感想&雑感:『社員が辞めない会社の作り方』 成田靖也.著
どうも!おはようございますからこんばんわ!まで
今回は、『社員が辞めない会社の作り方』の感想を題材にしてあれこれ書いてみたいと思います。
1.私がエンゲージメントに興味を持ったきっかけ
私がこれまでの職歴の中で最初に関わった生命保険業界は比較的現地採用営業社員の出入りが激しく、先日もハローワーク前で生命保険会社が採用活動をしていたという衝撃な事が話題となりました。勿論、結果を出せばなんぼのもんじゃいと言えばそれまでですが、だからといって組織が軋むのような状態では人が出ていくのは想定できます。
そんな時、たまたま本屋でこの本と出会いそこで初めてエンゲージメントという言葉と出会いました。エンゲージメントという言葉を簡単に表現すると連動という意味になり、組織の成長と人材の定着の連動として語られているようです。次の章からは本の感想と連動して思う事を書いていきます。
2.感想1:選択の意味と定着
世の中には選ばなければなんでも仕事があると言いますが、例えばAさんから見て0点の魅力の会社の仕事でも選ぼうと思うのでしょうか?。エン・ジャパンが運営しているエン転職のユーザーに対して行った退職理由のアンケートでは、全体のトップは給与が低かったとなっていて、やりがい・達成感を感じない、企業の将来性に疑問を感じたという順に続いています。(下図)
勿論万人にとって100%の企業は存在しませんので、それぞれの企業はそれぞれができる範囲からどうやって魅力的に感じてもらえるのかをやっていますが、それが採用課題に重きを置いて無理して魅力的に魅せるよりも定着課題にフォーカスを当てる方が効果的と本では定着に重きを置く方が良い理由を述べています。だからこそ、求人広告の謡い文句として定着率100%!や離職率0%!という表現を使っている会社が現段階においてどのフェーズの会社かによって要求している人材要件が違ってきて、そこへフィットすることが会社にとっても働く人にとってもwin-winの関係性になって定着へと繋がっていきます。
3.感想2:エンゲージメント→組織内での存在意義を与える
本の中では社員のエンゲージメントを高める手法を紹介していますが、紹介している手法に共通するエッセンスとして組織内における存在意義をどうやって与えるのか?という印象を持ちました。
一人一人にミッションを与え、成果を挙げる上での社内コミュニケーションを活性化させ、実際の仕事を経た上でフィードバックしてそれを成長につなげていき、目標設定と上司が期待していることを共有する。この一連のプロセスは、組織内における人材の存在意義が決して優劣をつけるものではなく、組織内における理念や価値観,考え方といった要素を理解してどうやって結果へと結びつけていくかという部分で、あなたは組織にとって必要なんですという存在意義を与える役割なのかな?という印象を持ちました。これは本書内ではブルームの著書『仕事とモティベーション』で提唱し、ポーターやローラーが発展させた「期待理論」やマサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱する「成功の循環」モデルを使って表現していました。
4.感想3:エンゲージメントの効果
実際にエンゲージメント施策をすることでどのような結果が表れたのか?という部分が本には書いてありました。下図は本書内でも引用されているアメリカのコンサルティング会社ギャラップが調査した結果です。エンゲージメントが高い上位25%の企業と下位25%の企業の差で、上位25%企業は下位25%企業と比べて生産性や収益性,顧客評価の点で上回る結果となり、一方で下位25%企業は上位25%と比べて欠勤や安全に関する事故が多くなっているとのことです。
数値化してロジカルに考えるのが難しい人には漫画のメジャーのように、個々人の能力にはばらつきはあるけど、そういう人達が一つの目標に向かって追いかけていくことでそれがポジティブな結果へと結びついていきその過程でエンゲージメントが高まっていく仕組みなんだと思いました。
前段で例えとして示した漫画のメジャーのように成長過程に物凄く感動する作品も、成長の前には仲間を集める(企業に置き換えると採用)ことが大切で本書ではエンゲージメントを高める事を目的としたエントリーマネジメントにも触れています。その中で、福利厚生も会社の理念や考え方を伝える手法として活かすことができるという側面は私にとっては新鮮な考え方でした。
例えば、本書の著者が代表取締役をしている会社にはこういう福利厚生があるようです。
(抜粋:Take Actionアワード<社内表彰制度>,Take Actionライブラリー<社内文庫で本が読める! 貸し出し制>,住宅補助制度<提携不動産業者の利用で仲介手数料50%OFF>)
見た目的にはそう書けば良いやん?と思うような制度も社員にとって愛着が湧きやすいネーミングなら説明する上で分かりやすい、そこには会社の理念や社風,方向性といった部分が込められているという事が伝わりやすくなる効果があると本書では記載されていて、私としては福利厚生が会社を伝えるツールとしての意味合いを理解することができました。
5.おわりに
本書では実際にエンゲージメントを高める事に挑戦した会社の実践例についても紹介されていて、読んでみて自社に合いそうなやり方をピックアップするのも一考なのかもしれません。
本書を読んでみて、定着という文脈におけるエンゲージメントの重要性は戦後や高度経済成長期のような経済が拡大していく局面において、頑張りが給料(お金)として還元される幻想がバブル崩壊やリーマンショックで崩壊した結果として、労働者個々人が給料だけに会社選びの価値観が留まらなくなったことで生まれたのだと私は思いました。