中靍 水雲

エッセイ置き場|単著『呪いのゲーム ぷうけえ!』(カドカワ読書タイム)|第7回小学館ジ…

中靍 水雲

エッセイ置き場|単著『呪いのゲーム ぷうけえ!』(カドカワ読書タイム)|第7回小学館ジュニア文庫小説賞金賞|𝕏 @onoda_ema @gyyyyoza

最近の記事

すきな作品のポストでややバズりしたら「見たくない」と空リプされていた話

 考えをむりやりにまとめた感じがモロバレの内容だが、これを書いて、今回のことを自分なりに咀嚼できたような気分。  理解しているし、そうでなくてはならないのに、自分だけが悲観している。  そんなnote。 バズらせていただいたものの後悔することになってしまったわけ 見なくていいものを見てしまい、モヤモヤしてしまったので、吐き出すことにした。  人生において、自分のなかで大切な作品は、両手で数えられるほどだった。  思春期に自分の人格を形成してくれた作品は、ひな鳥が生まれて

    • 思春期からの浮上

       天井からぶら下がっていた、亀甲縛りのマネキンを見て、今日という日は自分の人生一番の黒歴史になると、確信してしまった。  高校の先輩に誘われ、自分は夜の町へとくり出した。  成人してもまだまだ思春期も中二病も抜けきっていなかった自分は、夜の町にくり出すことに異常な高揚感を感じていた。  夜の町は、未熟な自分の心をかき乱してくれる。しかも隣にいるのは、樗木(仮名)先輩だ。樗木先輩は、自分に知らない世界を見せてくれる、憧れの先輩だった。高校に入ってから、おしゃれも、音楽の趣味

      • きれいだね、ごみ捨て場からみる星は

        姿見をミュートしている 新しいアカウントには新しいわたし せますぎる電車につまった湿り気がオゾン層とか破壊している 指先を金平糖のようにして打ったことばで傷つけるひと 流れてるカメラロールはきれいしか切り取られずにどこに流れる 知らないが増えていくたびこの世から突き放されて栞を燃やす 雨降りのいすは温度を削ぎ落としわたしをわたじゃないといいはる 甘すぎるフラペチーノのストローは吸っても吸っても酸素が来ない 昨日から生まれ変わったはずなのにすれ違うひとがわたしを見

        • さみしい夜のたべものたち

          あんぐりとひらいた口にクリームをつめてくだけの九時間バイト どの味のおにぎりだって同じだしわたしの替えはたくさんいるし かき消してしまいたいこの日常に修正のための飲むヨーグルト ていねいにしなくてもいい焼き鳥も串に刺さったままでもいいよ いつだってさみしさは穴 ドーナツがこの世でもっともさみしい真円 ゆきずりのファミリーマートの肉まんが赤ちゃんの肌にそっくりで泣く 背伸びした弁当くらい作ろうとしたのに力及ばず 無念 なぜ蝶は飛ぶのでしょうか 揚げ餃子の羽になりた

        すきな作品のポストでややバズりしたら「見たくない」と空リプされていた話

          風になる

           松田くんの家は、たまに動画のサブスクで見かける昭和のアニメの家に似ている。お城で見るような瓦の屋根、そしてガラガラと音をたてながら開ける玄関。昔ながらの家って感じだ。  手入れされた庭には、色んな花が咲いている。ぼくは、花の名前なんて知らないけれど、そのなかでも庭にどっしりと生えた木の名前だけは知っている。松田くんに教えてもらったから、わかる。  あれは、柿の木。松田くんが大好きな、柿の木だ。今はまだ二月だから、何にも生えていないけれど、三月ごろから芽をつけて、葉が生い茂っ

          ひとり旅だったら、どこまでもいけたのに

          相手と自分の違いを受け入れるためには、自分を殺すしかない 自分が損をすることを、とても恐れている人がいる。その人のなかでは自分の理解できないことは、『損』でしかないと思ってしまうからだ。理解できないから、『得』であるわけがない。これから自分は『損』をするのだという恐怖から、受け入れられそうなものも、受け入れられなくなってしまう。もしかしたら『得』をしたかもしれないものも、結局は無意識に突っぱねてしまうので、『損』をする。もしかしたら、成長できたかもしれないのに。  なぜ、そ

          ひとり旅だったら、どこまでもいけたのに

          感情があったからむずかしくなってしまったんじゃないか

          会話の上澄み「まあ、なんかもやもやするよね」  これは、日常会話のうえでの上手な逃げのひとことだった。会話のなかで生まれたあらゆることへの違和感を深く追求しないよう、やわらかく流すよう、上澄みだけ掬って捨てる。そんな意味あいをどうにか笑ってごまかすための、自分なりのふわっとした、逃げ道だった。 いい人でありたいと思う 自分はいつも、何かから逃げている。自分も他人も、つねに都合のよいかたちでいてほしいと思っていた。何も傷つかないように、関わりあったときと同じかたちであるよう

          感情があったからむずかしくなってしまったんじゃないか

          人それぞれだと思える善性とは

          最近の話題の着地が決まってしまっている 「人それぞれ」だと、最近つくづく思う。そういう言葉で片づけなければ、いや、むりやり納得しなければならないことが増えた。  「人それぞれ」には、「この問題についてお互いに納得はしていないけれど、それでもその問題について突き詰めていくよりも、あえてこちらが寛容になり、昨今の多様性を認め、なんだかいい感じに話を着地させておこう」という一種の「話題をきれいにまとめる責任からの逃げ」や「みせかけの多様性への享受」をふくんでいる。なんとも悩ましい

          人それぞれだと思える善性とは

          失敗してもいいと思えるようになるまで

          いつまでたっても成長しない  気持ちがざわざわとしていて、他に書きたいことがあったのだけれど、今はこの「ざわざわ」を吐き出したくなってしまった。  当日までは、このざわざわが続くのだろう。 エッセイが苦手だった  エッセイは、見聞きして不思議な気持ちになったものをエネルギーにして書きたいな、と思っていたけれど、今回のnoteでは、あまり「エネルギー」みたいなものはなくて、ただ鬱屈とした「ざわざわ」を吐き出すだけになるのかもしれない。  自分の気持ちをコントロールするつもり

          失敗してもいいと思えるようになるまで

          被爆ピアノに集まるひとびと

          被爆ピアノとは 被爆ピアノ。  その名の通り、1945年8月に日本への原子爆弾投下によって被爆したピアノのことだ。 被爆ピアノのコンサート 先日、知り合いに「被爆ピアノの演奏にのせて、朗読をするコンサートがあるのだけれど、よかったら参加してみない?」と誘われた。  被爆ピアノの音色を聴く機会なんて、なかなかないことだし、その現物を見られることにも興味があった。  しかし、残念ながら他の予定もあったので、今回はお断りすることになった。  その被爆ピアノは、とても素晴らしい調

          被爆ピアノに集まるひとびと

          わたしが死んだら海にまいてほしい

          遺骨ダイヤモンドとは?  先日、知り合いのかたとお茶をしたときに、『遺骨ダイヤモンド』の話になりました。  遺骨ダイヤモンド、メモリアル・ダイヤモンドなど、さまざまないい方があるようで。  簡単にいうと、故人のご遺骨で、人口宝石を作るというもの。  そうすれば、死後も肌身離さずいっしょにいられる、というサービスとのこと。 メモリアルダイヤモンドを作っている、代表的なスイスの会社『アルゴダンザ』 アルゴダンザのサイトより抜粋 死生観のちがい お茶をしたかたを仮に、Aさ

          わたしが死んだら海にまいてほしい

          本とともに育つ

          はじめに 2019年4月19日 名古屋市青少年文化センター アートピアホールで行われた松岡享子先生の講演会に参加しました。  そのときに先生が語っておられたことを、自分なりに心に書きとめ、文章に起こしたものです。 子ども時代 先日、奈良のお話会の創設者である、石橋千代子さんの追悼に行ってきました。  石橋さんの息子さんから、彼女が婦人之友の読者だったと聞かされ、わたしはとても驚きました。生前は、聞かされていませんでしたから。羽仁もと子さんをとても尊敬しておられました。  

          本とともに育つ