はそう考えます。
その結果、まあこれは堂々と自慢させていただきますが、
2回しか会ったことのない後輩にガチ恋愛相談されたり、
私を抜いてランクの上がった後輩に「初めて現場に出た時、梶間さんに声を掛けてもらえて、本当に気持ちが救われたんです」と言われたり、
就職してバイトを辞めた子と再会した時に「ご自分の道を見つけて、そんな働き方をしているんですか? もっと教えてください」と憧れの目で見られたり、
と、自分の子どもであってもおかしくない年齢の後輩たちに懐かれ、まあ、控えめに言っても「短期間で後輩・新入社員に慕われる先輩選手権」メダル獲得確定でしょう、という状況を現出させています。
なお最近草の生え散らかしたやり取りはこちら。
和歌ガチ勢、黒歴史を乗り越えて
そうして気づくのです。
……そうだ。和歌、短歌に臨む姿勢だって人それぞれ。
というか、私のようなガチ勢をこの分野においてほかに見つけるほうが困難でしょう。
「ガチ勢なんてそうそういない」これが大前提。
いろんなきっかけ、いろんな動機で和歌や短歌を詠み、参加する人がいる。そして、ガチ勢でなくても添削を希望する人はいる。
いまその人にできていることを評価し、足りていないところを優しく指摘し、改善案を示す。
私がアルバイトでやってきたことを、和歌指導においてもすればよいのだった。
あの時「教育は二度としない」と決めたのに、それでももう一度声が掛かったというのも偶然ではない。
ほかでもない吉田裕子さんとならできるかもしれない。
私自身、「歌塾」時代やその前の添削時代と同じではない。
数年前にわからなかったこと、できなかったことも、バイト先のご立派な先輩方に鍛えられてきたいまの私にならきっと、できる。
こうして第1回「裕泉堂歌会」は2023年10月1日と決まり、募集開始しました!
……そう、第1回が10月の頭だったのです。
「和歌さんも、締め切りまでに3首投稿しておいてくださ~い」
あっ。
時間がなくて今年は無理と思っていた、10月末締め切り「隠岐後鳥羽院大賞」の「秋浦」の歌、この歌会に間に合わせれば詠めるかもしれない……!?
この続きは、また次の記事で。
和歌への情熱で道を拓く
1記事目:和歌への情熱で道を拓く ~隠岐後鳥羽院大賞和歌部門への応募経緯~
2記事目:和歌への情熱で道を拓く ~和歌大賞への挑戦2年目の転機~
3記事目:和歌への情熱で道を拓く ~アルバイトでの成長と和歌指導の可能性~【イマココ】
4記事目:和歌への情熱で道を拓く ~信念で詠み上げた和歌作品の行方~
5記事目:和歌への情熱で道を拓く ~大賞受賞、そして立ちはだかる壁~
6記事目:和歌への情熱で道を拓く ~元ホームレス、和歌にフルベットして~
7記事目:和歌への情熱で道を拓く ~友情と応援の表彰式チケット~
8記事目:和歌への情熱で道を拓く ~終わらぬ挑戦、広がる波紋~
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梶間和歌の出身地島根県とゆかりの深い隠岐後鳥羽院大賞和歌部門への応募経緯や、令和5年分の大会結果、そしてその後……noteのマガジンとして連載して参ります。
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梶間和歌がつつがなく和歌創作、勉強、発信を続けるため、余裕のあります方にお気持ちを分けていただけますと、
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特にこのたび令和5年の隠岐後鳥羽院大賞和歌部門で古事記編纂一三〇〇年記念大賞を受賞し、表彰式を含む大会のツアーに申し込みましたが、こちらのツアー代金(9万円弱)は生活費と別に工面することになります。
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このツアーの様子はこのマガジンで連載して参ります。どうぞお楽しみに。
今後とも、それぞれの領分において世界を美しくしてゆく営みを、楽しんで参りましょう。
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