明日は早起き、そして審判の時である
明日は5時に起きなくてはいけない。なぜなら、明日はぼくにとって「審判の日」だからだ。
明日の結果次第で、今後のぼくの人生の展望は大きく変わるだろう。
審判者はぼくのこれまでの行いや背負っている罪をひとつひとつ丁寧に数え上げ、その秤を「善人」もしくは「悪人」のいずれかに傾ける。審判者の下す決断は絶対の効力をもち、ひとたび善人と認められたものは未知の世界の門を潜ることを許され、悪人はみな地に落とされる。
もっと平たくいうと、明日は7月に控えたロシア東欧旅行にさきがけ、大阪にあるロシア領事館まで足を運んで、「ビザの申請」をしなくてはいけない。
ぼくは明日のビザの申請のために結構な時間を費やした。Googleであらゆるサイトを調べあげ、複雑なページたちを掻き分けながら、最新の情報を参考にし、ロシア語で書かれた書類や「バウチャー」と呼ばれる謎の書類の発行、やたら指定の細かい証明写真と格闘した。
ただでさえ税金の書類や請求書といったペーパーワークが苦手だというのに、前日にすべての資料を揃えて遠隔地で書類審査をおこなうなんて考えただけでも頭痛がしてくる。
(しかも、以前に一度書類の記載ミスでビザの申請を棄却されたことがあるので、今回はかなりナイーブになっている)
しかし、”漢”にはやらねばならない時がある。
”漢”には、代行業者を使って余計な日数の6000円以上の手間賃をかけるくらいなら、己の力で道を切り開かなくてはならない時がある。”漢”にとって6000円は大金也。床屋代およそ2ヶ月分、押忍。
なので、明日は5時半ごろに起きて、7時に出る高速バスに乗って朝から大阪へと向かわなくてはならない。こんな時間まで起きている場合ではないのだ。起きているのは自分なのだけど。
それに今日、ビザの申請の最終確認として持ち物や工程を確認していたところ。ロシアのビザの申請は大使館が開く9時半より前から長蛇の列を作ることもあるらしく、しかも一日の受付人数も決まっていため。早めに行かないことには当日の受付に漏れてしまうことがあるらしい。
つまりは9時半前に領事館の前に着いていれば、安心なわけだ。ちなみに、ぼくが乗るバスが大阪に到着する時間は10時半。
うん〜〜〜〜〜、まぁいけるんじゃないかな?明日は平日だし、うん。あと明日は仏滅だから。そんなに人来ないっしょ。
すでにこの時点で大きな不確定要素を抱えるという始末だが、ぼくはうろたえないし、慌てない。あわてないあわてない、一休み一休み。
ぼくはただそっと、心静かに、琵琶湖の湖面のように穏やかな心を保ちつつ、震える指で大阪に住む友達に「有事の際は一泊止めてくれ」と懇願した。これが5分前の話。
やれるだけのことはやった。手も打った。これで今夜は心地よく眠れることだろう。
まぁ、ぜんぜん不安だけど。