腰痛退散
2018年1月26日の夕方から突然、激しい腰痛に見舞われました。ギックリ腰とかではありません。
一応心あたりのある物理的事象は、数日間長距離を運転したこと。まあ、車の運転は腰にきますからね。
さて発症した翌日、完全に雪景色の中を、山口でうまれた歌「卒業」のロケのために良城小学校に出向いたわけですが、体調が悪い上に腰痛がひどかったので、迎えに来たタクシーに乗り込むのさえ顔が少し歪みました。
後部座席で少し身体を右に寄せ背筋を伸ばしてみても、その時はなんとかなったものの、現地に到着したあとシートから立ちあがれません。骨盤の上が痛くて伸びないのです。
それでもなんとか、腰を曲げたまま車外に出ても、今度は歩けない。
おそらく60年近く生きてきて、今回が最大の腰痛でした。
撮影終了後、主治医である「えさきクリニック」に寄り、ひとしきり せんせとおしゃべりしてから、血圧、コレステロール、咳、なんかの薬をもらい、時間も13時ごろだったので、山口であるにもかかわらず珍しく中華ランチを食いましたが、食後レシートを手にしてもなかなか椅子から立てません。
それでも、うめき声を出しながらなんとか立ち上がりましたがその後痛みはピークに……駐車場の車までからくり人形のようにしてようやく辿りつきました。
「おかしい……これは絶対におかしい……物理的に考えて、ここまでの痛みはありえない」
私はこの時、TMS (緊張性筋炎症候群) であることを確信しました。
これは、まあ手早く言うと……外科的な状態ではなく、心が生み出した痛みであるということです。
近年では、心はなぜか腰痛を選び、またその心の原因の多くは「怒り」であるということがかなりわかってきています。これは昔のストレスから発症する胃潰瘍と同じです。
昔の胃潰瘍は、それがストレスから生じるということが世の中にすっかり浸透してしまったがために、次の手として腰痛や偏頭痛に宗旨替えをしたようです。
日本の整形外科医はまだそれに誰も気づいていないので、なんでも椎間板ヘルニアにしてしまいますが……。
さてそうなれば敵は本能寺ではなく我が心にあり。つまり自分の脳の無意識な官僚部分の反逆だということです。敵の位置を正確につかめば、俄然、ヤル気が出るのも人情です。
ここからは、自分自身の脳……つまり無意識をつかさどる脳に勤務する自律神経を牛耳る官僚との格闘が始まりました。
「私が無意識におさえこんでる怒りやストレスとは、いったい何なのか?」
無意識がここまで強烈なアピールをするのは希なことですから、私はスタッフに宣言しました。
「よし、今から必ず原因をみつけ、TMSを克服するぞ!」と。
1時間後、丁寧に時系列を検証していて、あることに気付きました。腰痛が発症した頃に起きた事実です。
それは数日前のこと……私の体調不良を気遣った知人が、わざわざ「整体」を予約してくれたのでした。
私自身「整体」は嫌いではないので、その親切に感謝はすれども怒りなどあるわけがありません。
でも、タイミングはドンピシャ。どう考えてもこれが怪しい。
私はベッドに横たわりながら自分の脳に、静かに、しかしドスが効いた迫力をにじませながら語りかけます。
「もしかしたら、整体に行くのが嫌なんか?」
その時、実に摩訶不思議な現象が起こりました。
私の背骨の右側……骨盤のキワから上の4カ所でエアークッション……つまり「プチプチ」を、ひとつずつつぶすような……感覚としてはお風呂で出たオナラが小さい気泡となって浮きあがるような……そんな実感がしたのです。
その時はさほど重要視しませんでしたが、後から思えばそれこそ敵……と言っても正確には部下なのですが……が図星を突かれて、あせって後ずさりした瞬間だったのでしょう。
そのあと、
「オマエら……つまり私の深層心理……もしかしたら整体に行きたくないんか? なんでやねん? 整体に行ったら気持ちええやないか? からだが健康に近づけたら、嬉しいやないか……」
そこまで語りかけ、
「あっ! もしかしたらオマエら、ワシが健康状態に戻るのを嫌がってるんとちゃうか? それが都合悪いんか? 元気になったらまたバリバリ働いて、歯止めがきかんくらいに暴走する自分の癖を知ってるから、適度に病んでる……ずっと不健康で、しんどいしんどいゆうて、誰かまわりのもん(者)にかまってもらえる自分を良しとしてるんとちゃうか? どうやねん? 正直に答えてみい、怒らへんから、どうやねん、深層心理くん」
そこまで言うと、スウ〜っと腰から痛みがひいていくではありませんか。
「情けない……ホンマに情けない……オマエなあ、ワシみたいなくせ者の深層心理やから、もっと複雑やと……ワシは勝手にそう思い込んでたけど、単純過ぎるがな……オマエそれなら、単なるかまってちゃんのアホやないかい?」
それでとりあえず今回の激しい腰痛はおさまりました。
そしてそのあと強制的に、脳みそを首の上にのせたまんま整体に連れていきました。
ほんまに、仕事ができない脳みそは、手がかかります。