「接客」ではなく「接人」
22歳くらいの時、少し大人ぶりたくなってた時期で伊豆の少し良い旅館に泊まりに行きました。
その時、旅館の女将さんに入り口で挨拶され、「お荷物お預かりします。」と言われたんだけど、「いや、いいですよ。」と言って断った事を覚えています。
お客さんの荷物を持つって接客っていうかサービスなんだろうけど、自分よりも40歳くらい年上の小柄な女の人に僕の重たいリュック(リュックで良い旅館に行くダサさ汗)を持たせる事が仕事って、すごく違う気がして、なんかモヤモヤした事を覚えています。
旅館で女将に荷物を持ってもらう事に気遣いを感じて喜ぶ人もいるんだろうけど、それっておごってる気がする。傲慢までいかないけど、偉そうだと思う。
それ以来、例えば良いレストランに行く機会があっても椅子は自分の手で引くように心がけたり、荷物を預かってもらうような場所に行く際は財布しか持たずに出かけるようになりました。
そういう価値観のまま自分も接客を伴う仕事についた。
先日、お客さんにマヨネーズを出した際、新品で中のシールが剥がし忘れちゃってたんだけど、「あ、すいません!剥がします!!」と少し焦ってこちらが言うと「いや、大丈夫。これくらい出来ます。」と言ってお客さんが剥がしてくれました。
その時「マヨネーズの中のシール剥がし忘れたくらいで焦って謝る必要ってないのかも。」って思いました。
お金を頂いてるからその分のお返しは当然全力でしますけど、
どの部分に全力を注ぐかは、自分の哲学が決めるしかないんですね。
自分の哲学の中にある飲み屋の仕事は、ごく自然にありのままの自分でお客さんとフランクに話していく事。
嘘も言わないし、過度に話も合わせすぎないし、無理に持ち上げたり盛り上げたりもせず、ただありのままの自分のままお客さんを信用して、お客さんにも自分を信用してもらうっていうやり方しか自分には出来ません。
お客さんも僕も「人」。
そういう意味では対等だし、秩序がある。
接客という言葉が嫌いです。
僕がお客さんを相手に時間を費やしているのは「接客」ではなく「接人」。
仕事だからお客さんの話を聞いてるんじゃないんです。
聞きたいから聞いてるし、話したいから話しています。
それをもっと多くの人に理解してもらいたいと常々思っています。