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授業でのふりかえり指導・視点について

とある町で小学校教諭をしています。わいぬです。
今回は授業でのふりかえり(振り返り)について書きました。

ふりかえりを書く目的はいくつかあります。
私が考えていることとしては以下の4つのためです。

実感するため
つなげていくため
広げていくため
関わっていくため

さらに書き方の指導などは下記の目次の書き方のところにまとめてあります。

それでは本文です。


はじめに

「それでは最後に授業のふりかえりを書きましょう。」
授業の終わりに先生方が子供たちに指示をします。
そして、ノートを集めて授業が終わる。
授業の終わりに子供たちが学んだことなどをふりかえりとして書く場面があります。

ふりかえりをどのように書かせたらいいのか迷う。
まとめをそのまま書いてしまう子がいる。
「楽しかった」しか書かない子がいる。

そんな話もよくきかれます。

そもそも、ふりかえりをなぜ書くのでしょうか。

人材育成分野においては以下のような意味のようです。
「自分自身の仕事や業務から一度離れてみて、仕事の流れや考え方・行動などを客観的に内省すること」とあります。
さらに内省するという言葉について調べてみました。

内省する 自分自身と向き合い、自分の考えや言動を振り返り、気づくこと

つまり、ふりかえりを書くことで子供たちが自分の学びや学び方について見つめ直すことが目的になります。

私はふりかえりを書いて自分の学びや学び方について見つめる目的は4つあると考えています。

学びを実感するため

 学びを実感するために書きます。

 授業の内容を子供たちはそもそも理解できたのか。
 授業のめあてに達成することができたのか。
 今日の授業でどんなことがわかったのか。

 子供たちは自らその学びをふりかえります。
 課題についてどういった思考をしたのか。
 そこまで書ければ自分の学びを客観的に認知している事になります。
 反対に授業で何がわかったのか、書けない児童がいる場合もあるわけです。

 小学校3年生 算数 「円」
 コンパスを使う授業を例に考えてみましょう。
 ”コンパスを使って円をかくこと”をめあてとした場合です。
 「円がかけた」と書く子もいます。
 これはできたことを書くことができています。
 その子はコンパスを使って円を書く技能を習得したのです。

 次のようなふりかえりを書く子もいます。
 「今日は4cmの円をかいた。物差しで長さを測って中心に針を刺した。その後手をひねるところで苦労したけれど円を書くことができた。」
 こうなるとその子の学びがどのように行われたのかわかります。

 教師も実感するためにふりかえります。
 子供たちに対して設定しためあてが的確であったのか。
 指導内容を理解することができたのかをふりかえることができます。
 子供たちに対する指導について教員も自らの指導についてふりかえり、今後の指導に活かしていくために考えます。

 このように、子供たちが学んだ事について「できた」「わかった」かを知ることができます。

学びをつなげていくため

 多くの単元では、単元計画を基に授業を進めていきます。
 子供たちが単元目標にむかえているのかを把握しながら指導をしていきます。
 また、前時や次時への繋がりについても意識して指導されているはずです。

 単元を貫く課題を設定している場合はその課題解決のたの自己調整や粘り強く取り組めているのかについて確認することができます。
 また、前時の学びや既習事項とのつながり、次時へのつながりなどを書くこともできます。

 小学5年生の理科「ものの溶け方」
 ”2つのペットボトルのどちらに多くの食塩が溶けているのか”
を単元の課題について学習しているとします。
 水を蒸発させると溶けているものが出てくることを実験で確認した後の振り返りに「2つのペットボトルの水を蒸発させて多く塩が溶けているか確かめられるかもしれない。」と書いているとします。
 その子は単元の課題に対して自分の学びを活かしながら粘り強く取り組めていると言えます。

 また、前の時間に学習したことを活かして予想をする。結果から次回の予想を考える。そのようにふりかえりを授業と授業をつなぐためにも活用することができます。

 教師も同様に授業の連続性を意識することができます。
 この前の授業で◯◯くんが〜〜と書いていたからその意見を活用しよう。
のように子供たちのふりかえりを形成的評価としても活用して授業を組み立てていくことができます。
 国立教育研究所の「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する資料(令和2年)にも下記のようなグラフが掲載されています。
 主体的に学習に取り組む態度としてふりかえりを活用することで子供たちの主体性をみとることができます。

主体的に学習に取り組む態度の評価イメージ
国立教育研究所「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料(小学校編・中学校編)より

このように、ふりかえりを通して子供たちの「学びがつながっているのか」を知ることができます。

学びを広げていくため

 学びは広がっていくものです。
 授業で学習したことを「知識」として終わらせるのではなく子どもたちには「生きた知識」として今後の生活に活かしていってもらいたいです。
 授業で学んだことを実生活に繋がっている事に気づいたり、授業中に繋がりに気づく子もいるはずです。

 小学校5年生算数 「割合」
 今まで買い物に行ったときに割引のシールについて興味を持たなかった子が学んだ後に意識するようになることは立派なことです。
 学習する前に割引シールを知っている子がいたらより理解が深まるはずです。

 社会科で米作りについて学んだ子がお米を買うときに農家さんのことを考えたり、漁業など他の産業、さらには環境や自然科学へと考えを広げていけるきっかけになります。

 教師もたちの生活経験などを考慮して次の授業までに地元のスーパーに行ったり、話題を工夫することもできるはずです。

 このように、ふりかえりを通して授業で扱った内容が「子供たちの生活に結び付けられているのか」を知ることができます。

学びで関わっていくため

 授業において教材に対する理解も必要ですが、友達との関わりも大切にしていってもらいたいです。
 学級経営をする中で授業が大きな影響が出ます。
 友達との関わりを通して新しい気づきや発見が生まれるから学校で学ぶ意味があります。
 ふりかえりの中にも友達との関わりのことについて書くように指導することで学級の子供たちの関係がぐっと深まります。

 小学校4年生 算数 「面積」
 複雑な図形の面積を求める場面があります。
 子供たちに求め方を考えて交流をする場面がよくみられます。
 その際に、自分にない解法を友達が行っているとします。
 考えが違う友達の説明を聞いて理解が深まるわけです。

 学びで子供たちが豊かな関わりを持つことができたかを確認することができます。

 教師は例であげた授業だけではなく、日々の授業で対話し、関わる場面を設定していくための授業改善を考えていかないといけません。

 このように、子供たちが学びを通して「関わりを持つことができているのか」を知ることができます。 

書き方は 『F』DKTC

 ふりかえりを指導する際に私が用いている書き方です。
 最初に型を与えます。『F』DKTCです。

F friend(友達)のこと
 「」(かぎかっこ)があるのは友だちの話をきいて友達の発言や考え方を書くように指導しています。
 授業で隣の友達の発言を聞いて「なるほど」と思ったのか、「違うんじゃないか。」と感じたのか。
 子供たちに友達とのやりとりの視点を伝えることで相手の話を聞くことを意識するようになっていきます。
 反対に上記の「学びで関わっていくため」でも書きましたが、教師が対話できる場面設定を行わないと子供たちはこの視点でふりかえりを書くことができません。

D  出来たこと・出来なかったこと
 授業のめあてについてできるようになったことやできなかったことを書きます。
 どのような課題のどこがわかったのか、分からなかったのかを書くように指導します。
 学びを実感できたのか、と言うことです。
 また、「最初は〜〜と考えていたけれど〜〜に考え方が変わって出来るようになった。」と書くこともあります。

K  感想
 授業の内容について「面白かった。」「楽しかった。」と言うことを書いてもちろんいいのです。そして何よりも授業でそれぞれの子供たちに起きたドラマを知りたい。
 ふりかえりにはその子らしいドラマをふりかえりとして書いてもらいます。
 授業の前と授業の後の自分の考えの変化やその変化に関するエピソードでもいいです。
 家庭科の裁縫の学習で「縫い物をする前は嫌だと思っていたけれど、やっていくうちに裁縫が好きになってきました。」というふりかえりもありました。
 反対に「つまらなかった。」「塾で勉強していて知っていて退屈だった。」とあれば、指導内容を考え直す良いきっかけとなります。
 子供たちの「感想」から学ぶべきことはたくさんあります。

T  tryしたいこと
 次回の授業で挑戦したいことや日常生活で使えそうなことなどを書きます。
 「次の授業では〜〜を頑張りたい。」
 「きっとごんは〜〜〜と思っていると思う。」
 「今度スーパーに行ったら消費税の計算をしてみたいと思う。」
 このように学びを日常生活や次時に繋げていけることは素晴らしいことです。

C Change 変わったこと
 授業の前と後で自分の中で変わったことを書きます。
 1つの授業で難しい場合は単元を通しての変化を書いてみるように伝えます。

この5つの視点は子供たちに伝えますが、5つ全て書けるといいね。という伝え方をしています。いきなり完璧なふりかえりを目指すのではなく少しずつ伸ばしていくイメージで取り組んでいます。

授業の冒頭で前のふりかえりを読む・確認する

 発達団間に応じて名前を伏せる場面もありますが、上記の5つの視点や具体的に書くことができていたふりかえりは授業の最初で読むようにしています。
 特に、友達との関わりのことや教科の見方・考え方につながるものは全体に共有をします。
 友達との関わりと大切にしながら学級を進めていくという教師の意志を伝えることができます。
 教科の見方・考え方の書かれたふりかえりを紹介して価値づけることでふりかえりの質だけではなく教科の学びがぐっと深まっていきます
 そうすることで子供たち一人ひとりのふりかえりの質が向上していきます。
 さらに、互いの振り返りをペアや班で確認することで書くことのマンネリ化を防ぐこともしています。

最後に

 ふりかえり指導を意識することで子供たちの学びを知ることができます。
 子供たちをみる目を鍛えることができるのもありますが、子供たちの成長だけではなく、教師自身が子供たちとの授業についてふりかえることができると考えています。
 ふりかえりについてみなさんの考えや思いも教えてください。

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